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スマホゲームのマーケティングの闇を暴きました

2020年8月4日にSGMS2回目のウェビナー「ここが変だよ(闇だよ)、スマホゲームのマーケティング」を開催しました。第1回は「スマホゲームマーケターのキャリアとスキルアップのリアル」というテーマで、スマホゲームマーケターのあるべき姿について議論しましたが、今回はあるべき姿に対するギャップ=課題をテーマに、 ゲストの登壇者だけではなくウェビナー参加者にも議論に参加してもらう形で一緒に課題を提起していきました。

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ゲスト
TheSwampman㈱ 横田 雄士 さん
㈱Yostar 代表取締役社長 李 衡達 さん
ウェビナー参加者のみなさん

スマホゲームのマーケティングの課題/闇とは何か?

<ウェビナーの流れ>
①参加者がスマホゲームのマーケティングの「ここが変/闇だよ」を投稿
②投稿された結果を元に、参加者全員で特に課題と思うアンケート投票
③投票結果が上位だった課題についてディスカッション

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<ウェビナー参加者の属性>
参加者はゲーム会社のマーケターに限らず、開発者やメディアや広告代理店の方にも議論に参加いただきました。

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<参加者が感じるスマホゲームのマーケティング課題>
参加者に投稿してもらった課題と投票結果は以下になりました。

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上がった課題をまとめると、大きく以下の3点が浮かび上がってきます。

【スマホゲームのマーケティングの課題】
①マーケターが本質的で適切なKPIを追えていないのでは?
②マーケターの裁量やコミットが低いのでは?
③マーケターと広告代理店の関係ってこれでいいの?

上記は、スマホゲームのマーケティングに限らず、どの業種でもマーケティングの課題になりがちなことではないかと思います。今回は上記の課題を元に「なぜそうなってしまうのか?」「どうあるべきなのか」を議論しました。

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マーケターが本質的で適切なKPIを追えていないのでは?

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<ROAS絶対主義は何故生まれてしまうのか?>

スマホゲームのマーケターのKPIとして良くも悪くも代表的なものが「ROAS=広告の収益回収率」です。ROASは広告の投資対効果を示すには有効ですが、事業成長のマーケティングKPIとして完全なものではありません。

【ROAS評価の限界】
①ROASは広告投資の回収率の指標で、効果の絶対数ではないこと
②短期的な集客施策に特化したKPIであること
③広告の間接/副次効果が一切考慮されないこと

ROASだけに執着してしまうとROASでは良い結果が出ているのに事業が成長しないことが起きます。それにも関わらず、ROASだけしか見ていないマーケターがまだ多くいるという指摘がありました。この要因については議論の中で「組織としてのマーケティングの理解不足」が根底にあるという意見がありました。

組織としてのマーケティングの理解不足
・会社や組織も正しいマーケティングKPIを理解できていない
・ゲーム開発/運営とマーケティングを分断して管理している
・マーケターに短期的な費用対効果だけを求めている
・マーケターも組織にマーケティングの理解を進める努力ができていない

では、マーケターが本質的なKPI設定をしていく上で具体的にどうすべきでしょうか?この点については「スマホゲームはゲームのイベント内容にユーザのニーズや売上が強く連動するので、毎月決まったKPIや指標でマーケティング施策の評価を行うのではなく、ゲームの運営計画に沿ってマーケティングの成果を評価すべき」という意見がありました。

また、本テーマに連動して声が上がったのが、「マーケティング施策を『獲得』『ブランディング』と分けるマーケターが多いが、分けることに意味があるのか」という課題提起でした。こちらに対しては、「マーケティングのゴールは1つであり、獲得系の施策もブランディングの施策も、それぞれ役割が違えども最終的に達成したいことは同じなので、完全に分けて評価するのはあまり適切ではない、望ましいのは全体的な評価ではないか?」という意見が出ました。

【マーケターが本質的なKPI設定をするために】
・事業やゲーム運営とマーケティングを分断せず、事業目線で行動する
・マーケティングを短期ではなく中期で設計/評価する
・マーケターが組織にマーケティングの説明責任と透明性を担保する

広告の効果評価は実際にすごく複雑で難しいです。今後はさらにiOS 14による大きな変化もありますので、マーケターは情報収集して組織にフィードバックしていく動きが求められます。

KPI関連の参考情報
iOS14の衝撃 モバイルマーケターはこの激変を今すぐキャッチアップせよ
アプリマーケティング最大の闇を解説します

<アドフラウドが無くならない本当の理由とは>

マーケターのKPIに関連した課題として「アドフラウド」も話題に上がりました。広告だけで個別評価をしてしまっていると「レポート上の数値はとても良いけれども、俯瞰して見てみるとアクティブユーザー数が全く増えていない」ということが起こります。アドフラウドに対策するためにも、マーケティングの全体評価が非常に重要になります。

