POLICE in 2117 3-6

3-6、由莉奈との休息

「フォン、由莉奈」

「ごめん、クロード。今連絡しようと思ってたとこ。仕事終わったの?」

「終わったよ。由莉奈は?」

「私、今まで友だちと盛り上がってたのよ。クロードの写真見せたらみんな会いたがってた」

「そうか、楽しみだな」

「こら!クロード。鼻の下が伸びてるぞ」

「そんな気はないって。お見舞いどうする?」

「これから病院に向かう」

「じゃ病院で」

由莉奈とポリスのお見舞いに行ったが、あの女医はいなかった。なぜかホッとした。

「昨日と同じだね」

「少なくとも一カ月はかかるそうだ」

「そっか、まだまだだね」

「しっかりよくなってもらわないとな」

「今日はうちに泊まらない?」

「もうお父さんもお母さんも帰られたか」

「うん。私が出る頃にはボックスを待ってるって言ってたから、すぐに帰ったんじゃないかな」

「そうか、じゃ由莉奈ん家に行こう。地下高速で行くぞ」

「やったー!地下高速!」

由莉奈とボックスを繋げてシティの東の端の入り口から地下高速に入って、南の由莉奈の家の近くにの出口まで20分少々で着いた。ここからは上の田舎道だ。農場の建物が赤く光っている。今日は夕焼けがキレイだ。風車もこころなしかゆったり回っているように見える。

信号で一度だけ止まって由莉奈の家に着いた。

「お邪魔します」

「さあどうぞ、入ってください。クロードさんとこみたいに片付いてないけど」

「いえいえ、落ち着きます」

「お父さんはお出かけですか?」

「そうなの。農業委員さんとこに飲みに行ってるの」

「そうですか。農場は大丈夫でした?」

「はいもうしっかり管理してもらってましたよ。ありがとうございます」

「そうですか、安心しました」

「由莉奈!早く来なさい。なにしてるの?」

「部屋を片付けてんの!」

「だから日頃から片付けなさいって言ってたのにねぇ」

「そういうところがまたかわいいんですよ。お母さん、この木彫りの動物はどなたが?」

「あ、これね。これはお父さんの趣味なのよ。今はあまり作らなくなったけど、よく作ってたのよ。これね、木彫りのと組み木のがあるのよ」

「はぁそうですね」

「組み木は設計図書いて、その通りに木を切って組み上げるの。面白いわよ」

「じゃ教わろうかなぁ。いいですよね。前にお邪魔した時から気になってたんです」

「そりゃお父さん、喜ぶわ」

「何言ってんの?お母さん。お父さん、もう手が震えるからダメだって言ってたじゃん」

「教えるくらいはできるわよ」

「ダメよ。クロードと私の時間が少なくなるじゃん」

「まぁ!この子ったら」

「クロード、行こ。私の部屋」

由莉奈が手を引いて部屋に案内してくれる。どうやら2階らしい。それは階段を上がってすぐのところにあった。

「かわいい部屋だな」

「そう?普通だと思うけど」

「だいたい部屋がピンクだしな。それにぬいぐるみがたくさんあるし」

「私ね、このクマが好きなのよ。かわいいでしょ」

「ああ、かわいいんだろうな。おれにはわかんねえよ。由莉奈の方が千倍かわいいからかわいさが薄くてよくわからない」

「へーうまいこと言っちゃって。じゃキスして」

抱きしめてキスをした。

由莉奈が下の方をもぞもぞ探っている。

「あ、もうこんなになってる」

「だからさ、そういうもんなんだよ」

「したくなったってことよね」

「お風呂入ってからな」

「じゃお風呂入ろ。一緒に」

由莉奈が甘えた顔をしている。こんな顔は見たことがない。震えるほどかわいい。

「おかあさーん。お風呂に入るよ。クロードと一緒に」

「いいわよ。いつでも入って」

由莉奈が手を引いてお風呂に案内してくれた。バスルームには湯船があってお湯がはってある。こんな光景を見るのは何年ぶりだろう。由莉奈は昨日よりも明らかに大胆になっている。自宅の開放感だろうか。子どもみたいだ。シャワーの後、一緒に湯船に浸かった。

お風呂でさんざん遊んで脱衣場に行くと新しい下着とパジャマが用意してあった。

「あ、それ。頼んどいたのよ。クロードが来るからって」

「そうか。ありがとう。全然考えてなかった」

お風呂から出て軽い食事をして由莉奈の部屋に戻った。

由莉奈のベッドの中は由莉奈の匂いでいっぱいだ。幸せだ。

「なんだか、今日もすぐに寝ちゃう?」

「そんなことないよ。ベッドがいい匂いがするなって思ってたんだ」

「そう?私の匂いする?」

「するする。いい匂いだよ。幸せを噛みしめてたんだ」

「じゃ抱っこして」

「おいで」

ゆっくり愛し合った。


 翌朝、目覚めて下に下りるとお父さんがいらっしゃる。

「おはようございます。お邪魔しています」

「ああ、いらっしゃい。これからはいつ来てもいいからね。昨日は失礼したね。ちょっと飲み過ぎてしまった。久しぶりに胸襟を開いて農業の話ができた」

「それは良かったですね。私も突然お邪魔して」

「クロードさん。朝はオレンジジュースですよね。これ飲んでみて」

「いただきます」

オレンジの味が濃い。

「これ凄いですね」

「いただき物なんですけどね、これが本来のオレンジなんですって」

「色もオレンジ色ですもんね。いつも飲んでるのは黄色っぽいですけど」

「どこで作ってるんですか?」

「北の山の南斜面で作ってるのよ。特別許可を得て」

「太陽の恵みがいっぱいなんだ」

「定期契約したから一カ月先からはいつでもありますからね」

「こちらで誰かお好きなんですか?」

「なんだ知らなかったの?由莉奈の朝はずっとオレンジジュースなのよ」

「そうですか。そんな話しないから。良かったです」

「私はクロードさんがてっきり由莉奈に感化されたんだと思ってました」

「奇遇ですよね。あ、ヤバい。仕事行かなきゃ!今日は港に出勤なんです」

走って2階に上がって由莉奈にキスをした。それから慌ててボックスに乗り込んだ。しかし、考えたらうちからよりも由莉奈の家からの方が港には近かった。山裾を走って山が切れた所から南に少し行くと海が見えてくる。海上保安課はすぐそこだ。

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