POLICE in 2117 3-23

 3-23、決戦に備えて

 家に着いた。

「QP、どうだ?」

「はい。パーツの交換だけで済みそうです。ありがとうございます」

「そうか、そりゃよかった。それにレーザー銃じゃなくて良かったよ。レーザーだったら確実に電源が落ちてるところだ」

「ああ、そうでした。忘れていました」

「ははは、ときどきおまえは感情があるんじゃないかって思うことがあるよ」

「私も欲しいと思います」

レプノイドには感情がない。積み上げたデータからその時、折々の振る舞いを決めているのだ。

「君には感謝している。ありがとう」

「いえ、お役に立てて幸いです」

「今日はもう下がっていいよ」

「はい。おやすみなさいませ」

「おやすみ」

由莉奈がベッドに寝そべっている。

「ねえ、私たちもさ、赤ちゃん欲しいね」

「ああ、そりゃいいけど学校を卒業してからな」

「ホント?ホントに学校卒業したらいいの?」

「ああ、いいよ。でも育てるの大変だぞ。おれの仕事が暇な時にしてくれなきゃ」

「そんなの無理じゃん。私、お母さんに手伝ってもらうから大丈夫だよ」

「そうだな。そうなったらお母さんにはここに住んでもらわなきゃな」

「嬉しいっ。クロードの赤ちゃん早く見たいな」

「まず梶原の赤ちゃんだな」

「うん。楽しみ」

一緒に風呂に入った。

「腕がすごく痛いのよ」

「銃を持って力んだからだろうな。すぐによくなるよ」

「私、ああやって何時間いたんだろう。あいつが入って来たのお昼くらいなんだよ」

「おれが乗り込んだのが2時半だからな。今日は抱っこして寝かせてあげるよ」

由莉奈を抱き上げてドライシャワーで体を乾かして、ベッドまで運んだ。そして愛し合った。


 翌日はローカルラインで海上保安課に出勤した。

特捜班を集めて今日も各自で行動するように言って、昨日逮捕した河本の弟の取調べを始めた。

「どうだ、腹は痛むか?」

「ああ、飯が食えねえ」

「すまなかったな、やり過ぎた」

「しかたねえさ。女を殺しに行った返り討ちがこれくらいで済んだらラッキーな方だ」

「まあ、そういうことだな」

「あんた兄貴を子ども扱いしたらしいな。触れることもできなかったって言ってた」

「あいつはおれの仲間を殺したんだ」

「らしいな。あんたはおれなんかが敵う相手じゃなかった」

「おまえは井澤に言われてきたのか?」

「ああ、そうだ」

「あっさり認めるんだな」

「決別の時だ」

「小宮山をやったのもおまえだな」

「ああ、井澤の命令で殺した。死体は北住宅の外れの河川敷に埋めた」

「場所を教えてくれ」

ディスプレイに地図を表示した。拡大して写真表示にして位置を特定した。

「ちょっと待っててくれ」

海上保安課に遺体の回収を依頼した。おそらく白骨化しているだろう。

「それでリングはどうしたんだ?」

「井澤に渡したよ。あの時おれは初めて人を殺す気で殺したんだ。やつも不安だったんだろ?ちゃんとやるかどうか」

「どこで渡した?」

「やつの家に持参した」

「そうか。ありがとう。以上だ」

「ちょっと待ってくれ。あんたの女のこと・・・すまなかった」

「いいさ、彼女も特に怖がってない。おまえ、暗殺者としては失格だな」

「ああ、好きでやってたわけじゃない」

「あとは兄弟、仲良くしろよ」

「ありがとう」


 ボックスに乗り込んで警察本部に向かった。やるべきことをやって、後始末のことを考えなければならない。取り巻き連中を欠けることのないよう全員を逮捕し、銃器と爆薬を回収する。信管は切断しておいたから爆発することはないだろうが。そんなことを考えながら、チェントリーノホスピタルに向かった。

フロントで吉野医師を呼んでもらった。

「いらっしゃい」

「それって病院じゃおかしくないですか?」

「いいのよ、そういうのは」

「なかなか捌けてらっしゃる。どうですか?ポリスは」

「ああ、ポリスさんね。相変わらず意識はありません。でも一度、呻き声がありました。目覚めは近そうね。もう命の心配はなくなりました」

「入院はあとどれくらい?」

「そうね、退院までとなるとまだまだね。弾の摘出もまだだし、私の心の整理もね」

「はは、最後のが一番治りにくそうですね」

「あなたはどういう人なんでしょうね。心理学を学びたくなったわ」

「特に何もありませんけどね」

「あやがね、あなたのキルスマイルにみんなやられるんだって言ってたのよ」

「キルスマイルですか。初めて聞きました」

「でもね、言われてみるとなるほどなって思うの。あの子もなかなかだわ」

「ちょっと様子見たいんですけどいいですか」

「あ、ごめんなさいね。昨日、ご両親がみえたのよ。安心してお帰りになった。イギリスにお住まいなのね」

「それは良かった。イギリスですか。そういえば仲間のこと、何も知らないなぁ」

ポリスは運び込んだあの日と同じようにプールに浮かんでいる。あの時から彼の中で何が起きて今、どうなっているのだろう。何を思っているのだろうか。

「ありがとうございました。よろしくお願いします」

「もう帰るの?」

「はい。最後の大事な仕事があるんです。ポリスの顔を見て、それからと思いましてね」

「部下思いなのね」

「いえいえ何も特別なことじゃありませんよ。それでは失礼します」

「また来てね」

「もちろんです」

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