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12/29放送、『ファミリーヒストリー』草刈正雄の回を見て考えたこと

『ファミリーヒストリー』はもともと好きで、よく見ていた番組。どんな人にも、どんな家族にもいろんな背景があって、ご先祖様のうちの一人の小さな決断が、今のその人の根本になっていたりする。まさにバタフライエフェクト。お盆に放送された、草刈正雄を取り上げた回も面白かったので、続編はいつやるのだろうと楽しみにしていました。

草刈母の選択

ちなみにですが、ずっと昔、森茉莉が「立派な人物の名前というのは、それそのものだけで十分立派なのであって、それに氏だの君だの付けるのはおかしい」と書いてるのを見て、おっしゃるとおりと思ったので、敬称略でいきます。知り合いでも知人でもない人を「草刈正雄さん」と呼ぶのも変だと思うしね。

今回の放送は、前回放送した分の再録も多くて、前回分を見ている者としては「そこはいいんだよ!先へ行ってよ!」と思うところもないではなかったが、初めて見る人もいるからしょうがないのでしょうね。

ともかく、前回放送分と同じく、草刈が母一人子一人で育ったこと、父は米兵だが朝鮮戦争で戦死したと聞かされていたこと、家には父の写真は1枚もなく、草刈りは父の姿を全く知らなかったこと、などが改めて語られました。

そして、母は女手ひとつで子どもを育てるのにとても苦労したが、父の悪口などは決して言わなかったということも。それどころか、本をよく読む賢い人だった、とてもハンサムだった、と繰り返し言っていたらしい。

若いころの草刈正雄の写真を見ると、それこそ「THE ハンサム!」という感じだが、その人よりかっこいいというのだから、よほどだったのだろう。

しかし、実は、父は戦死していなかったのよね。
それどころか、後にドイツ人女性と結婚して家庭をもうけていた。そして数年前まで生きていた・・・。つまり、草刈りと母は「捨てられた」という状態だったわけです。草刈は、いわゆるGIベビーなのですね。

ここからの、草刈母の選択がすごいなあ・・・と思うのです。
捨てられたと分かったあと、いや、その前からかもしれないけど、「自分ひとりでこの子を立派に育てていく。この子を幸せにしてみせる」と、かたくかたく、かたく決意したのだろう。

今だって、ひとり親家庭で子どもを育てるのは大変だと思う。当時の、外国人に対する差別も偏見もある中で、明らかに外国にルーツがある容姿の子どもを育てていくのは、いかに困難であったか。
ときには、「あんたのお父さんはひどい人なんだよ」と、子どもに向かって愚痴のひとつもこぼしたくなっただろう。でも、草刈母はそれをしなかった。それどころか、とにかく父を褒めた。よく本を読み、勉強家で、ハンサムで優しい人。
息子の中の父親像をゆがめたくなかったのだろうけど、自分自身もそう思いたかっんだろうなあ・・・。

そして自分がつくったこの父親像を、ずっと守り抜くと決意したのだ。

すべてを受け入れる

前回もそうだったけど、今回の放送でも、草刈りはしばしば「複雑ですね」「言葉が出ない」と繰り返し言っている。
そりゃそうだろう。死んだと思っていた父が生きていた。こぎれいな町で大きな家に住む親族。そこに飾られた若き日の父の写真(これがまた草刈二そっくりで実にチャーミング!)。そして父の墓。

「なんだよ!なにやってんだよ!」・・・という気持ちも沸いてきたのではないか。「母ちゃん、どれだけ苦労したと思ってるんだよ!」・・・と。

でも、いとこや伯母たちの親切で優しい態度に触れると、そんな言葉も口から出せなかったはず。複雑としかいいようようがない心境だったろう。

それでも、草刈は、現状を受け入れることに決めた。
最後、伯母に渡した手紙には、恨み言はひとこともなく、感謝と愛があふれていたけれども、だからこそ、その背後にどれだけの苦悩があったかと考えさせられるものであった。

伯母さん、手紙を読んで泣いていたけれども、私も泣いちゃったよ。

こういう結末を生んだのは、草刈母の「愛した人の全てを受け入れる。子どもに父の悪口を決して言わない」という決意と愛なんだろうなあ。
70年前、ひとりの若い女性の決意が、今になって、関係者一同に和解と愛をもたらしたのだ。

番組後半、草刈が「今回のことは、母に導かれたようだ」と言っていた。そういうことって、あるんだと思う。
生前その人が、何を言っていたか、どう行動していたか。それが、死後も影響を与えると言うことが。
母が、父やその親族の悪口ばっかり言っていたら、そもそも会う気にもなれなかったかもしれないしね。いや~、これもバタフライエフェクト。

ひとまず口角上げて生きよう

自分の一言やちょっとした行動が、周囲にどういう影響を及ぼすか、それは分からない。
私なぞは全く無名の一般市民だけれども、若き日の草刈母だってそうだったのだ。

つらいこと、イヤなことは生きていればたくさんあるけれども、ひとまず口角は上げて生きていこうぜ!・・・と、そんなことを思った年の暮れなのでした。

ここまで付き合ってくださって、ありがとうございます。どうぞよいお年をお迎えください。

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