見出し画像

佐藤二郎の演技。映画「さがす」

公  開:2023年
監  督:片山 慎三
上映時間:123分
ジャンル:ドラマ/クライム

一体、このオヤジは何者メェ~

失踪した家族を探す、というのは、わかりやすい動機付けではあるものの、えてして、闇に触れることが多い内容になりがちです。

中島哲也監督「渇き。」では、役所広司演じる父親が、失踪した娘を探そうとするのですが、優等生だと思っていた娘が、実は、とんでもない娘だったという真実を知っていくことになる、というものでした。

片山慎三監督「さがす」でも、似たような雰囲気は感じるものの、そこで取り扱われるモチーフは少し違っていたりします。

万引きをして捕まってしまった父親を迎えにいく娘。

ダメな父親と娘、というモチーフは、韓国映画で度々見かける構図になっていたりしまして、ポン・ジュノ監督「グエムル-漢江の怪物-」なんかも、ダメな父親が奮起したりしますし、「イカゲーム」でも、主人公はすごく情けない父親となっています。

「さがす」では、現代社会における闇にも触れておりまして、物語を追っていくことで、それぞれの心情がわかるようになっていたりします。

西成

本作品は、大阪の西成が舞台でもあります。

西成といえば、日本でも有数のドヤ街となっており、良くも悪くも訳ありの人が集まってくる場所でもあります。

西成の実態について気になった方は、國友公司氏の「ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活」であるとか、その漫画化された「西成ユートピア」をみてもらうと、どういう場所かは、一発でわかるでしょう。

そのような界隈で暮らす親子のうち、娘ではなく、父親のほうが失踪するところから物語ははじまります。

大人が子供を置いて失踪した場合には、ほとんど帰ってくることはない、という残酷な事実が作中で伝えられたりしています。

このあたりは、是枝裕和監督「誰も知らない」なんかも補助作品としてみてみても面白いかと思います。

娘である楓が、危険をおかしながら父親を賢明に探したり、連続殺人犯のゆがんだ実態にせまってみたり、介護を行う人間の苦しみやその解放を描いていたりもします。

色々と、割り切れない問題を取り扱ってはいますが、何よりみてもらいたいのは、佐藤二郎の演技です。

比較的コミカルな雰囲気の佐藤二郎ですが、本作品では、シリアスな演技が抜群にうまいです。

また、娘を演じる伊東蒼が面白いので、二人の演技なしには語れない作品となっています。

本作品は、主人公の選択が、親子の関係をどのように変えてしまうのか、二人で卓球をするシーンが見ものとなっているのですが、最終的に、娘は、父親の何をさがす、ことになったのか。

ただ、惜しいことに、警察の対応や、主人公や犯人の目的も含めて、ちょっと、説得力の欠ける部分もあるように感じられるため、考えすぎずにみたほうがいい場面もありますので、その点はご注意ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?