見出し画像

#029 さよならブラウン管

 実家でついにテレビが壊れた。こないだの春の嵐でアンテナがめっきょり折れてしまい、BSしか観れない状態が数日続いた。これだから地デジは困る。やっと直ってさあ観れるかと思いきや今度は映像が映るものの音声が映らない、やたら画質の良い(しかもカラー)無声映画状態になってしまったのである。

 活動弁士が欲しいところだが、生憎知り合いはいない。ということで近くの家電量販店で液晶テレビを買いに行くという流れになった。

 だがやはり惜しい気がする。何とかして直せないものだろうか、とは思うが私はサービスマンではないし、現在このテレビが修理サポートを受け付けているのかもわからない。買う方が安い、ということもあるしね。



 noteユーザーの中にご存知の方はいるだろうか。庶民向けソニーでお馴染み(今勝手に名付けた)アイワのテレビデオ。ソニーに吸収後いつの間にかブランドが消滅してしまったが、昨年いつの間にか復活していた。といっても十和田オーディオというメーカー(ソニーとは関係が深い)がブランド商標を取得してグループ会社として誕生したということであり、同法人であるというワケではないのだけれど。

 テレビデオは名前の通り見ての通り、テレビとビデオデッキが一体化している。もちろんレコーダーも内蔵しているので観ながら録画して、後々観返すこともできる。
 今でいう所のハードディスク内蔵型液晶テレビである。利便性で言えばこっちの方が上ではあるよね。一々取り出しボタンを押してテープ取り替えなくていいしね。

 私が実家に住んでいたころはデジタル化がそこまで進んでいなかった。巷がどんどんDVDに切り替えていく中でもVHSが主流であり、休日には安売りしている録画用ビデオテープ5本セットなどを買いに行った。
 エコポイントが実施されていた時も特にテレビを買い替えることはしなかった。「別に…観れるし…?」ぐらいの程度だったのだ。地上デジタルにすれば画質も良くなるだろうが現状で満足していた実家は、地上アナログが終了する時期にようやく地上デジタル変換チューナーを購入するぐらい家電の買い替えがスローペースだったのである。

 が、それでも寿命は来るわけで。そうした小手先では対応できなくなってしまう、その時期を迎える時が来たのだ。テレビのみならず色々な家電・オーディオ機器が新しいものに変わっていった。
 そんな中でもこのアイワのテレビデオはすごかった。多分20年ぐらい使ってるんじゃないかね。実家にあるものでは1番古い、そして唯一のブラウン管テレビだ。

 デカくて映像美のある液晶テレビに、こないだようやく見つけた『シックス・センス』のDVDを流してみると非常に画質が荒く、ああ昔はこんなんでも満足してたんだよなぁとつくづく実感する。
 ともあれこれで実家におけるひとつの時代が終わった。いまや新聞紙にもGコード(8桁の放送時間特定コード)が書かれておらず、ハードディスクで録画するということをする前は電源を付けるたびに初期化されるタイマーを必死に設定して朝ドラを録画していたものである。…『わろてんか』? こないだの土曜の回は凄かったですね。私には内容が全然分からんかった。

 ありがとうアイワのテレビデオ。今までよく持ってくれた。お疲れ様。
 ケーブルを抜いて、ずっしりとしたテレビをよいしょよいしょと1階に下ろす。
 そしてすっかりと軽いテレビを何の苦労もなく2階に上げてケーブルをつなぐ。

 よろしくドウシシャの液晶LEDテレビ!


 なんだこれ。おしまい。


 (追記)

 その後の話をすると、繋いだは良いものの今度はBS放送が思うように観れなくなるという事態に発展したのである。

 知っている人は知っているだろうけれど、BSやCSを視聴するにはアンテナに電源を供給する必要がある。つまりいつも観れるようにするには、電源の供給元が常に稼働している状態であることが不可欠である。

 買い替える前はアイワのテレビデオとアンテナの間にデジタルチューナー兼インバータの機器が挟まれており、ここは常に電源が入っている状態だったので何にも問題が無かった。アイワのテレビ単体ではデジタル放送を受信できない(デジタルに弱いのが旧アイワの弱点だったのよね…)ため、こういう風になっていたのだ。

 で、今度のテレビは当然デジタル放送に対応しているため、このチューナー機器もお役御免と外して、テレビ単体でケーブルを繋いだのだ。とすれば、アンテナの電源供給元はこのテレビということになる。勿論テレビの電源を付ければ、BSやCSは視聴できていた。
 問題なのはこのテレビの仕様である。「電源を消すと、たとえスタンバイ状態であってもアンテナの電源供給がストップされる」。衝撃の事実が、取り替えて程なくして明らかになった。

 いやいやいや。地上アナログの時はアイワのテレビデオ単体だったわけだが、この場合はスタンバイ状態、つまり主電源が完全に切られてさえいなければ電源供給はそのまま継続されていたのだ。
 実家には現在3台のテレビがある。が、アンテナのある2階にあるテレビはこれだけ。要はBS放送が観たければこのテレビをずっと付けっぱなにしていろ、なんちゅう無駄。
 スタンバイ状態なのに何故電源供給を続けられないのか? 取説としばらくにらめっこを続けていたが、結局テレビ側でこれを解消する手立ては見当たらなかった。何で20年前に出来ていたことが現代で出来ないんだ。ドウシシャ頼むぜおい。
 とりあえず一旦は外しておいたチューナーを復活させ、テレビはチューナーから延びるRCA端子がぶっ刺された「モニター」役になっていた。
 折角の液晶テレビなのに相変わらず映る映像は滲んでおり非常に勿体ない感じになってしまったのであった。一難去ってまた一難とはこのことですな。

 そうして私は新たなるミッションを託された。1階のテレビの配線大工事が…。

 今度こそおしまい。