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香港の「STEM教育」にみる競争力の鍛え方

前回、海外の「プログラミング教育」事情(2018年版)と題して、海外の各国は「いつから」「どんなことを中心に」プログラミングを教えているのか、という点についてまとめました。

海外のプログラミング教育を整理していくなかで見えてきたのは、学習内容には「論理思考習得」と「実践技術習得」の2フェーズあるということ。

16か国(うち地域が2つ)のなかでも、僕が個人的に「バランスがいいなあ」と感じたのが、香港です。

さらに、香港は競争力の鍛え方も上手だなあと。

今回は香港の取り組みを基に、日本に取り入れるならどんな教育が望ましいか?という点をまとめていこうと思います。

1.ぜひ参考にしたい香港の「STEM教育」

まず最初に、「STEM教育」という言葉をご存知でしょうか?
お子さんがいらっしゃるお父さん、お母さんなら知ってるかもですね。

「STEM教育」はアメリカ発祥の教育モデルです。

S:Science(科学)
T:Technology(技術)
E:Engineering(工学)
M:Mathematics(数学)

香港のとある小学校では、「STEM教育」の一環としてプロジェクト運営を行っています。もう少し具体的に言うと、小学生が先生にプレゼンし、予算やリソースを確保してプロジェクトを進めていくんですね。

プロジェクトにおいて、先生は投資家でありサポーターのようなポジションで、あくまで主体は小学生たちです。

プロジェクトに必要なリソースとして、3Dプリンタや工作キット、木材などは先生たちが企業スポンサーを探したり、協力者を獲得して集めてくるんだとか。単に机上で教えるのでなく、先生たち自身もチャレンジしてます。

小学生たちにとっては、事例を調べてみたり、アイデアをメンバーに説明したり、実際に動くものを作ってみたりと、大人が仕事としてやっていることをプロジェクトを通して実践しているんですね。

日本のプログラミング教育は「論理的思考を鍛えよう」ですが、彼らは実際にプロジェクト運営をしているので、単に「論理的思考を鍛える」以上に、仮説と検証のサイクルが自然に回っており、学びも大きく、深みがある。ないより、プロジェクトを通して競争力を鍛えることができます。

これはぜひ参考にしたいところですね。

2.僕が香港に感じたバランスの良さ

次に、冒頭でも触れた、僕が香港に感じたバランスの良さについてです。

香港では、実際にプログラミング言語を扱うのは日本でいう中学生になってから。小学生のあいだはリテラシー教育がメインです。

なので、小学校の6年間でリテラシー教育、中学校と高校の6年間でプログラミング教育と、バランス的にも半々でちょうどいいんですね。

僕が思うに、知識というのは「山」の形になるのが望ましいと思ってます。

というのも、何かを局所的に鍛えたところで形にすれば「|」です。

子どものころに砂浜で遊んだ「砂崩し」を思い出してほしいんですが、砂山にぶっ刺した棒を倒さないようにするには、裾野に広がる砂のバランスが重要ですよね。

リテラシー教育をしっかりやるというのは、まさに裾野作りです。

裾野がしっかりあれば、その上にくる実践的技術の定着も早いです。早くから実践的技術を身につけることも重要ですが、「|」の場合、根元がボキッといってしまうと立て直すのにも一苦労ですからね。

3.日本に取り入れるならどんな教育が望ましいか

では最後に、香港の事例を調べてみて、「これは日本の教育にも取り入れるといいな」と個人的に感じることをまとめて終わりたいと思います。

先ほども言ったように、文科省が発表している「小学生プログラミング教育の手引」を読むと、小学生のうちはプログラミング言語を習得するという「実践的技術習得」よりも「論理的思考習得」に重きが置かれています。

しかも、その「論理的思考習得」の方法はこれといったものがなく、どんな教科でするか、何をするか、については"ほぼ"学校側に委ねられています。そうなってくると、学校や先生の力量次第…なんてことにも…

じゃあ、いったいどうすればいいんだ!

という方へ、香港の事例を参考に、僕なりの見解を示します。

香港では小学校のあいだはリテラシー教育中心と書きましたが、それはあくまで学校においての話。香港には6歳から通える「First Code Academy」というプログラミングスクールがあるんです。

創業者であり、子どもたちにプログラミングを教えるMichelle Sun氏はシリコンバレーで起業経験があり、スマートフォンをぶつけ合えば情報を共有できる「Bump」は彼女が作ったサービスのひとつです。

やはり「餅は餅屋」じゃないですが、プログラミングのプロによる教育が必要です。そのためには民間のプログラミングスクールに通わせることがひとつ。もっと言うと、発表会などを実施しているスクールです。

単に学ぶのでなく、発表会で勝敗を味わうことで競争力が鍛えられます。

かといって、通わせても本人が続けてくれるかわからないですよね…
そんなときは、まず「触れる」という経験をさせてあげるとよいでしょう。

例えば「Scratch」や「Viscuit」です。

まず「触れる」なら「Viscuit」がいいです。動かすことがメインなので。
「Scracth」は若干アルゴリズムが必要になってくるので、感覚的に触れるなら「Viscuit」かなと思っています。

そして、単に「触れる」機会を子どもに提供するだけではなく、子どもと一緒にプログラミングの話ができるように、親自身も触れてみることです。

香港の保護者は「プログラミングを学んでいる子どもとまともな会話ができるようになりたい」という想いを持っていると言います。

保護者も一緒にチャレンジしていきましょう!

香港に見るキーワードは「競争力」。
子どもの競争力を鍛える環境を準備してあげる、これが僕の見解です。

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