1984年のマイコン

このタイトルを見て、アイドル時代の本田美奈子氏の「1986年のマリリン」を連想する人、少なそうだな。まあいいや。

創作物が、それが作られた当時の文化に関する資料になることはよくあります。例えば川端康成の「伊豆の踊子」には、「活動を見にいく」というような記述があります。何らかのアクティビティーを見物にでも行きそうですが、これは活動写真、つまり映画のことらしいです。
この記述で、活動写真という娯楽が当時すでにあったことや、「活動」という略称で呼ばれていたことなどがわかります。
今でもコンタクトレンズを「コンタクト」、携帯電話を「携帯」と略しますが、修飾語だけを残す略し方は当時からあったんですね。

今回はマイコンについてです。
マイコンといってもサッカー選手のことではありません。マイクロコンピュータ、今でいうパソコンのことです。
今でも刑事ドラマの金字塔と呼ばれる「太陽にほえろ!」という、14年続いたドラマがあります。このドラマのだいぶ後のほう、1984年に、石原良純が出演します。コンピュータを使うので、「マイコン」というニックネームをつけられました。
これで、1984年にはまだ、パソコンではなくマイコンという言葉が一般的だったとわかります。

いや、わかるな。まだ早い。
もう一つの名作ドラマから考えましょう。
「北の国から」です。
連続ドラマとしての放送を終え、以降はドラマスペシャルとして何本も制作されましたが、その中に「‘84夏」というのがあります。マイコン刑事登場と同じ1984年放送と思われます。丸太小屋の焼失や、ラーメン屋での「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!」のシーンと言えば、思い出す人も多いでしょう。
このドラマで、パソコンが登場します。ソフトとかハードとかいう言葉も出てきます。
パソコンです。わたしの記憶ではマイコンとは呼ばれていなかったはずです。
1984年ではもう、パソコンだったんですね。でも「太陽にほえろ!」とは矛盾するな。

それでは「太陽にほえろ!」をおさらいしてみます。
良純演じる刑事がニックネームをつけられるシーン。わたしの記憶ではこんな感じでした。
ボス「おまえは今日からマイコンデカだ」
マイコン「マイコンっていう言い方はもう古いんですよ」
ボス「黙れ、マイコンデカ!」
たしかこんなようなものでした。そういえば今の刑事ドラマでは刑事をデカとは呼ばないですかね。
そんなことより、このシーンでわかるのは、やっぱり1984年にもなるとマイコンではなかったらしいことです。でも、良純の叔父の石原裕次郎演じるボスのようなおじさんは、そういうことがわからなかった。
よくわからないおじさんが、古い呼び名のマイコンというニックネームをつけてしまった、ということらしいです。
ドラマの制作側としては、すでに古い呼び名とわかった上で、敢えてマイコンというニックネームにしたのですな。

こうして、1984年にはもう、マイコンではなくパソコンと呼ばれていたことが判明しました。おじさんたちを除いては。
さて、同じ1984年、NHKで、ある海外ドラマが放送されました。
邦題は「マイコン大作戦」です。
……あれっ!?

それはともかく、本格的に声楽家に転向した本田美奈子氏の歌声はとても素晴らしいです。聞く価値、大ありです。若くして亡くなられたのが本当に惜しいです。


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