本瀬あゆみ

本瀬あゆみ

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「テリトーリオ」から考える、地域主義と建築デザイン____『都市のルネサンス―イタリア社会の底力』を読んで____

1.   移ろう石の都市 「テリトーリオ」とは“都市と周辺の田園や農村が密接に繋がり、支え合って共通の経済・文化のアイデンティティをもち、個性を発揮してきたそのまとまり”1) であるという。柔らかく輪郭の曖昧な響きのこのイタリア語は、行政区域ごとの縦割りで型どおりの地方創生を行うのではなく、経済・文化のまとまりに注目して地域を定義することで、新たな振興の方針が見えてくるのではないか、という提案としても受け止められる。そして、建築デザインの分野においても、誰が望んでいるのか

    • 設計スタッフを募集しています。【終了しました】

      2022年のスタッフ募集は終了しました。ご応募頂いた皆様、アドバイス頂いた皆様、ありがとうございました。 私の主宰する事務所で、設計スタッフ(富山勤務)を募集しています。 最近の建築設計者は、事務所勤務を経ずに独立する人も多いですし、向き不向きはあると思いますが、私の場合は、どちらかというと学校より設計事務所で自分の建築の世界が大きく広がりました。 特に隈研吾事務所は、体感としては芸術大学よりも多様性に富んでいて、様々な人や文化、建築の考え方やスキルに触れることがきまし

      • 図面について___まだ2D図面を描くとしたら、その理由___

        1.視点としての図面  2D図面(以降、図面と呼びます)の伝達メディアとしての役割は終わりつつあると言えるでしょう。発注者に対するプレゼンテーションはほぼ3Dメディアに移りつつありますし、システム化されたハウスメーカーの設計CADは3Dがベースです。ハード面の条件が整えばその他の施工発注・監理もデジタル3Dモデルがベースになっていくでしょう。私はここで、模型やデジタル3Dモデルを過小評価したり、否定したりするつもりはありません。また、「図面が描けないやつは建築が分かっていな

        • コンパクトシティとまちなか居住 _集合住宅は都市の主役に返り咲けるのか_

          1.コンパクトシティとまちなか居住  コンパクトシティについてはご存知の方も多いと思いますが、簡単にご説明します。人口縮小と高齢化が進む中で、地方都市では、インフラなどの公共サービスを効率化し行政コストを適正化すること、また、高齢者などの交通弱者が住みやすい街を作ることが課題とされます。それを解決する形の一つがコンパクトシティであり、コンパクトシティを実現させるために行政が行っているのが、コンパクトシティ政策です。私の住んでいる富山市はコンパクトシティ政策で有名ですが、具体的

        「テリトーリオ」から考える、地域主義と建築デザイン____『都市のルネサンス―イタリア社会の底力』を読んで____

          建築設計に造形力は必要ですか?

          1. 造形力=センス?  まず最初に、そもそも造形力とは何なのか、ということから考えていきたいと思います。プロとして造形する人を育成する美大では、最も重要な基礎としてデッサンを位置付けています。よく言われていることですが、デッサンは単に絵を上手く描くための訓練ではなく、観察力を磨くためのものです。単に観察力を磨くだけなら、観察だけを繰り返してもなんとかなりそうですが、観察と描画を同時に行うことに大きな意味があります。  人が対象を見て描画する時、目で見たものを一旦脳で理解し

          建築設計に造形力は必要ですか?