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映画「トラさん〜僕が猫になったワケ〜」着ぐるみに泣かされるとは思ってもみなかった!

先日、渋谷の劇場で「トラさん」を観てきた。今まで数多くの作品を撮らせてもらっている筧昌也監督で、撮影が同じ事務所の黒石信淵ときたら観ないワケにはいかない。

Kis-My-Ft2北山宏光扮する執筆休止中の漫画家、高畑寿々男とその妻、奈津子(多部未華子)二人の子供、美優(平澤宏々路)の3人はギャンブルにあけくれる父親に呆れながらも幸せに暮らしている。それがストーリー序盤で寿々男の交通事故死により一転。寿々男はバカリズム演じる死後の世界の裁判長なるものに1ヶ月という期限つきで家族のもとに戻れるという判決を言い渡される、ただし猫の姿で!

というストーリーなのだが、原作ありきとは思えない程、筧監督の過去作品の集大成のような仕上がりになっている。
ポスターを見てもわかる通り北山演じるトラさん(元寿々男)は、なんと顔を出した着ぐるみなのである。この開き直り方、筧監督の真骨頂!

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そう2007年に「ユキポンのお仕事」で試みている手法だ。(今見返すとこんなに頭、大きかったんだ。岡田くんに同情します)そういえば、世にも奇妙な物語「PETS」でも谷村美月に犬の着ぐるみを着せている。

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そして「死」をテーマにした作品が筧作品には多い。しかも、その死までに時間的な制限が付いてるものが目白押しだ。「美女缶」にはじまり「ロス:タイム:ライフ」「死神の精度」「死神くん」もそのジャンルに入るのかも知れない。

そして極め付けは、漫画家という主人公の設定だ。「素敵な選TAXI」第6話でも栗山千明演じる主人公はマンガ雑誌の編集者。それを例に出すまでも無く、筧監督は映像作家としてのキャリアよりも漫画家としてのキャリアの方が早かったのである。リンクを貼ってある「ぴあ」の記事に詳しい。

かくいう私も漫画家筧昌也の同人誌を持っている(いつかプレミアがつくのを心待ちにしながら)。
だからこそ、この映画の中の漫画の描画シーンに到っては並々ならない執念を感じる。ネームからはじまり、ペン入れ、べた塗り、消しゴムを掛ける作業など、これでもかというくらいカットを重ねている。それが、このとんでもないファンタジーにリアリティを与えているのだろう。
設定はありえへん話なのだが、登場人物たちの気持ちの流れや進行に嘘がない。この現実感が涙を誘うのだ。特に俺みたいな新米の父親にはグッとくる。子供に何を残せるのだろう、、、そう思うと、モノを作ることを生業にしてる身としては他人事としては見れないのである。

結局「トラさん」と過去作品とのフィードバックに話が尽きてしまったが、それだけに演出も地に足がついていて、それぞれの出演者がみんなチャーミングだ。是非、劇場で観てほしい。
しかし、主役の北山宏光くんはパチンコに競馬にとダメ男っぷりが板につきすぎなんだけど、ホントにアイドルなのか?

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