見出し画像

帰ってきたウルトラマン・郷秀樹に黙祷を

ここ数ヶ月で追悼記事が続いている気がするが。
かつて『帰ってきたウルトラマン』で主人公の郷秀樹を演じた団時朗氏が亡くなられた。まだ74歳だった。昭和のウルトラシリーズの主演者では若手のほうである。
一昨年から去年にかけて、わたしは円谷サブスクで『帰ってきたウルトラマン』を、放送50周年を勝手に記念して全話視聴したものだ。

団氏はやたらと背が高く、日米ハーフで顔もくっきりした感じで、ほかの出演者たちとはずいぶん印象が違っていた。『帰マン』出演以前はモデルだったらしい。そして『帰マン』では主題歌を歌っていた。ウルトラシリーズで主演俳優が主題歌を歌うのは初のことだった。この曲、当時すでにヒットメイカーだったすぎやまこういち氏が作曲した。
団・すぎやまコンビといえば、平成版の『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の主題歌もこの2人によるものだった。こちらは残念、わたしは令和版しか見ていないので、あまり語れることはないんだけど。

団氏が演じる郷秀樹は、人間的に未熟な面があった。前のシリーズの『ウルトラマン』のハヤタは完成された人間という感じで悩む場面もなく、『ウルトラセブン』のモロボシ・ダンは理想を持ちつつも自分の立場とかできることの限界で悩むことが多かった。しかし郷秀樹は自分の気持ちの面とかで悩むことが多かった。慢心したり、孤立したり、ひどいときには暴れる怪獣を放置しようとしたときもあった(ムルチのときだな)。怪獣に負けたら特訓して新しい技を体得したり(キングザウルス三世のときだな)。恋人と恩師みたいな人を殺されて心が乱れたり(憎きナックル星人とブラックキングだな)。これまでの超然としたウルトラヒーローと違って、あまりに人間的だった。ウルトラマンはこれ以降、こういう未熟な人間が悩みながら強くなっていく感じになる。

団時朗氏は特撮ドラマの印象が強い。いわゆる第二期ウルトラシリーズでは、『A』『タロウ』『レオ』にも、郷秀樹役で出演している(いや、『A』のときは宇宙人が化けた偽者だったか?)。ウルトラ以外の特撮ドラマでは、コミカルな役をやったり、隊長役をやったり、悪役もやっていたりした。
『少年探偵団』では怪人二十面相役だったらしい。わたしは見たことないんだけど。ただし、オープニングの役名表記は「?」となっていて、伏せられていたという。とはいえ、見ている子どもたちはみんな、誰が演じているかわかっていたとか。最終回は「二十面相の正体は団さんだったんだね」というオチで終わるという、「いやいや、演じた俳優さんがわかっただけやないかい! しかも、見てるこっちはずっと前からわかってたわい!」と言いたくなる、なかなかシュールなものだったらしい。この話を聞いたときには「何じゃそりゃ」と思ったものだが、やはり団時朗氏の個性や存在感があったからこそのオチなのかな、とも思う。

大人向けのドラマでは悪役が多い印象がある。身体が大きくて、彫りの深い顔立ちだから、悪役やらせると怖いんだよね。その割に、たまにいい人の役で出てくると、すっごくお人好しに見えてくるからすごい。
Wikipediaを見たところ、ドラマや映画だけでなく、舞台でも活躍されていたそうで、かなり多忙だったのかもしれない。俳優さんとしては、すごく成功した人であろう。

ウルトラシリーズに育てられたわれわれとしては、郷秀樹が地球を去ったときに残していった「ウルトラ5つの誓い」をかみしめながら、団時朗氏に黙祷を捧げたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?