自分では選ばないようなモチーフで食指が伸びなかったり、貰い物なので組むのがもったいなく感じたりなどで棚に積みがちになってしまう「もらったプラモ」について戒めてこう言われることがある。

「もらったプラモは早く組め」

　今年の誕生日にいただいたポルシェパナメーラのプラモ。頂いたのは8月（私の誕生日は8月19日）なのにこれを書いてる今はもう11月だ。三ヶ月も放っておいてしまったのは先に述べた理由ではない。プラモは組むものだと思うし、スタイリングもカッコよくて自分好みだ。では何故？　なんてことはない、単に組むのに苦労したからなのだ。

　ポルシェといえば911と考える人も多いだろう。リアエンジンの2シータースポーツカーというスタイルは車好きにとっては憧れだと思う。しかし、このパナメーラはなんとプラモを組んでみるとわかるがフロントエンジンでしかも4シーター4ドアサルーンなのだ。4人乗りであれば社用車として経費で落とせるという噂があるが、たしかにこの車は経営者などの富裕層が2台目に使うというイメージがある。5ドアファストバックセダンなこの車は荷物もそこそこ積めるし、同じくポルシェのSUVカイエンと並ぶ人気車種だ。個人的な偏見を言わせてもらうと、どちらの車もTシャツ短パンにウブロのビックバンをつけたツーブロックの男性が奥さんを横に乗せているというイメージがある。何故奥さんがこんなにオシャレしてるのに旦那はＴシャツ短パンなんだ！

　セダンやSUVがその使い勝手の良さから人気車種となっている一方でプラモデルにおいてはそうとはいえない。その使い勝手の良さはあくまで車を荷物や人を運搬する道具と考えた時の使い勝手であり、モチーフのスタイリングやカルチャーを写すアーカイブとしての価値、またはメカニズムの面白さや希少性など追い求めるプラモデルというものの中ではやはり人気はスポーツカーになりがちだ。しかし、このポルシェパナメーラターボ、決して魅力がないわけではない。セダンとはいえスタイリングはスポーツカー的ではあるし（実は速い）現代的なポルシェの顔立ちをしている。とはいえパナメーラをプラモとして出しているのはレベルだけ。911ターボやカレラが色々なメーカーから出ていることを考えると人気がないのかもしれない。それでもレベルからこのクオリティのプラモデルが出たことは喜ばしいし、とても貴重なものだ。だってパナメーラを作りたければ選択肢はこれしかないのだから。

　日本のメーカーと違って横から開けるようになっている箱にランナーがパンパンに詰まってる。メッキやクリアパーツも綺麗だが、目を引くのは青に成形されたボディやそれに付随するボンネット、ドアハンドルだ。どうせ好きな色に塗るなら白とかグレーの成形色がいいという意見もあるが私はこういうのも好きだ。開けた時のトイ感が可愛いし、どの部分をボディカラーで塗ればいいのか一目瞭然という利点もある。

　全体的にパーツの嵌め合いもいいし、説明書も見やすい。苦労せずにサクサク組めそうだったが、唯一ボンネットだけが困った。パーツが歪んでいるようで片方が浮いてしまうのだ。このキットはエンジンも再現していてボンネットもヒンジで開くようになっている（とはいえエンジン本体はカバーで見えないようになってしまうところが現代車っぽい）。熱を加えて曲げたりしてみたがどうもうまくいかない。嫌になって放っておいたのだが、もらったものを積んでおくのも忍びない。完成させるために割り切って接着してしまうことにした。ガッチリ接着してしまえばボンネットは綺麗に収まった。設計が悪いのではなく単に保管が悪いか成型に失敗したかで曲がったものだろう。

　このプラモデル結構うまくできたと思う。それは今自分の出来得ることを最大限取り入れたからだ。それは別に以前と比べてうまくなったということではないと思う。必要な時に必要な道具やtipsを使ったということだけだ。うまくなるというのは道具では補いきれない技術を向上させるということだろうし、試行錯誤をして自分でtipsを見つけるということだと思う。形状やマテリアルをアウトソーシングし、あらゆる複雑な作業において便利な道具が用意されてるプラモデルという趣味は自分をある程度満足させてくれるモノを作るという意味ではハードルが低い。ただ今回、ボンネットに関してのみ満足していない。するとどうするかというと技術向上を図らなきゃいけないということだ。そうなると、この趣味は深遠だ。あらゆる工程の中で道具ではどうにもならない問題を解決する技術を身に着けること、探しても出てこないtipsは自分で見つけなきゃいけないということ……なんて色々考えてしまうが、まずは完成させるということも忘れないでいたい。諸々の反省点も満足感も完成させて初めて得られるものだと思うのだ。