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「やりたくない」から始まる仕事

記者時代、野球の取材が苦手だった。拘束時間が長いし、夏は猛暑だし雨の中カメラを構える日もあった。

少年野球で監督や保護者の怒声が飛び交う感じも嫌だったし、一番行きたくなかったのが高校野球だ。そもそもじっくり観戦できない。スコアブックを付けつつ前の試合の成績を打ち込み、チャンスがきたらカメラを構えるの繰り返しで手元が忙し過ぎるのだ。試合が終わればすぐに話を聞きに行き、また次の試合が始まって……。お昼を食べる暇もなく、日に日に各紙の記者たちが死にそうな顔になっていったのを覚えている。自分も体重が5キロ減った。

ただ、野球の取材は「基本」とされていた。記事は時系列で出来事を並べればいいわけではない。たとえ初回の先頭打者HRでリードしていても最終回で逆転されたらその場面がヤマになる。勝敗を分けたこの一球/一打の見極め。事象のポイントをきちんと認識できるかに記者の目が試されるのだ。

初めは暗号でしかなかったスコアブックも書き方を覚えると試合の流れがよく見えてくる。「ヒットが二桁あるから打力のあるチームだ」「盗塁数が相手の倍だから機動力重視」など、特に高校野球ではスコアブックから見えてくる数字でチームのカラーが分かった。

YouTuberやインフルエンサー、「○○系の記事が得意です」とSNSで自己紹介するライターなど「好きなこと/やりたいこと」だけで仕事するのはトレンドだし悪い流れじゃない。ただ、知らない世界を知ったときの感動がない。思わぬ取材から得た知識や経験がぐんと視野を広げてくれる。これだから、「やりたくない」から始まる仕事を無下に出来ない。


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