業界全体で力をあわせてアドフラウドを撲滅していくことが重要ですが、議論の中で「アドフラウドがなくならないもう一つの理由」が話題になりました。それは「アドフラウドにニーズが存在する」という大きな闇です。

【アドフラウドにニーズが存在する実態】
<ゲーム会社/広告主>
組織のトップが本質的ではないKPI設定をすることによって、現場のマーケターもその意向に合わせるマーケティング施策を選んてしまう。その結果、アドフラウドが発生する施策も積極的に実施していまう

<広告代理店>
効果が良く見えがちなアドフラウドはある意味では売りやすく、また広告主からの要望があれば、会社の売上のために提案/実施してしまう

こういったことが本当に起きているのであれば、業界発展のためには絶対に正さねばならないと強く思います。マーケターが声を上げていきましょう。

マーケターが開発に関与できているか、または、ゲームの魅力を全力で語れているか

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<ゲーム開発に関与できていないマーケター>

多くのスマホゲームは「アクティブユーザ×ARPU(顧客単価)」で売上が決まるために、ゲームとマーケティングの連動はとても重要です。しかしながら、「多くのマーケターがゲーム開発に関与できていないのでは」という声が多数ありました。その要因はマーケター自身と組織の両方の課題が混在しているという意見が上がりました。

【マーケターがゲーム開発に関与できていない主な理由】
①[マーケターの課題]マーケター自身のゲームへの理解不足や実力不足
②[組織の課題]マーケターがアサインされるタイミングが遅い

マーケターのアサインのタイミングが遅いデメリットとして「広告代理店など外部のマーケティングパートナーへのオリエンがギリギリになってしまうために十分な準備期間を得られず、本来であれば実現することができた質の高いプロモーションが生まれにくい」というデメリットの連鎖がある実情がゲーム会社と広告代理店の双方の視点から共有されました。

なぜアサインタイミングが遅いのでしょうか?「そもそもマーケティングの重要性が組織で理解されていないがゆえのリソース不足」「組織の風土や文化にもよるがマーケター自身が声を上げていない」などが影響しているのでは?との意見が飛び交いました。

<あるべきマーケターと開発チームの関係性とは>

では、マーケターと開発チームはどのような関係性を築いていくべきでしょうか?この点は「今日の厳しい競争環境においてゲームをヒットさせるためには、客観的な魅力の評価やマーケティングしやすい強みの開発がより重要で、これらの背景を踏まえると、開発とマーケターが開発初期段階からワンチームになって動いていくことが最も望ましい」との意見が述べられました。そして、その解決のためには「マーケターが日々マーケティングの重要性や情報を組織やゲーム開発の現場で伝えていくこと」という結論になりました。マーケターがさらに行動をしていきましょう。

マーケターと広告代理店の関係ってこれでいいの?

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<理想の関係性は一緒に成長できる「パートナー」>

広告代理店とゲーム会社のマーケターの関係性については「お互いに成長できるパートナーのような存在であることが最も望ましいのでは」との見解が述べられました。つまり、「深い信頼関係がお互いの間に構築できているという状態がベスト」であるとのこと。ただし、「ちゃんとパートナーになっていないケースが非常に多い」との声が参加者からも多数あり、その要因の1つとして考えられる「コンペ」の話に議論は展開していきました。

<形骸化したコンペとその弊害>

参加者から「広告代理店選定のためのコンペが闇である」という声がゲーム会社側からも広告代理店側からも上がりました。「スマホゲーム業界は特にコンペが本来の目的を果たせておらず、そもそもWIN-WINにもなっていない」とも。コンペとは「クライアントが目的を達成するために適切なパートナーを選ぶため」に行われるものです。とても有効なプロセスですが、これが闇になっているとはどういうことでしょうか?

ゲーム会社側では、マーケターが適切なパートナー選定をするスキルが不足しており、そういった場合は正しくコンペも評価ができないために、結果的に「代理店選定を社内説明する材料を代理店に丸投げしている行為」でしかないという声がありました。

広告代理店側においても、コンペ対応の負荷が重く、コンペに勝つためにコンペ専門チームを組成している、という声もありました。その結果、「提案時のチームと実際に運用するチームが異なっている」ことはよくあることで、この時点でパートナー選定になっていないために、意味がないという声がありました。

また、スマホゲームのマーケティングにおいて効果の良いメディアは限られており、広告代理店から提案されるメディアプランはどこも同じようなものになりがちです。その結果コンペで起きている闇として、以下のような負のスパイラルが起きているとの指摘もありました。

