POLICE in 2117 3-21
3-21、逮捕劇
ボックスに乗り込んで自宅に向かう。ボックスが遅い。進まない。20分かかった。自宅の前まで来ると玄関のドアが開いているのが見えた。拍動が喉元まで上がってくる。
「QP」
QPが玄関で倒れている。銃を抜いてゆっくりとベッドルームに向かう。異様に静かだ。冷や汗が背中を伝う。
ベッドルームのドアを開けると男が倒れていた。銃を向けて近づきつま先で蹴ると唸り声を上げた。持っていた銃をとりあげた。由莉奈がいない。
「由莉奈!」
「クロード?」
由莉奈がレーザー銃を持ってベッドの下から出てきた。抱きしめた。しばらくしっかり抱き合った。
「大丈夫だったか?」
「うん。びっくりした」
「何があったんだ?」
「私はここにいたのよ。そしたら来客があったの。QPが出たんだけどすぐに倒れる音がしたの。だからベッドの下に入ろうと思ったところにこの男が入ってきて」
由莉奈の目から涙が流れ始めた。
「いいんだ。もういいよ。わかったから」
「聞いて。私ね、銃を掴んでぶっ放したのよ。そしたら足に当たったの」
「そうか、よかった。凄いな」
「そしたらバタンってすごい音がして倒れたのよ。こいつレプノイドじゃないよね」
「ああ、人間だよ。河本っていうやつだ」
河本はベストを着ていた。短い時間だから効果はあるってことなんだろう。しかし、由莉奈の銃は足に当たった。通常、足は狙わない。
「おい、河本。起きろ」
河本はフラフラと立ち上がった。表に連れ出した。
「よし、いい子だ。リングは預かっとくぞ。これからおまえの逮捕劇が始まるんだ。かかってこい」
向かってきたところを思い切り股間を蹴り上げた。河本は唸りながら膝をついた。
「おい、立ち上がれ。かかってこい。おまえの兄貴だか弟だか知らないがやつと同じくらい腑抜けた野郎だな」
河本が膝をついたまま睨みつけた。立ち上がって拳を振り上げてきた。右にかわして右のフックを入れるとよろよろと倒れた。
「おいおい、もう終わりか?」
河本は立ち上がり、両手で頬を叩いた。
「てめえ、ぶっ殺してやる」
「そうだ、そのいきだ」
ファイティングポーズからじりと間を詰めてくる。右のストレート。左にかわして腹にアッパーを入れた。河本は前につんのめって倒れた。
「おいおい、だらしないぞ。かかってこい」
立ち上がろうとしたところを正面から顎を蹴り上げた。倒れたところに脇腹を蹴った。左の腕を引っ張って担ぎ上げ、河本のボックスに放り投げた。転がり落ちてボックスを背にして座ったところを腹を目掛けて爪先を蹴り込んだ。河本は血を吐き腹を抱えて横倒しになった。
「おまえを逮捕する。住居不法侵入と器物損壊、殺人未遂。すべて現行犯だ」
河本を拘束した。
「すごーい。強い」
「由莉奈を守るにはこれくらい強くなきゃな。QPはどうだろう。電源が落ちてなきゃいいんだけど」
QPの胸には大きな穴が開いてしまっていたが、充電用の椅子に座らせると目を開けた。どうやら一時的なフリーズで済んだようだ。
「QP、大丈夫か?」
「由莉奈様は?」
「ああ、君のお陰で助かった。ありがとう」
「私は何もできませんでした」
「いや、準備する時間を与えてくれた。助かったよ。ダイゴナスティックしてくれよ」
「はい。ありがとうございます。クロード様」
「由莉奈、どうする?ここにいるか?それとも一緒に警察に行くか?」
「もちろん一緒に行くよ。着替えるから待ってて」
河本のボックスと繋げて海上保安課に向かった。由莉奈は後ろをついてきている。
河本は完全にヘタっている。フロントに銃とリングを預けたが氏名が分からない。リングでIDを表示した。
河本淳二、33才。
「収監してくれ」
「私はどうするの?」
「これから事情を聴くから、話してほしいんだ。梶原にしよう。ちょっと待ってて」
梶原は棚橋の取調べ中だった。
「そこ終わったら頼みたいことがある」
「はい。わかりました」
間もなく梶原は出てきた。
「由莉奈が今日、自宅で襲われたんだ。事情聴取を頼む」
「犯人は?」
「おれが逮捕したが明日にならないと取調べは無理だな。データはフロントにある」
「はい。わかりました」
「みんなここに来てるのか?」
「はい。いますよ」
「じゃ頼む」
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