祈り花

YouTubeの再生回数が表す。不思議な気持ちの繋がりを平井大の「祈り花」に思う。

映画「ドラエもん-のび太の月面探査記-」の主題歌「THE GIFT」も好調の平井大
彼を撮り始めたのは2011年の1月だった。予算的には厳しいけどハワイで撮るんでという誘い文句にまんまと乗ってしまって、機材持ち出しでハワイに飛び立ったのが始まりだった。その時は川田将人監督のもと「Island Girl feat. ALEXXX」と「For The Future」の2曲を撮ってきた。その当時、若干19才。卓越したメロディセンスと歌唱力、演奏技術にメジャーシーンで彼を見るのも時間の問題だなと思っていました。ハワイに来てるとはいえ、ロケハン、撮影とかなりタイトなスケジュールで全くゆっくりする暇などなく敢え無く帰国の途に。このパターンが今後続くとは、このときは思ってもみませんでした。

そして2011年3月11日に東日本大震災に見舞われます。平井大くんは当時ホノルルフィスティバルに出演中でハワイでニュースを見るという状況だったと聞きますが、日本全体が重い空気に覆われてた時期でした。その2ヶ月後の5月11日にアルバム「OHANA」が発売になます。ポップチューンを前面に押し出したこのアルバムはiTune総合チャートで3位を記録します。

そして、その年の10/19にミニアルバム「祈り花」がリリースされます。

大くんのMVは「Love is Beautiful」まで10曲以上川田監督で撮影してますが、唯一、自分で監督と撮影を両方したのが「祈り花」です。
当時、平井大というアーティストをプロモーションしていく時にハワイをアイコンにしていこうという事になり、殆どのMVをハワイで撮影していたのです。とはいえインディーズですし予算があるわけでもないので、今回に限って自分ひとりが映像班として行く事で渡航費や宿泊代を削るというケナゲな作戦です。(現地ではハワイで誰もがお世話になっているグリップのジェームス・レヴィに手伝ってもらってます)
その後、avexに移籍し、MVですみれさんに出てもらった「Promise」(出演してもらったすみれさんが歌うアンサーソング「Promise ~forever~」も平井大プロデュースで作られています)やディズニーとのコラボレーションなど、認知度をだんだんと上げていきます。

あ、そうそう今回テーマにしたかったのは、平井大のヒットの経緯ではなく、「祈り花」の意外な再生回数の事でした。
祈り花」だけが2800万回以上の再生回数なのです。まだこれから伸びるであろう「THE GIFT」はまだ570万回、「Slow & Easy」が、かなり頑張っていて1700万回。自分が監督した作品だけに嬉しいのは確かですが、このインディーズ時代の曲が、なぜこれだけの再生回数を誇っているのか気になって仕方ありません。(自分的にはSlow & Easy以降の曲のほうが好きなんですけどね)

その謎はコメント欄をみればすぐに分かりました。
3700件以上寄せられているコメントの多くが、自分の身近な亡くなった人への言葉が綴られたものでした。引用するのが憚れるくらい素晴らしい言葉の束です。そういった想いが重なって何回も見る映像へと昇華したのでしょう。

実はこの曲は平井大くんが亡くなったおばあちゃんに向けてつくられた曲です。大くんにウクレレを与えたのもおばちゃんだと聞いています。
この曲のMVを作るに当たって大くんからコレを観といてほしいと言われたのが「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」でした。橋田壽賀子脚本のTBS60周年ドラマです。気楽なつもりで見ておくよと言ったら約2時間半にわたるドラマが5部で構成された計680分の大作だったのです。最初はいわゆるTVドラマ的な絵に辟易してたのですが、どんどん嵌り、結局、全編11時間半見通してしまいました。橋田壽賀子自身が自分の遺言だと言ってるように日系アメリカ人というルーツが無くとも共感出来るので、このドラマの中におばあちゃんの亡き姿を見つけ出したのかも知れません。
しかし、このドラマを見た事によってMVの演出に活かされたかというと自分でも分りません。
もうひとつ言われたのが笑ってるシーンを入れてほしいとのこと。「Slow&Easy」でも思ったのですが、歌っているシーン以外ではカメラ前に慣れていない大くんだけに笑ってる表情を引き出すのにはかなり苦労した思い出が。
日が沈むところで始まり、夜を過ごし、日が出るところで終わるというシンプルな構成が企画通り上手くいったのも天候に恵まれたからでしょう。

そんなMVのコメント欄が追悼の言葉で埋め尽くされるのは複雑な気持ちですが、自分の大事な部分が欠けてしまった人の心を埋める何かに「祈り花」という曲がなっているのは確かだと思います。その一端を担えたことを嬉しく感じます。

この当時から平井大くんの音楽の方向性も大きく変わり、「Slow&Easy」以降、ハワイというよりももっとグローバルな視点で曲を作ってるように感じます。一番最近に撮ったのは3年前になってしまうけど「Life is Beautiful」という曲です。それ以降の平井大を象徴する曲だと思うので見ていただけたら嬉しいです。


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小林基己 シネマトグラファー

CM、ミュージックビデオ、映画、ドラマなどの撮影監督。MV:スピッツ、ウルフルズ、椎名林檎、SEKAI NO OWARI、ets。映画:「夜のピクニック」「パンドラの匣」ets。ドラマ:「素敵な選TAXI」ets。2017年紅白歌合戦のグランドオープニング映像を撮影。

Cinematographer小林基己の 雑記ノート

ムービーカメラマン小林基己の新作、旧作にかかわらず、映画やドラマを見て気づいた感想を書き連ねていくマガジン。 基本的には関わりの無い作品の感想ですが、撮影作品の舞台裏などを書くことも。不定期更新。
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