TRPG ダブルクロス The 3rd Edition「陰日向」その6

この小説は、掲載不許可が発行した「初海乃書」に掲載されている「TRPG ダブルクロス The 3rd Edeition 陰日向」を、以前プレイさせていただいた経験を元に製作されています。

「陰日向」というシナリオ作者のきなり様には許可をいただいきました。

また、掲載不許可所属、サリ様にも協力していただきました。

とても感謝しております。

つたない文章力ではありますが、お楽しみいただきましたら、とても嬉しいです。

尚、ダブルクロスというTRPGを知っているという上で書かせていただきますので、わからない用語などあるかもしれません。少しは説明を入れる予定ですが、進行上省かせていただくこともございますので、ご了承くださいませ。

それでは、前回の続きから。




うみねこ号の事故で、田辺が死んでいることが分かった。

悲しいというよりは、田辺と私、同じ境遇だったんだ。ってなんだか嬉しい部分もあって、戻ってきてくれてよかった。って安心感もあって。

だけど、死ぬっていう恐怖も思い出して、冷たい世界に引きずり込まれる、あの感覚を思い出して。

田辺と同じ。私も一度死んでいる。田辺もオーヴァードとして生き返って、いろいろ考えて、私と結衣ちゃんと仲良くいてくれる。

親近感なのかな。


田辺と結衣ちゃんのこと、ちゃんと見ていてあげよう。もっと仲良くなろう。田辺が変わらなかったんだもの、私も変わらずに、2人のこと大切にしていこう。

そんなことを、眠れないお布団の中で想った。




ピリリリリリピリリリリリ

時計の電子音が鳴る。

お布団に包まりながら、んー。と声を鳴らす。

ピンポーン。下のほうでインターホンが鳴り、階段を誰かが上がる音がする。

ドンドン!

「ちょっとナナー!変な仮面のお客さん来てるよー!」

ガチャ。とドアを開け、お母さんが驚いた顔をして、私を呼んだ。

「ナナ、まだ寝てるの?仮面のお客さんだよ。」


仮面のお客さん?

誰だろ・・・。あ!

「ナナちゃーん。」外で佐野さんの声がする。

集合にはまだ早い。なんでこんな朝早くに?

そんなことを思いながら、階段を降り、インターホンの受話器を取った。

カメラ付き。画面の映し出されたのは、大きな目だった。

「きゃ!」

「どうしたのー?」佐野さんの子供っぽい声が聞こえる。

「佐野さん、何してるんですか?」

「いやー、これなんだろう?って思ってね。」

佐野さんは不思議な人だ。みんなが普通知っていることを、知らないでいる。

冗談に感じない。無垢というか、無知というか。

「あ、これ、カメラです。映ってますよ、佐野さん。」

「あー、そうなんだー。」

「で、佐野さん。まだ時間早いですよね?」起こされたことと、こんな早くに来ていることに、ちょっとだけムッとしながら、声をかける。

「んー、そうなんだけどね。ナナちゃん、まだ能力の使い方わかってなさそうだし、教えておこうかなー?と思って。」

今のこと、聞かれたかな?と思い、後ろを振り返る。お母さんが不思議そうな顔をして、こちらを見ている。

口ぱくで「大丈夫」とジェスチャー。お母さんは、2、3度頷き、掃除を始める。

お母さんにも、お父さんにも、お兄ちゃんにも、能力者になった。なんて言ってない。いずれは言わないといけないのかもしれないけど、その時には、私が一度死んでいることも言わなくちゃいけない。そのことが、引っかかっている。

「で、どう?」間の抜けた佐野さんのお誘い。

「わ、わかりました。ちょっと待っててください!」

髪の毛もぼさぼさだし、寝起きの顔だし、全然可愛くない自分を見られたことの腹立たしさを感じながら、受話器を置く。



「お待たせしました。」佐野さんに不機嫌な態度を示す。

「じゃあ、行こっか。」私の不機嫌に、全く気付かない佐野さん。


少し呆れながら、佐野さんの隣を歩く。


「どこ行くんですか?」

「んー。訓練所。」

「訓練所?」

「そー、そこでナナちゃんの能力のこと、もうちょっと詳しく教えておこうと思って。それに、能力の使い方も知っておいた方がいいからねー。」

「私の能力は、確か、物質を変化させるモル・・モル・・・モルモットじゃなくてー」

「モルフェウス」

「そうそう!それです!あとは、速さの何とかマン!」

「ハヌマーンだよ。」

「あ、ハヌマーンでした。」

「この2つの能力の使い方、ですか?モルフェウスの力を使って、おいしいご飯ができたり、ハヌマーンの力使って、50m走8秒台!なんてこともできるんですかね?」

「んーちょっと違うかなー?」

「なんだかよくわかりませんね。」クスクス。私は微笑んだ。


いつの間にか、私の不機嫌さは消え、自分の能力がどんなものが、ワクワクしていた。


「さ、着いたよ。」佐野さんが中を案内してくれた。

小さい子から、私と同じくらいの子、大人の人たち、いろんな人たちが、利用しているみたいだった。

いろいろなところから、声がしている。叫び声や何かを講義されてる声とか。


「ん、ここがいいかな。」

佐野さんは、手慣れた感じで入っていく。

「おじゃましまーす。」

私は覗き込むように、その部屋へと入っていった。





次回へ続く。