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業界人なら知っておきたい「ゲーム実況」の世界 〜マーケティング視点で見る日本国内のゲーム実況のデータ

ゲーム実況のデータを2021年まで追加し、YouTubeで大きく成長している#shorts動画におけるゲーム実況のデータも追加しました(2022/6/24)

2020年3月に発売されたNintendo Switch用ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」が国内販売本数が919万本を突破しました。これは国内のゲームソフトの歴代最多売上本数を大きく更新する歴史的記録です。(これまでの1位は35年間破られなかったファミコン用ゲームソフトの「スーパーマリオブラザーズ」の681万本でした)

同様に2020年11月に発売されたNintendo Switch用ゲームソフト「桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜」の売上本数が200万本を突破しました。4年前に発売された「桃鉄シリーズ」の前作の売上本数が約40万本だったにも関わらずです。ゲーム業界に一体何が起きているのでしょうか?

コロナ禍において「ゲーム」や「動画」などの自宅で楽しめるエンターテインメントが世界的に大きく成長していますが、前述したゲームの大ヒットの背景には「ゲーム」×「動画」の2つの融合とも言える「ゲーム実況」があることをご存知でしょうか?

「ゲーム実況」は元々YouTubeでも人気のトップカテゴリの一つですが、いまやYouTubeの普及が加速し、幅広い世代にゲーム実況が広がっています。いまや有名芸能人もYouTubeでゲーム実況をしている状況ですし、コロナ以前と以後でゲーム実況の視聴時間は倍増しているというデータもあります。

「ゲーム実況」はビジネスやマーケティングにおいてもとても高い影響力を持っており、今後その影響力はさらに拡大していくと思います。それどころか、ゲーム実況が一つの大きな産業になると考えています。しかしながら、これまでゲーム実況に関するデータが世の中にあまり出ておらず、よくわからない、という声も聞こえてきます。

今回のnoteでは、YouTubeのデータベースサービスであるエビリー社の「kamui tracker」にご協力いただき、日本国内のゲーム実況の状況をデータで紹介します。このnoteを読むことで「ゲーム実況のポテンシャル」を感じてもらえるのではないかと思います。

これまで公開されてこなかった貴重なデータも含まれるのでぜひ最後まで読んでもらえたらうれしいです。もし少しでも参考になったらぜひこの記事のいいねや拡散をお願いいたします!

ゲーム実況のプラットフォームはYouTube、Twitch、Mirrativ、OPENREC、Mildom、ニコニコなど多数ありますが、今回は国内で特に存在感の大きいYouTubeに特化してデータをご紹介します。他のプラットフォームにも独自の特色があり、それぞれが成長している点はご留意ください。

ゲーム実況の動画は年間どれくらい公開されているの?

日本国内においてYouTubeにどれくらいのゲーム実況が投稿されていると思いますか?Kamui Trackerで調べてみると、2020年は年間で約220万本のゲーム実況がYouTubeに投稿されていました。1日あたり約6,000本のゲーム実況が投稿されていることになります。投稿数は年々増加していますが、特にライブ配信が増えており全体の約半数がライブ配信になっています。

ゲーム実況ってどれくらいの人が見ているの?

日々たくさんのゲーム実況動画公開されており、その数は年々増え続けているわけですが、それは視聴してくれる人がいるからこそ。実際にどれくらいの人がゲーム実況を視聴しているかを2020年にネットリサーチで13歳〜60歳の男女に対して調査したところ、全体の35%の人が月に一度以上、26%の人が週一回以上ゲーム実況動画を見ていることがわかりました。日本の13歳〜60歳の男女の人口は約7100万人なので、人口にすると約2000万人〜2500万人となり、実に多くの人が日常的にゲーム実況を楽しんでいることがわかると思います。

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意外なことかもしれませんが、ゲームをほとんど遊ばない人でも17%がゲーム実況を日常的に見ています。つまり、自分でゲームを遊ばない代わりにゲーム実況を見ることでゲームを楽しんでおり、ゲームの最新情報を日常的に取得しているということです。これは「ゲーム実況がゲーム人口を拡大している」と言える傾向です。

「ゲーム人口の拡大」はかつての任天堂の戦略キーワードでした。後述しますが、任天堂は業界に先駆けてゲーム実況のガイドラインを出し、ゲーム実況を容認する動きを取りました。そしてコロナ禍においてゲーム市況が大変に盛り上がった結果、任天堂は過去最高益を更新する好決算になります。この要因の背景の一つには「ゲーム実況」があるのではないでしょうか?

