A sentimenatal trip, Utsunoya ;R2-8-11, Tue.

昨日の8月10日月曜は何故か知らないけど、休日のようだった。     8時半過ぎに市役所に書類を取りに行くつもりでいて、やっと気が付いた。

何の休みだろうとアホ娘に訊いたら、「ヤマの日」だとのこと、「海の日」があるのに、「山の日」がないとはケシカランといふ、ナワバリイシキ旺盛な不思議な二ホン社会を見事に反映している。

そして、どこにいてもクソ熱いから「どこか山にでも登ろう」といふことに相なった。

私のネグラはJR藤枝駅付近で「山」と言われて、どこにしようかと思案。 直ぐに浮かんだのは、毎日と通っているバイパス。そこに、2か月ほど前にチャリで行ったことのある「明治トンネル」のことを話したら、即決定。

後で気が付いたことだが、娘がようやく歩けるようになったころに行った場所で、まだ長野ナンバーのサニーに乗っていた時期だった。県外ナンバーで、かつニンソーも悪かったのか、巡回のお巡りさんから不審な車だとみなされて、後部トランクを開けるように言われたことも思い出した。

ともかく、飲みかけのコーヒーもそこそこに支度となる。私は、8時ころには、残っていた小麦粉と卵でホットケーキを焼いておいたが、私の分まで娘は食べてしまい、なかなか動かない。保冷袋に冷凍しておいたバナナと飲料水ボトルやらプリン、パン、ミニトマトなどを手早く放り込んで車に乗るが、娘は何をモタモタしているのか、、、。車内の気温がエアコンで完全に下がった頃にようやく出発。

ところが、道路は案の定ラッシュ。普段の早朝なら20分程度の距離をその3倍以上かけてトンネル手前の道の駅に着く。時刻は11時10分過ぎ、お天道様は真上から照り付けるている。駐車して、それらしき方向に歩き出す。

案内の矢印はどこにあるのか、わかりにくい。2-3か月前に自転車で通った道は、バイパスよりかなり山側にあるので、大体の方角の見当をつけて急峻な坂道を進む。

長ズボンで正解だった。通路両脇から延びる草丈は、9時前ならば”露払い”が必要な状況。途中に見つけた案内図には、明治の頃と思われる”人力車”の絵まで描かれている。皆目わからないが、どのようにして当時の人々がこの峠を越えていたのだろうか。

階段を登りきると、なだらかにカーブする坂道に出て一安心、すぐトンネル入り口が視界に入る。娘は、所々でスマホ撮影を繰り返している。

トンネル内は天井の灯りだけの静寂の世界で、ひんやりと心地よい空気に包まれていた。少し進むと、反対側出口に数人の人影が見える。ここで引き返すことも考えたが、まだお昼前だし、手提げ袋には、ペットボトル水のほかにスナック程度の食料もあるので、どうせなら峠の反対側へも歩いてみようといふことになった。

トンネル静岡側出口から丸子に通じる石段の坂道を初めて歩いた。途中の川脇に”くるま屋”といふ古ぼけた看板あり、水車なのか人力車なのか、わからない。とにかく休日とはいへ、真昼間にこの数十メートルの距離で、人の気配は皆無、江戸時代にタイムスリップしたような気分だった。

ここ一帯を歩き続けてみて、気になるのは、案内標識が見当らないこと。数か所あった立て看板図の全体像を思い出しながら、それらしき方向に進むしかない。ようやく東海道下りの峠入り口に立つ。娘は、スマホでナビ検索するが、やはりこれも時間の無駄。私は、勘を頼りに山道を登り始めた。

数十歩進むと、鬱陶しい下界の暑さは吹っ飛び、厳粛な冷気すら感じられてくる。そして、35年ほど前の記憶も蘇ってくる。細く湿った山道で、潺(せせらぎ)のBGMを耳にしながら、古代の人々も同じ道を通ったであろうと不思議な”懐かしさ”すら覚えた。この沢伝いの山道は、伊勢物語、すなわち平安時代のころから難所中の難所といわれてきた。わたしは念のためにと、百均の手袋を用意していた。ズボンのポケットからそれを両手につけて木の枝や根っこ、岩角に触りながら進む。軽食を容れたバッグは体力に勝る娘が持っているので助かるが、私は時としてふらつくことあり、つくづく体力の低下を実感した。

20分もしないで汗が全身から吹き出し、丁度半ばと思われる部で歌2首を認(したた)めた案内板が目に飛び込む。そこには、このように書かれていた;

[わが心 うつつともなし宇津の山 夢路も遠き都恋ふとて]
[つたかへで しぐれぬひまも宇津の山 涙に袖の色ぞ焦がるる]

尚、「宇津ノ谷、十六夜日記」でGoogle索引するといくつかヒットする。 だが、そのほとんどは誤字やコピペの産物と思われ、すべて不可。

やはり、オリジナルからと探すと、あった;

https://shikinobi.com/izayoi-nikki  「十六夜日記」作者とされる阿仏尼に触れると、とんでもなく長くなるので、このへんで。

こうしてお昼頃に、峠頂上に立つ。広々とした眼下の前後風景を楽しみつつ、水分補給と、持参バッグ内のシャーベット状のバナナと冷えたプリンなどを補給。一休み後、再び岡部宿方向に降りていく。




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