ニチアサ中盤くらいの安定した面白さ:「ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ」

ニンジャスレイヤーはどのエピソードも傑作揃いだし主だったおすすめどころは他の人が紹介していると考えまして、激推しというわけでもないけどなんとなく好きなエピソードをややネタバレしつつ紹介しようと思います。

「ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ」

「お姉さん置いてかれたの?」
「ああそうね。この世にね」

故あってセンチメント重点な女ニンジャ、レッドハッグ。
ネオカブキチョ某所、地下バーのアトモスフィアに身を浸している彼女の前に、地上から血みどろの男が転がり落ちる!

「ウェーゲホゲホ!アンタらさァー」
「こういうの外でやれッての……アトモスフィアがあンのよ……アトモスフィアが」

男を追ってきたパンダモヒカンを一蹴した彼女。しかしその後も彼女を付け狙う…ニンジャ!?
一体何が起こっている?ネオサイタマにはかくも不条理がまかり通るのか?
蚊柱を立てるのも良いが迂闊によそ見していると手ひどいアンブッシュを受けるぞ、気をつけろ!

感傷とサツバツの交錯するとき、そこに現れるニンジャ真実に刮目せよ。

まあだいたいどういう話かはwikiで説明されてるので読んで下さい。




とぶん投げるのも問題なので詳しく話しますが、ぶっちゃけ冒頭でも述べたようにこのエピソード、激推しというわけじゃないしめちゃくちゃ完成度が高いというわけでもないですよね。

なんとなく微妙な完成度なエピソード

忍殺における人気キャラの一人、レッドハッグの連載及び作中時系列上の初登場エピソード(のはず)です。彼女の魅力も活躍もしっかり読むことができます。が、個人的には「ザ・ドランクン・アンド・ストレイド」とかの他エピのほうがよりおすすめだと思っています。

他にもファンから根強い人気のあるトコシマ地区のデッカーコンビやアマクダリ・セクトに属するニンジャのシャドウドラゴンファイアブランドも登場します。ですがこれらのキャラクターの活躍を堪能したい!というのであれば他のエピソードのほうが出番も活躍も多いのでは?と思います。

他エピソードでの活躍がほぼない他の敵ニンジャもゲスト怪人ながらそれぞれインパクトの有るギミック持ちのヴィランであり、それら敵ニンジャとニンジャスレイヤー・レッドハッグの戦闘シーンは非常に読み応えがあります。

完全に出落ちながら意外と戦闘で粘るロックイーター・マントラップ兄弟。左腕のレールガン内蔵義手というワンギミックから予想外に多様なアクションを魅せるミョルニール
特にワイバーンはニンジャスレイヤーを苦戦させるなかなかの強敵です。オイランを侍らせ拷問を楽しむわかりやすく典型的な邪悪さ、異様な柔軟性を備えた肉体と尻尾状のマニピュレータを組み合わせた独特のアクション、かと思えば数的不利となれば撤退をする冷静な戦術眼。なによりその戦闘の最後、ニンジャスレイヤーが彼を殺害するための一連のフィニッシュムーブは忍殺史上でも屈指のオーバーキルコンボが炸裂します

・・・しかしアクション面・魅力的な敵キャラという面で見た時に本エピソードを上回るエピソードはたくさんあります。(アクション面なら「ローマ・ノン・フイト・ウナ・ディエ」なんかは間違いなく忍殺屈指のアクション密度です)

また本エピソードはニンジャスレイヤー第三部における敵勢力「アマクダリ・セクト」の最高幹部の一人アルゴスが登場・・・するエピソードにつながる作品です。ですがまあこれを読まなかったからアルゴスのキャラクター・秘密がわからない!みたいなことになるわけではありません。

まとめwikiにも書いてあるようにエピソードはセクション6+インターミッションで完結したのは2012年10月24日ですが、直接の続編が登場するのは連載順では結構後の2014年2月24日です。(三部当時はメインエピソードとサブエピソードが混在としておりなかなかメインラインの把握が難しかったのを覚えています)つまり本エピソードが半ば負けエンドなのに挽回する続編はなかなか連載されず、続編もわりと敵の勝利で終わってないか?という感じで非常に不穏なシリーズです。


じゃあつまらないのか?

もちろんそんなことはありません。めちゃくちゃ面白いです。

特定の要素で見た時に各要素ごとにもっと魅力的で完成度の高いエピソードはたくさんあります。要素の総体としての完成度でも同様でしょう。自分もなんとなく好きなだけですっげーーーー好き!!みたいな作品ではありません。

逆に言えばニンジャスレイヤーという作品がコンスタントに発揮する面白さの水準を知るのに適しているのではないか?と思います。
1話・1セクションのみの登場で強烈な印象を与え、迫力のある戦いを繰り広げ、最終的に殺される邪悪な敵ニンジャ、同様に数少ない出番でも魅力的なヒロインやゲストキャラクターニンジャスレイヤーの世界で過去に何が起きたのか?という大きな謎が垣間見える展開目的不明ながら着実に暗躍し勢力を拡大している敵対組織…これらの要素は間違いなくニンジャスレイヤーにおける魅力(の一部)であり、本エピソードは間違いなくこれらの魅力をもった作品です。

代表的なエピソードではないが作品の要点を押さえ、より大きなメインエピソード群に繋がる事態の進行(の一端)が見られる…が単体のエピソードとしては大きな進展は生じない。この中途半端さに僕は日曜朝の特撮番組(スーパー戦隊や仮面ライダーですね)の放映半年前後くらいの作品としてのフォーマット・お約束事がだいたい出尽くして次の山場に入る前の中だるみ期を連想します。あの時期の話って本筋が進んでるようで進まない、けど話としては面白いという状態で逆に途中から作品を読み始めるという意味では逆にありなじゃない?と考えたわけです。
なかだるみ期の話は中だるみ感からリアルタイムで追うのが大変でも後から読む分には回収に時間がかかった伏線・続編もすぐに回収できる。というのが後追いのメリットです。


ぶっちゃけ自分でもなぜこのエピソードを選んだのかよくわかってないです。中だるみ期という意味では当然他のエピソードも選びうるしワイバーンの死に様が好きなだけではないのか?当時見つけたワイバーンのファンアートが可愛かったから推してるだけなのでは?というかワイバーンが好きなだけではないのか?でも好きなニンジャは?って聞かれたら五本の指には入らないぞ?という疑念が今も渦巻いています。

でもこのエピソード、ワイバーンだけじゃなくてなんか上手く言えないけど面白いから多くの人に読んでほしい。そしてその魅力はこれだ!お前は何もわかってない!と教えて欲しい。



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