TRPG ダブルクロス The 3rd Edition「陰日向」その7
この小説は、掲載不許可が発行した「初海乃書」に掲載されている「TRPG ダブルクロス The 3rd Edeition 陰日向」を、以前プレイさせていただいた経験を元に製作されています。
「陰日向」というシナリオ作者のきなり様には許可をいただいきました。
また、掲載不許可所属、サリ様にも協力していただきました。
とても感謝しております。
つたない文章力ではありますが、お楽しみいただきましたら、とても嬉しいです。
尚、ダブルクロスというTRPGを知っているという上で書かせていただきますので、わからない用語などあるかもしれません。少しは説明を入れる予定ですが、進行上省かせていただくこともございますので、ご了承くださいませ。
それでは、前回の続きから。
訓練所の一室。室内とは感じないほど、広い部屋だった。
入口の周りには、剣や銃、重たそうなダンベルなどが転がっている。
室内とはいえ、岩や水、木、花など自然のモノも置いてあり、どんな能力にでも対応できるように設備は充実しているみたい。
「佐野さん、自分の能力はわかったんだけど、どうやって使ったらいいの?」この時の私はまだ、能力の使い方を知らなかったんだ。
「んー、そうだねー。」佐野さんは、考える。
「佐野さんは、何かできるの?」
「僕?使えるけど、見てみる?」
「うん、見たい!」直接能力を見るのは初めてで、少し興奮していた。
訓練とはいえ、佐野さんは、何から始めていいのか思いつかなかったみたいだった。てっとり早く能力を使えるようにするには、見せたほうがいいだろう。と思ったのかもしれない。同じ「モルフェウス」だし。
「うん、じゃあ、見せちゃおう!」子供っぽく、気合を入れる佐野さん。
近くにある岩に手をかざし「シールドクリエイト!」と言葉を発すると、岩だったものが円いシールド(盾)へと変化した。
「どう?」自信ありげな表情でこちらを見る佐野さんに、目を輝かせて私は「凄い!凄い!」と小さな拍手をする。
とっさに「私もできる?」なんて声を出しながら、岩に手をかざし「シールドクリエイト!」と叫んだ。
反応がない。
もう一度「シールドクリエイト!」
反応がない。
「あ、あれ?」同じモルフェウスなのに、なんでできないんだろう?と首を傾げると、
「ナナちゃんが使える能力じゃないみたいね。」と、カツカツとヒールを鳴らしながら、近づいてくる女性がいた。
この女性は、いくつもの事件を解決している人で、この訓練所の指導官も兼任している方だと聞いた。
その人が言うには、モルフェウスだから物質を作り出せる能力ではあるけれど、シールド(盾)じゃない。
私は考えを巡らせて「あ、この間テレビ見てたら刑事モノしてたから、拳銃とかかな?」
再度岩に手をかざし、拳銃の形思い浮かべる。
力強く手を広げるが、今回も何も起こらなかった。
「盾でも銃でもない。」私は少ししょげた。あんなにも簡単に盾が作り出されるのを直接見ているから、私にも!と張り切った気持ちが弱くなっていく。
これがダメだったら、もうだめかもしれない。
そう、私にはもう一つだけ、思うモノがある。想うモノ。と言ったほうがいいのかな?
