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ドラマの底力。VIVANT(ヴィヴァン)で日本が変わるかも。

公  開:2023年
監  督: 福澤克雄
話  数:全10話
ジャンル:ドラマ/サスペンス

ラクダが砂漠で動かなくなると、困るメェ~

海外ドラマに比べて、どうしても、日本のドラマというのは、予算が少なくなりがちです。

ただ、日曜劇場「VIVANT」は、異例の予算規模につくられており、お金をちゃんとかけることができれば、海外のような豪華な作品が作れる、ということを教えてくれる作品だったりもします。

製作費が平均3000万前後と言われるドラマ業界において、一話で1億かけた、というぐらいの話なので、その力の入れようがわかります。

キャストについても、堺雅人や、阿部寛、松坂桃李など、実力派の役者がそろっているところもポイントで、演技力については語るまでもありません。

声だけの出演で、林原めぐみが出ていることも、ファンの中では驚きでしょう。

日高のり子が、Panasonic関連の機器において声をあてていたり、「サイコパス」におけるドミネーターの機会音声でつかわれていたりという、声優による機会音声というのも、もしかしたら意識しているのかも、というにくい起用も見逃せません。

何より、「VIVANT」は、一世を風靡した「半沢直樹」や、「下町ロケット」などでお馴染みの、福澤克雄が演出をしており、キャストの布陣を見ても、ある程度は、当たらないはずがない、というところでもありました。

内容については、まさにエンターテインメントといったところで、福澤演出による脚本が見事に生かされているところです。

こう言ってしまうと、身も蓋もないのですが、「半沢直樹」の原作者である池井戸潤の作品の良いところを抽出し、日本が誇る演技や、役者そのもののキャラクター性をつかい、資金もふんだんに使われた、面白くないはずがない作品となっています。

本作品は、原作はなく、オリジナルとなっていますので、まったく先が読めない状態で放送されていました。話題になっていたので知っている方も多いでしょうが、美味しいところをうまく掬っているところも含めて、憎い演出の数々となっています。

冴えない社員

堺雅人演じる主人公の乃木憂助は、大手の民間会社である丸菱商事に勤めている社員です。

大口の契約によって、お金の送金を行うものの、桁が一つずれていたことによって、大変な騒動に巻き込まれていきます。

このあたりは、池井戸潤が得意としていそうな内容であり、テレビドラマとして福澤克雄が製作していたこともあり、王道的な入りになっているといえるでしょう。

そして、なぜか、主人公の乃木は明らかに二重人格のような、自分と対話をしている。

ちなみに、その存在は、Fと呼ばれるのですが、ついつい、能年玲奈こと、のんが主演していた「私をくいとめて」にでてくる、Aを思い出したりします。

この手の多重人格ものは、ドラマや映画に限らず、漫画でいえば「遊戯王」でも、弱気な人格と強気な人格などが存在しており、どうやって、活躍していくのだろうというのも、気になる点の一つといえるでしょう。


あらすじだけで、漫画っぽい設定ではあるものの、エンターテインメントとしての面白さをプンプンさせるところです。

ここから、架空の国、バルカ共和国に行き、お金をどうやって取り戻すのか、でいろいろな騒動が展開していきます。

豪華すぎる1話

何の事前情報も入れないでみた人は驚いたと思います。

このドラマ、お金を使い過ぎだ、と。

車は次々と壊されますし、大爆発は起きる。エキストラの数は尋常じゃないですし、どうせ鳥取砂丘で撮影したんだろ、と思っていたら、モンゴルで撮影していたりします。

お金のかけ方が凄いのです。

冒頭でも、一話で1億ということも書きましたが、これだけお金をかけられていると、見ているこっちは、別の意味でハラハラしてくるぐらいです。

ジャンルや視点変更

主人公は、堺雅人演じる乃木であることは間違いないのですが、本作品は、キャラクターが何を考えているか、どういう立場で行動しているのか、という点が次々と変わっていくところに面白さがあります。

単純な、騙し騙されというものではなく、福澤克雄と池井戸潤作品の、経済的なやり取りを含めたものであるとか、過去の作品で見たことありそうなのですが、そこも含めて、気になってしょうがなくなります。

かえって、1話から3話くらいまでは、スケールが大きいだけで、そこまで魅力を感じないかもしれません。

ですが、話数が進むにつれて、なんとなく謎が残ったままになるので気になってみてしまうことになります。

池井戸潤作品をみたいと思ったら、砂漠をラクダで横断する大冒険ものになってみたり、スパイものになってみたり、ジャンルもまたいでいくあたりは、資金だけでの問題だけではなく、脚本的にも非常に豪華なものとなっています。

別班という存在

「VIVANT」は、先の分からない展開を、ジェットコースターのように楽しむのが良いと思いますので、細かい内容については控えますが、一つだけ、押さえておいたほうがいい単語があります。

それこそが、別班です。

別班とは何か、という点も含めて、知らない方は、調べないまま見てもらいたいとは思います。

都市伝説のようなものにも思えますし、まぁ、そういう存在があっても不思議ではないかな、と思える存在でもあります。

物語というのは、えてして、まるっきり荒唐無稽なものを描いてもなかなか納得ができないものだったりします。

ですが、どこか、自分の身近なところと地続きになっているという感覚があると、創作だったとしても、真実味を感じてしまうものです。

福澤克雄氏が、ラジオを聞いているときに知った別班という存在からヒントを得て作り出されたという「VIVANT」。

良くも悪くも日本的なものと、海外への売り込みも意識しているのが見え隠れする作品ではありますが、予算をかければ、ちゃんとかけた分売れるということを示す作品となって欲しいとい想うところです。

ちなみに、邦画の中で、今でも伝説的なヒット作品としては「踊る大捜査線 THEMOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が、邦画史上でもっとも売れた作品となっています。

「VIVANT」は、明らかに劇場向けへの伏線も張られていますので、うまくいった暁には、日本のドラマや映画に、再び大きな資金が投入されることになるきっかけともなりえる作品なので、今後の、人気を見守っていきたい作品ともなっています。

やり取りとか一見難しく感じる場面もありますが、細かいことではなく、迫力のある役者が、バタバタしているところをみるだけで、とにかく面白く最後まで見てしまうから凄いです。

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