POLICE in 2117 2-15

 1-15、ラボ襲撃犯の逮捕①

 特捜班に着くと北山が検察に送られることになったという。これでポリスの用事も一つ減ったということだ。もちろんポジティブな意見書をたっぷり付けて送ることになる。ラボ襲撃犯は宇野と上川という警護課の警官だと判明した。

「今日はラボ襲撃の2人を逮捕する。いいか、はっきり言ってちょっとヌケてるやつらだが発砲してくる可能性がある。武器を携帯して油断せずにいこう。現在地は?」

「出勤しています。22階です」

「よし、行くぞ」

22階のグレーのコクーンは半分ほど点灯している。宇野と上川はあまり離れてはいなかった。 ポリスに宇野を任せて、上川のコクーンの入口に立った。

「上川さん?」

「はい」

「ラボ襲撃犯としてあなたを逮捕します」

「クソッなんでわかった」

「抵抗はしないでください。痛い思いをするだけだから」

「わかった」

拘束具は簡単に使えた。プラスチックの輪を腕に通してその端を引っ張るだけだ。ここでその端がちぎれて落ちるのだ。 特捜班の会議室にパーテションを立てて早速、取調べを始めた。

「どうしてわかったんだ?」

「あんたの声が録音されてたんだよ。カメラのデータは一カ所だけに保存してるわけじゃないってことだ」

「まさか。そんなこと」

「そうか。君に訊きたいことはたくさんあるんだが君は東の山に行ってたよなぁ」

「ああ、行ったことはある」

「うちの班の4人が行方不明なんだが知らないか?」

「知らないね」

「どうして知らないんだ?」

「おれはそんなことには関わってないからさ」

「じゃ何に関わってるんだ?さっき東の山に行ったって言ったよな。行ったのはつい最近のはずだ」

「おれは3人がどこに行ったかなんて知らない」

「うちからいなくなったのは4人だぞ。ボロが出てきたな。じゃ誰が3人の行方を知ってるんだ?」

「誰が知ってるかなんて知らない」

「ファラオの心臓がどうして署内にあると思った?」

「ファラオの心臓?それなんのことだ?」

「おまえはバカなのか?それを奪うためにまでラボを襲撃したんだろ?」

「何のことだかわからない」

「じゃ襲撃のビデオ見るか?お前の口がおまえの声でファラオの心臓って言ってるビデオ、見たいか?」

「そんなのあるはずない」

「じゃ一緒に見よう」 ディスプレイを立ち上げてビデオを再生した。

「このマスクを着けて銃を撃ってるのがおまえだ」

「いや、おれじゃない。何かの間違いだ」

「じゃ隣のやつに訊いてこようか?隣はDNAが出てるから逃れようがないからな。素直に喋った方がいいんじゃないか?」

「ああ、宇野に訊いてみろよ」

「いいんだな。隣に訊いて黒だとなったら殺人未遂罪と強盗傷害罪で検察に送る。今、喋ったら傷害って線もなくはない。それにはうちの4人の行方も教えてもらわなきゃならないが・・・」

「ああ、ちょっと待ってくれ」

「警官が殺人罪の終身刑はツラいぞ。ケツの穴がズボズボになっていつもクソを垂れ流して歩かなきゃならなくなるらしい。それも一生だ」

「ああ、わかった。おれがやったよ。これでいいんだろ?終身刑は勘弁してくれ」

「それからもう一つ条件出したよな」

「ああ、やつらは・・・えーっと官舎にいるよ。16号棟」

「何階だ?」

「たしか3階だった」

「ありがとな。ちゃんと傷害容疑にしてやるから。じゃ、これで尋問を交代する」

会議室を出ると、知らない男が立っている。

「何かご用ですか?」

「ああ、弁護士だ」

「ご苦労様です。会議室にいますからどうぞ」

梶原と一緒にホバーバイクで官舎16号棟に急いだ。エレベータがジレる。エレベータが開くと中から男と女が降りてきた。初めてここで人に会った気がする。時計は12時を指していた。3階に行き、吉川、沖田、林を救出した。

「梶原、先にこの3人と本部に帰って調書を取ってくれ」

「わかりました」

「頼むぞ。調書を取ったら河本を殺人で指名手配してくれ」

急いで官舎を出てホバーバイクの4人を見送った。 おれはぼちぼち歩いて帰ることにする。これで警護課にケンカを売ったのは明らかだ。弁護士が来たからにはもうあの2人から情報を引き出すのは難しいかもしれない。とはいえ3人を無事に救出できた。次はいよいよクリスタルバンクだ。 本部に着いた。尋問は特捜班の会議室から80階の取調室に移されていた。今度は宇野の尋問に立ち合う。 こちらはゆっくりやってるみたいだ。

「だから何をしにラボに行ったか訊いてるんだ」

「おれは行っちゃいないよ」

「そうなんだ。誤認逮捕だったか」

「そうだ。早く帰してくれ」

「じゃあどうして君の髪の付いたヘアピンが現場に落ちていたのか説明してくれるか?」

「そんなのわからないよ」

「これは物的証拠ってやつだ。わかるだろ?」

「知らないものは知らない」

「じゃビデオを見てみるか?ヘアピンが落ちるところがしっかり映ってる」

ポリスはヘアピンが落ちていく様子をコマ送りで見せた。

「それで現場にあったのが、これだ。これが採取時の写真と君の髪が付いたヘアピン」

「知らない」

「まぁいいよ、言わなくて。隣のお兄さんはしっかり喋ってくれたから。君は否認でもいいです。重い罪になるけど刑務所で頑張ってもらうしかしかたない。反省の弁なし。君は殺人未遂罪、強盗傷害罪、及び宝石の重窃盗罪で検察に送ります。以上で終わります」

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