#1 トリドール

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自分で顧客として行くことも多く、客単価やビジネスモデルのイメージもしやすいのでまずは外食業界について調べてみることにしました。 
今回、中でも自分が注目したのはトリドールとという会社です。言わずもがなの有名チェーン、丸亀製麺の運営会社で、その他にもカフェや焼き鳥屋なども経営している会社です。

一人の時は安く、すぐに食事が出てくる外食チェーンにいってしまいがちです。「安くて早くてうまい」、といえば僕の中では丸亀製麺です。

どの店舗に言っても顧客が途絶えることのない丸亀製麺の強さの秘訣は何なのか、そしてこの企業は今後も伸び続けるのか、自分なりの視点で分析してみました。

数年前、ハワイ旅行で訪れた現地の丸亀が大盛況となっていたことも良く覚えており、日本発の外食チェーンとして海外売上も高いかも、と想定していたのでそちらの方も調べてみました!

1.会社沿革

1985年 トリドール三番館(焼き鳥屋)を兵庫県加古川市にて創業。
2000年 丸亀製麺を初めて加古川市にオープン
2003年 神戸のショッピングモール内に初めて丸亀製麺を出店
2004年 焼きそば、長田本庄軒をモール内にオープン
2006年 マザーズ上場
2008年 東証一部上場
2010年 ハワイと香港に子会社を設立し、海外進出を本格化
2011年 ハワイに海外初店舗として丸亀をオープン、国内全都道府県に出店
2013年 香港とアメリカで展開する食品会社を買収
2015年 Wok To Walkを完全子会社化
2016年 美と健康を提案するライフスタイルブランド、SONOKOを買収
2016年 ロンドンで人気のラーメンブランドである昇竜を買収
2017年 ヘアカラーの専門店Fast Beautyをグループ会社化
2017年 姫路発症の豚骨ラーメン屋であったずんどう屋をグループ会社化
2018年 香港の有名スパイシー麺チェーンを二社買収
2018年 シンガポールで人気のカレーチェーンを買収

出典元:https://www.toridoll.com/company/history.php

歴史ある企業で、実は創業年は1985年でした。注目すべきは海外進出への積極性とその割合の増加率です。上記Summaryでは丸亀の海外進出についての記載は割愛しましたが、沿革をみるとほぼ毎年新規国への出店を続けています。

決算資料をみていると、日本発のマクドナルドやスタバのような存在になるという目標を掲げていますが、言葉の通り世界規模の外食チェーンを作るために邁進しているようです。

トリドールは現状売上1,500億円の企業ですが、5年後に5,000億を目指して絶賛拡大中という状況です。(トリドールは2015年から2025年に5,000億円の売上を目指すというところから目標がぶれていない点もすごいです!)

2.売上高推移

2015年以降の業績を連結でみてもずっと伸び続けています。売上成長率でいうと、18→19年度が一番伸びていて、ちょうど海外企業を買収したタイミングの翌年です。それ以前にも東南アジアやヨーロッパで現地に根ざしたスタイルの外食チェーンを買収して収益を伸ばしているようです。

推移でいうと、前年比105~120%程度で毎年伸びていることがわかります。

メイン事業の丸亀製麺は2011年のハワイ進出を皮切りに様々な国へ展開しています。連結売上高は年々成長している一方、実は営業利益は比例関係にあるとは言い難い状況です。

コロナ前までの前年比売上成長は、109.50% →106.48%→ 114.47%→ 124.48%→ 107.90%(2015~2019)であった一方で営業利益成長は、209.17%→ 98.69%→ 88.57%→ 30.17%→ 189.62%と必ずしも比例関係にはありません。(利益を下げている要因のうち、大きなものは国際会計基準の導入のようですが)

会計基準意外の要因としては、既存企業(丸亀など)と比較して買収会社でのオペレーションに無駄がある可能性、買収先会社が保有しているノウハウを親会社が活かしきれていない可能性などが考えられます。今後、売上の伸び≦営業利益の伸びに近づいてきた時が、トリドールの目指すオペレーションが嵌ってきたと言えるのではないでしょうか。

19年度については、利益成長率だけみると非常に高いですが、Grossの金額としては17年度や18年度より少なく、まだ海外事業は発展途上であると考えるのが妥当でしょう。(2020年9月現在)

