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宇宙猫エルバッキーの主人公創造記

エルバッキーは困惑した。
例の地球人を監視し続け2週間。
一向に「物語」が始まる気配がない。

彼の故郷アンドロメダ星には高度な文明がある。
食うに困るは決して無いが、それでも彼らを殺すものがある。

退屈。

しかし致死の病にも特効薬はある。
スリル。サスペンス。物語。
彼らは血と死が好きだ。悪趣味で理不尽で不謹慎で、しかも大食いで舌も肥え興味も移りゆく。

宇宙中の物語を母星に供給する仕事。
彼は誇りさえも感じていた。

ある星で見つけたとある青年。
彼は奇跡の存在だった。幾重にも絡む因果の糸、こんな膨大なエネルギーは見たことがない。
どんな物語を紡ぎ華々しく散っていくのだろう?彼は胸を高鳴らせていた。のに!

こいつは毎日仕事、帰宅後スマホ、寝。
この繰り返し。
このまま何もせず老いて死ぬ?とんでもない!こんな逸材を!

エルバッキーは決心した。この俺がこの平凡な男の人生を、波乱万丈な大スペクタルにしてやる!
その目はきらりと輝いた。
【続く】

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