【コンペの課題=負のスパイラル】
<ゲーム会社/広告主>

・マージンやCPIが低い提案を出してくる代理店を選んでしまう
・コンペ時のクリエイティブがよく見える代理店を選んでしまう

<広告代理店>
・ゲーム会社に要望に合わせただけのプランを作ってしまう
 →実態とややかけ離れたプランの作成に労力をかけてしまう

そして、「このようなコンペのためだけの見せかけのプランを作るのも評価するのも、果たしてゲーム会社、広告代理店双方にとって本当に価値があると言えるのか?」と、闇に深く切り込むような見解も述べられました。

では、パートナー選びの手法としてコンペ以外にどのような手段が考えられるのでしょうか?代替となりうる且つ本質的な手段としては「担当する予定の広告代理店のチームメンバーと数時間面談して、パートナーとして信頼関係を築けそうな人か見極めていく方が良いのでは」との見解が述べられました。

<「企画の丸投げ」という闇>

また、ゲーム会社のマーケターから広告代理店に対して行われる「企画の丸投げ」について問題視する声も上がりました。実態として、目的やターゲット、伝えるべきゲームの魅力が、ゲーム会社としても不明瞭なままに、全てを広告代理店に考えてもらうケースが少なくないとのことです。

ゲームはエンターテイメントであるがゆえに、その魅力の定義や言語化をすることの難易度は高いと思います。だからこそマーケティングを成功させる上でのキーでありマーケターの最も重要な仕事であると言えます。それを考えること自体をマーケターが放棄し、広告代理店に丸投げしているケースがあるのなら、これはマーケター側が抱える大きな課題だと思います。

コミュニティ関連の施策を意思決定できないマーケター

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<コミュニティマーケティングが進まないのはなぜか>

これまで議論してきた課題全体に関連する話題として「コミュニティマーケティングへの取り組みがなかなか進まない」という声がゲーム会社側からもパートナー側からも上がりました。その要因は、まさにスマホゲームマーケターの抱える課題が詰まっている状況といえるものでした。

【コミュニティマーケティングへの取り組みがなかなか進まない理由】
・コミュニティマーケティングは集客に限らずROASでは評価がしにくい
・施策の推進にはゲームやコミュニティの深い理解とコミットが必要
・施策の効果や価値が定量値で出ていても、その指標が複雑で説明しにくい
・ゆえに広告代理店が提案しにくい(ゲーム会社が丸投げできない)

コミュニティマーケティングはどのように取り組んでいけば良いのでしょうか?その点については「社内にコミュニティの目的や価値を理解させられない人が、社外のコミュニティを作れるわけがない。まずはマーケターがゲームにおけるコミュニティマーケティングの目的や役割を明確化し、組織の価値観として浸透させる努力をすべき」というとても本質的で唸る意見も出ました。

また「内容にもよるがコミュニティマーケは大きな金額を使わずとも取り組めることはたくさんある。予算の範囲内で出来ることから少しづつ知恵を絞って始めていくべき。」という意見も。そして「コミュニティマーケ単体かつ短期の効果にはこだわらないこと」、「そして継続が重要なこと」もポイントとして上げられました。あくまでマーケティング全体で達成すべきKPIに対してどうだったのか?その貢献度を見ていくべきで、ここでも全体最適・全体評価の視点が重要であるとのことでした。

【コミュニティマーケティングのはじめの一歩】
①まずはコミュニティマーケティングの意義と目的と役割を考えよう
②そして社内に共感してもらえる「味方」を作ろう
③まずは予算も体制は無理せず、できること、続けられることから
④評価は中期的&全体的に。またコミュニティ参加ユーザの動向を見よう

【まとめ】マーケターは自信を持って、正しいことをやろう!

【スマホゲームのマーケティングの課題】
①マーケターが本質的で適切なKPIを追えていないのでは?
②マーケターの裁量やコミットが低いのでは?
③マーケターと広告代理店の関係ってこれでいいの?

上記のようにスマホゲームのマーケティングには課題が山積みです。これを解決していくためには、「事業にとって正しいことをやること」、そして「自信を持って、正しいことを社内に発信していくこと」、その結果「マーケターの一人ひとりが社内での存在感を高めていく」ではないかと思います。そうすれば「」は消えていくはずです。これは業界問わず同じことが言えるのではないかと思いました。

【業界問わずマーケティングの闇に立ち向かうために】
・自信を持って、事業にとって正しいことをやろう
・自信を持って、正しいことを社内に発信していこう
・結果としてマーケターの一人ひとりが社内での存在感を高めていこう

以上、参加者も巻きこみ白熱した1.5時間のウェビナーの内容共有でした。今後もSGMSでは業界発展につながる議論をやっていきたいと思っています。第3回のSGMSウェビナーも企画しているので、ぜひまた参加してください!

<第1回のSGMSウェビナーのレポートはこちら>

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