「うちのお父さんね、殺陣の仕事をしているだよ。それを見てきたから、それかもしれない。」
「じゃあ、それをイメージしながら、やってみようか。」佐野さんが励ましてくれる。
女性のほうを見ると、小さく頷いてくれた。励まされる。
「えっとえっと、お父さんの剣、あんな感じ。剣。剣。んー。んー。あ、お父さんのは刀だっけ。刀。刀。」
頭の中で細くしなやかでいて、綺麗な一本の刀が浮かぶ。
それがだんだんと鮮明になってきて、心の中に浸透した時
「インフィニティウェポン!」突然言葉が出てきた。
「う、わ、わわ!!わわわわ!!!」いつの間にか手に握られていた感触に、私は驚いた。
「で、できた!わわ!できた!!!なにこれ、わわ!!」慌てる私。
最初は原形を留めていた刀だったが、だんだんといびつになっていく。
どうやら慌てすぎて、形を留めておくことができなくなっていたようだ。
「やだやだ!壊れちゃう!!!わわ!!」さらに慌てる私。
「どう、どうするの!?これどうするの!?」
「落ち着いて。」女性が一声かける。
「落ち着いて、ナナちゃん。」佐野さんも声をかける。
「壊れそうなの!どうするのこれ?!」
「よし、こういうのはどうかな?」佐野さんは、女性が持ってきた書物を読み、冷静に私に伝えてきた。
「カスタマイズっていうのがあってね、その能力を使うと、自分に適した形になって、手に馴染む武器に留めておけるんだ。さ、やってみよ。」
女性も「うん。それがいい。」と、優しく指導してくれる。
「はい!」まだ慌てている私だけど、目を瞑り、小さく「カスタマイズ」と呟く。イメージした刀の形を思い浮かべると、なんだか安心してきた。
ゆっくり目を開けると、先ほどまで歪みいびつだった、決して刀とは言えないモノが、イメージ通り綺麗な一振りの刀へと変化していた。
刀を目にした私は、安心感と安堵感に包まれる。もう歪むことはない。
「立派な刀になったね。」安心した佐野さん。
「綺麗ですね。」穏やかに微笑む女性。
「名前付けたい!名前付けたい!」
私はあまりの嬉しさに、この出来た刀に名前を付けたくなった。そっちの方が愛着湧くし。
「うん、付ければいいんじゃないかな?」佐野さんが賛同してくれる。
「えっとねー、お花の名前がいいなー。そうだなー、私が一番好きなお花はねパンジー。うん、パンジー!あーでも、刀っぽくない。」
「なんか違うね!」直球で佐野さんに否定される。
「でも、自分が好きなものの名前を付けたほうがいいですよね。」指導官の女性がフォローする。
「パンジー、パンジー。日本語でパンジーってなんていうんだっけ?」
「うん、確か菫(すみれ)だったはずだよ。」と佐野さん。
「菫・・・菫かぁ。」私がしっくりきている様子を見て、
「素敵な名前ですね。」穏やかに、合いの手を入れる女性。
「確かね、パンジーって3色で一つの花になっているからー、んー、3色(しょく)んー、あ!3色(しき)うん。三色(さんしき)・・・三色菫・・・難しい漢字のほうがそれっぽいからー、慙四季菫(さんしきすみれ)!」
漢字は、いろいろ調べた。でも、なんだかかっこよく感じて。
「慙四季菫!えへへ、かっこいい!」
「強そう。」佐野さんと女性が、小さくつぶやく。
名前が付いた私の刀。とても嬉しかった。
「いい力を手に入れましたね。」女性が優しく頷いてくれたのも、嬉しく感じた。
女性が持ってきた書物の山を見て「それ、いろいろ見てもいい?知りたいんだ。」って、私が言うと「ええ、いいわ。もっとあるわよ!」と、山が重なり合っていく。
渦高く積まれた書物の山を見て「読めるかな?」と、私はちょっとだけ不安になった。学校の勉強もあんまりできてないのに、なんて理由もあったんだ。
私が書物を読みながら、いろんなことを試している間に、佐野さんと女性はいろいろとしていたみたいだった。
佐野さんが頼んでいたものを渡されたんだって。
「お疲れ様ー!」佐野さんに声をかけられて、「お疲れ様です。」女性にも労われる。
「なんかいろいろできたよ。私の能力、あと一つあったよね?」
「ハヌマーン?」
「うん、ハヌマーン。速さのハヌマーン!それでね、いろいろ組み合わせてたら、なんかすごかった。」
訓練の跡なのか、少しだけ地面が煤けていた。
「こちらの女性と手合わせしてみれば?」と佐野さんが促す。
私は急なことに目を見開くと、「私でよければ、やりましょ。」と、女性は少しワクワクしているようだった。
指導官。という血が騒いだのかもしれない。
「じゃあ、覚えたての技、一個使ってもいい?」
「ええ。いいですよ。」
いろいろなことを試していたので、息を荒げていた私は、息を整えた。
「ふー、ふー、よし!いくよ!」
「いらっしゃい!」
お互いに戦闘モードへ入る。
次回へ続く。