スタジオコロリド「寫眞館」
公 開:2013年
監 督:なかむらたかし
上映時間:16分
ジャンル:ドラマ/アニメ
みなさんは、最後に写真館で写真を撮ってもらったのはいつでしょうか。
かつてであれば、家族写真を撮るのは当たり前のように行われていましたし、七五三祝いで撮影をしたりですとか、学校の入学や卒業の時に記念に撮影した人もいるでしょう。
人生において、写真撮影という行為は大なり小なり節目の場面で行われるものです。
結婚式は行わないけれど、ドレスや和服をきての記念撮影をするというカップルもいることでしょうし、過去から現在に至るまで、まだまだ必要とされている行為でもあります。
スタジオコロリドによる16分間のアニメーション「寫眞館」は、人々の笑顔を撮り続けてきた写真館の主人と、幼少のころから笑わない女性の物語となっています。
16分間
スタジオコロリドは、「ペンギン・ハイウェイ(2018年)」で知名度をあげたアニメスタジオです。
他には、「泣きたい私は猫をかぶる」ですとか、「BURN THE WITCH」などもつくっています。
「寫眞館」は、2013年に「日なたのアオシグレ」と2本立てで上映されました。
短い作品ですが、ピアノ音楽のみで、セリフは一切なし。
その代わりに、キャラクターの演技がわかりやすく、言葉がないほうが、彼らが何を考えているのかがよくわかる作品になっています。
物語自体は、1900年代の初めの頃から、1960年代あたりにかけてが描かれています。
日本にとっても激動の時代となっていまして、写真館のまわりの風景も変わっていきながら、節目ごとの人生の転機が撮影されていきます。
補助作品
本作品は、写真館の主人と笑わない女性を軸にした物語として、そのまま見ることもできますが、この時代の雰囲気が気になった方に、是非みてもらいたい作品を紹介しておきたいと思います。
時代的には、日露戦争が終わったあたりから、新婚夫婦が写真撮影をしにくるイメージとなりますので、当noteでも紹介しております「二百三高地」なんかをみてもらいますと、時代の雰囲気に入りやすいのではないでしょうか。
あるいは、「ゴールデンカムイ」もこのあたりから始まる物語となりますので、こんな時代に登場人物たちはいたのだと感じてもらえればと思います。
第二次世界大戦に近づいてきますと、スタジオジブリ「風立ちぬ」もかぶっている時代となっています。
堀越青年が、関東大震災や、戦争に巻き込まれていく時代です。
戦後になると、東京タワーもちらっとでてきますので、「ALWAYS 三丁目の夕日」もいいかもしれません。
良くも悪くも、日本において1900年代というのはわかりやすい激動の時代ともいえまして、そんな時代の流れの中にあって、「寫眞館」のような方法で、日本の一時代を切り取っていくというのも面白いところです。
狂気の一端
基本的にはよい物語となっていますが、写真館のご主人の狂気を考えると、それはそれでホラー要素もあって面白いです。
人々の笑顔を撮り続けてきた主人ですが、撮影対象が笑わないと、露骨にがっかりします。
物語の後半で、大量の笑顔の写真が見つかるのですが、一様に同じ笑顔で映っているところに、悪意を感じるところです。
それでも、笑わなかった女性は、その笑顔に助けられたりしているのですから、写真というものの存在の大切さも描かれているといってもいいでしょう。
わずか16分間に、かなり凝縮された内容の詰まった作品となっていますので、このあたりの時代を知る補助線にもなるでしょうし、普通にアニメーションとしても、よい作品となっています。
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