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世代別で見ると、当然のことながら若年層ほどゲーム実況が普及しており、10代は68%、20代も56%の方がゲーム実況を日常的見ています。一方、50代も20%の方が見ており、今後も普及が進んでいくと予想できます。このデータを見ると今後のゲーム実況の高いポテンシャルを感じませんか?

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どんなゲームタイトルがゲーム実況されているの?

約2500万人の視聴者はYouTubeではなんのゲームの実況動画が見ているのでしょうか?今回kamui trackerのデータを特別に使わせてもらって、2020年の一年間で公開された動画を集計し、①動画の再生数②公開された動画の本数③動画を公開した実況者の数のランキングを作ってみました。これもあまり公開されていない貴重なデータだと思います。

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全デバイスのゲームを合算したランキングを見てみると、「マインクラフト」、「フォートナイト」、「Apex Legends」、「あつまれ どうぶつの森」がゲーム実況四天王といえるほどゲーム実況の支持を受けているタイトルです。販売本数やユーザ数が多いタイトルが上位と言えますが、必ずしも販売本数ともランキングは比例していません

動画再生数部門では「マインクラフト」、「フォートナイト」が飛び抜けて多く(3位と比べても3倍以上です)、年間で60億再生以上されていました。また、動画の本数部門では「フォートナイト」が飛び抜けた1位になっている一方、実況者数部門では「Apex Legends」が1位になっています。また2020年後半には「Among Us」も多くの実況者がしていたタイトルでした。

ランクインタイトルのゲーム機/デバイスを見ると、コンソールゲームタイトルのランクインが多いことがわかります。これはゲーム実況が若年層に熱心に見られていることも関係がありそうです。一方、実況主ランキングではPCゲームタイトルも上位にランクインしています。

ランキング上位のゲームタイトルはなぜゲーム実況において視聴者と実況主からの支持を集められているでしょうか?視聴者と実況主からの支持される=「ゲーム実況映え」は、今後のゲームのマーケティングにおいてとても重要なポイントになると思います(これは別途考えてみたいと思います)

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総合ランキングではコンソールゲームタイトルが強かったので、スマホをメインにリリースしているゲームだけのランキングを見てみました。スマホゲームでは、「モンスターストライク」、「荒野行動」、「パズル&ドラゴンズ」、「Identity Ⅴ(第五人格)」がスマホゲーム実況四天王と言えるタイトルです。

動画再生数部門では「モンスターストライク」、「荒野行動」が抜けており、年間10億再生規模になっています。「モンスターストライク」はずっと再生数をトップをキープしており、これがモンストのロングセラーになっている理由の一つと言えそうです。動画の本数部門では「荒野行動」が抜けた1位で、実況者数部門では2020年の新作の「原神」が1位にランクインしていました。また「雀魂」が3位にランクインしていることにも驚きます。スマホゲームにおいてもアクティブユーザ数が多いタイトルがランキングの上位になっている傾向はあるものの、アクティブユーザ数だけで決まるわけではなさそうです。

原神」は2020年の最も注目すべきスマホゲームの一つだったので、多くのゲーム実況者がリリース後にすぐに実況をしたことが、実況者数が多くなったことにつながったと思われます。その後、「原神」のみに注力してゲーム実況をする実況者も多く見られました。総合ランキングでも「Apex Legends」、「Fall Guys: Ultimate Knockout」、「Among Us」が上位になっていたように、実況主ランキングには新作が上位に入ってくる傾向があることも注目のポイントです。

なお、この動画再生数ランキングはYouTubeの再生数を集計したランキングです。先に説明したように今はライブ配信が特に成長していますので、全体トレンドを正確には反映できていないかもしれません。そこで、「配信技研」がレポートしている「日本ゲームカテゴリ 2020年12月 ライブ配信視聴ランキング (タイトル)」も合わせて見てみてください。このランキングは、ライブ配信の視聴時間順のランキングになっており、ライブ配信におけるゲームタイトルの支持の強さを表しています。

