リアル体験交番襲撃事件③わずか1メートル先にいる男の状況がわからないもどかしさ

前回→リアル体験交番襲撃事件②
の続きです。


耳だけが頼りの情報収集

私たちは、1階の状況を把握するために、男には気が付かれないギリギリのところまで階段を降りていくことにしました。

ここで一階の現場見取り図を添付しておきます。

        現場見取り図(交番一階)

一階の状況を目で見て確認するには、階段を一番下まで降りなくてはなりません。

しかし、階段を降り切ってしまえば、私たちは男から見つかってしまいます。

そのため私たちにできることは、男に見つからないところまで階段を降りていき、聞こえてくる音からできる限り一階の状況を把握することだけでした。

私たちは階段の2~3段目あたりまで、そーっと降りていきました。
すると、交番長とその男との会話が聞こえてきました。

交番長はとにかく男を落ち着かせ、凶器を手放すよう説得していました。

男の方は、特に大声を出したり、暴れたりしている様子はありませんでした。

しかし、言っていることは支離滅裂で、交番長の説得に耳を傾けている様子ではありませんでした。

「もうおれは人生終わりなんだ」

「どうなってもいいんだ」

「ここに死ぬために来た」

そんなことを繰り返すばかりで、交番長とは会話が成立していませんした。

階段の壁によって私たちから男は見えません。

男から私たちも見えません。

でも距離にすると1メートル程度です。

一階で対峙している二人の警察官よりも、距離でいえば私たちの方が至近距離まで近付くことができます。


もし、男がこちらに背を向けていれば、1秒もかからず男の後方から制圧できるでしょう。

しかし、男を目視で確認することができません。
そのため、以下のような重要な点を把握することができませんでした。

・男がどっちを向いているのか
・男の体格や凶器以外の所持品、バッグなのかリュックなのか、手ぶらなのか
・凶器を持っているのは左右どちらの手か

こういった重要な情報を得ることができませんでした。

しかし音からだけでもいろんなことがわかりました。

とりあえず、今にも包丁で襲い掛かりそうな緊迫した様子ではなさそうでした。
そのため、急いで制圧する必要はなさそうです。
じっくり慎重に対応を決めていっても大丈夫だと思いました。

私たちは二階に戻り、署の当直主任に今把握してきた情報をすべて伝えました。

当直主任からは「署長に報告して、指揮を伺うから少し待つように。もし、状況が一変したら速報してくれ」
と言われました。


数分の間に交番は大勢の警察官に包囲された

こうしている間に、無線を聞きつけた応援車両が続々と交番前に集まってきました。
2階の窓からそれが見えました。

事案が事案なので、署の刑事課員たちだけでなく、本部の執行隊もサイレン鳴らしながら緊急走行で続々と集まって来ました。

自動車警ら隊のパトカー2~3台、機動捜査隊の覆面車両2~3台。
交番の前はあっという間に警察車両で埋め尽くされ、交番出入口の前には制圧資機材を持った警察官たちが集まっていました。

深夜ということで野次馬がほとんどいなかったのは、警察にとってはラッキーでした。


次から次へとやってくる警察車両と、交番の前にいる大勢の警察官を見て、私は「いくらなんでも集まり過ぎだろう」と思っていました。

いくら凶器持ってるといっても、しょせん相手は一人です。

しかも人質を取っているわけでもない。

それなのに、もはや交番に入りきらないくらいの人員が集まってきているのです。


でも、これが警察のいいところでもあります。
現場最前線の警察官たちの連帯感、団結力は強い。
無線を傍受して大変な事案かもしれないとなると、行けと指示がなくても集まり過ぎるくらい集まって来る。

こうやって数分のうちに、現場に有り余るくらいの体制を作れる機動力や結束力は警察の強みです。

さて、男からもこの光景は見えます。
いくら頭がイカれているとはいえ、もはや自分が絶望的な状況になっていることは理解しているでしょう。

それを理解して大人しく凶器を離すか、それとも逆上して誰かに襲い掛かるか。

何か男に動きはあるかなと思っていました。

しかし、大勢の警察官たちが集まって来る様子を見ても、男に動きはありませんでした。


そして、署の当直から指示が来ました

「ケリをつける。制圧するから準備をしろ。

最初に飛び掛かるのは、もっとも至近距離に近づける2階組だ。まずは・・・」

次回で終わりにします


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元警察官

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