利益の伸びに安定性はないものの、売上の伸びと販路の広さ、主要ビジネスである丸亀製麺の手堅さを鑑みるにまだまだ大きな成長余地はありそうです。今後の海外・国内での触手の伸ばし方には要注目です。

ここ半年はコロナによる影響で一時的に売上が落ちていますが、徐々に売上が戻ってきているようで下半期ではコロナ影響を大きく見込んでおりません。事実外食産業も少しずつ戻りつつあり、飲み会の場とはなりにくいセルフうどんチェーンの戻りは早い、と個人的にも予想しています。

3.海外売上比率

毎年伸び続けています。トリドールのIR資料をみれば細かいデータが記載されていますが、2015年度決算資料では4.6%であった海外売上比率も17年度には8.4%、19年度には20%超と急速に伸ばしています。

全体の売上が1,500億円規模の会社での20%というと、300億円規模を海外売上から賄っている計算となり、海外市場もかなり大きいと言えます。

一方で、18年度→19年度で売上規模が100億→300億と売上が3倍に伸びましたが、この要因としては香港のスパイシーラーメンチェーンを買収したことが関係していると言えるでしょう。会社の沿革をみても、2017年末、18年初に香港のチェーンを買収したと記載があります。

このチェーンは香港では大人気のスパイシー麺チェーンらしく、翌年の売上は爆発的に伸びています。売上の伸びと同等金額で粗利益も伸びているようなので、短期的にはオペレーションはうまくいっていそうです。ただ、上記でも少し触れた通り、粗利以下の販管費の部分でコストを出しており、依然として成長余地がありそうです。

4. トリドールと外食産業他社の違い

個人的にはここが最も差別化できるポイントであると感じているのですが、LIVE感のある食事を提供することを大事にしているようです。

ご参考
https://www.projectdesign.jp/201809/local-venture/005350.php

https://www.flierinc.com/interview/interview110

この記事を読んで、かつて読んだストーリーとしての競争戦略を思い出しましたが、これも「全体をみると筋が通っている一見馬鹿げた戦略」にあたるのかなと思いました。

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%AB%B6%E4%BA%89%E6%88%A6%E7%95%A5-%E2%80%95%E5%84%AA%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%81%AE%E6%9D%A1%E4%BB%B6-Hitotsubashi-Business-Review/dp/4492532706/ref=sr_1_1_sspa?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=1MR1YRGJ5TWR9&dchild=1&keywords=%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%AB%B6%E4%BA%89%E6%88%A6%E7%95%A5&qid=1601333527&sprefix=%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%2Caps%2C153&sr=8-1-spons&psc=1&spLa=ZW5jcnlwdGVkUXVhbGlmaWVyPUE0OFRQS0JURTBXV08mZW5jcnlwdGVkSWQ9QTA3MDExMzYyVFRDMU9NMjVFR1Y2JmVuY3J5cHRlZEFkSWQ9QTI3UUxMRU41QVMzNDImd2lkZ2V0TmFtZT1zcF9hdGYmYWN0aW9uPWNsaWNrUmVkaXJlY3QmZG9Ob3RMb2dDbGljaz10cnVl

当時の世の中だと、セントラルキッチンシステムで料理コスト・出店コストを抑えて運営する仕組みを取るのが当たり前だったが、トリドールはあえて顧客に喜ばれるイメージを明確に持てたから一見非論理的な戦略を取ったということではないでしょうか。

徹底的に効率化するポイントと非効率すべきポイントを分けて考えると、記事で明快に受け答えしている様子を拝見しましたが、そのポイントをうどんチェーン展開の中で明確に仕切って日本一のうどんチェーンを作った手腕は物凄いと思います。

また、記事では徹底的なローカライズ戦略についても触れられていますが、これもまた地域によって色々な文化や特色がある中でどのようにオペレーション改善を図っていくのか、注目したいと思います。

5.最後に

トリドールの収益構造と今後の可能性について調べてみると、1.実は海外展開が急速に伸びている会社で、2.丸亀製麺だけでなく徹底的にローカライズされた外食産業を展開している、ということがわかりました。

今後も伸びると予想される売上高に比例して営業利益もきちんと伸びているのか、投資して買収した海外企業が投資価値に見合う事業成果を出しているのか、ということをWatchしてみたいと思います!

コロナ禍でいったん株価が落ちておりますが(2,000円→1,500円)、今後の動向に注目して参ります!







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