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日本ゲームカテゴリ 2020年12月 ライブ配信視聴ランキング (タイトル)
①Apex Legends
②Minecraft
③マリオカート8 デラックス
④Among Us
⑤フォートナイト
⑥桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜
⑦Dead by Daylight
⑧グランブルーファンタジー
⑨Cyberpunk 2077
⑩IdentityV 第五人格

ゲーム実況動画の分類と再生数が多い動画の事例

最後に、ゲーム実況動画を独自に11種類のタイプに分類したものを紹介します。どんなゲーム実況の動画が世の中にあり、その実況動画が支持されている理由を知ることは、ゲーム実況の世界を理解するために必要不可欠です。そして、なぜこのタイトルはゲーム実況の動画数や再生数が多いのかを知ることは、現在のゲーム市場でヒットタイトルを生み出すための重要な視点だと思います。

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以下のいくつか上記の分類に当てはまる代表的な動画を紹介します。

■初見プレイ / ゲームレビュー

■ガチャ動画

■複数人プレイ / コラボ

■やってみた / 検証 / 挑戦

■スーパープレイ

■ゲームプレイ攻略

上記のようにゲーム実況のジャンル分類してみると、視聴者がゲーム実況を見るニーズや動機も見えてきます。大きくニーズと動機をまとめると、①新しいおもしろいゲームを知りたい②自身が遊んでいるゲームをもっとうまくなりたい③自分ではできないようなプレイや遊び方が見たい④ゲームの中で生まれるドラマやすごい瞬間が見たい⑤ゲーム実況者のことをもっと知りたい、の5点が大きいのではないかと思います。

上記を例にした再生数が多いゲーム実況動画は、アクティブユーザ数が多いゲームを題材にして、視聴者のニーズを的確に捉えた結果である、と言えると思います。

なぜゲーム実況がマーケティングにおいて重要なのか?

これまではゲーム実況を市場/マーケット観点で解説をしてきましたが、とても多くの人がゲーム実況を楽しんでいる状況にあることはご理解いただけると思います。ゲーム業界においては、もはやYouTubeが最も多く、そして最も頻度も高くユーザにリーチできるメディアです。ゆえに、今後はゲームのマーケティングはもちろん、その他の業種においてもゲーム実況の活用はとても重要になると思います。理由は、とてもたくさんのユーザが高い熱量で日常的に見ており、さらに今後も普及していくことが確定的だからです。

ゆえにゲーム実況とどのように向き合っていくかがビジネスにおいてとても重要になります。2020年に象徴的な出来事だったのが、『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』が200万本を超えるヒットになったことです。いろんな要因があると思いますが、その背景にゲーム実況があったことは間違いありません。

以前は著作権の問題で、ゲーム実況を無断で投稿し広告収益を得ることはグレーでしたが、任天堂が2018年に出した「ネットワークサービスにおける
任天堂の著作物の利用に関するガイドライン
」を皮切りに、各ゲーム会社はゲーム実況の活性化のためにガイドラインを元に積極的に容認するようになってきています。今後よりゲーム実況が広がりやすい環境になっていくと思います。

以上、業界人なら知っておきたいYouTubeにおける「ゲーム実況」の国内市場動向でした。次回はゲーム実況のマーケティング活用におけるもう一つ大事なトピックである「ゲーム実況のスポンサー/タイアップ動画」の状況について解説するnoteを書きたいと思いますので、この記事が参考になったと思った方は、ぜひnoteやTwitterのフォローをしておいてもらえるとうれしいです!(続きの記事を書きました↓)

kamui trackerの紹介

今回のYouTubeデータはエビリー社の「kamui tracker」にご協力いただきました。「kamui tracker」は国内のYouTubeチャンネルのデータを元に今回ご紹介したYouTubeの国内マーケットデータだけでなく、YouTuber向けには自身のチャンネル分析をより簡単に深堀りできるツールを提供しています。無料で利用できる範囲もあるので、ぜひ活用をしてみてください!

MOTTOのYouTube事業の紹介

株式会社MOTTOでは、国内トップクラスの数のYouTubeマーケティングの経験を元に、「企業のYouTubeマーケティングの右腕」をテーマにYouTubeビジネス支援サービスを提供しています。キャスティングやタイアップの提案だけではなく、ビジネスに合わせてどのようにYouTubeと向き合っていくべきか、YouTubeのトータル戦略からサポートすることが特徴です。ぜひ課題感があればお問い合わせください!

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