山上憶良も驚く地獄の二者択一

緊急事態宣言の期限が延長されそうな昨今、皆さんはどうお過ごしでしょうか。
会社から人権を認められていないわたしは、今日も仕事です。
派遣元はわれわれがウィルスに感染しようと構わないから働かせます。
派遣先は、訪問者の体調チェックなどをわれわれにやらせるようになりました。そのくせ派遣先の正社員らは交代でリモートワークです。休業すりゃいいのに。
おかげでわれわれは、訪問者とのトラブルの種が完備されました。訪問者たちは、われわれの指示になかなか従ってくれません。立場の弱いわれわれは、いつもびくびくしています。
それどころかこの派遣先の会社の社員たちさえ、ルールを守らなかったり理解しようとしなかったりです。おまえらの会社からの指示を、われわれがしっかり守っているのに、どうしておまえらが守らないんだよ。
また、こんな人たちの体調チェックのためにわれわれの本来の仕事ができなくなりました。休憩時間を削って自主的にやれとでもいうのでしょうか。
何より、最前線でウィルス感染のリスクを一手に担う形となっています。われわれを犠牲にすることで、営業を続け、社員を守るというわけです。
申し訳程度にフェイスガードとか防護服とかを渡されましたが、「各人一つずつしかないから毎回消毒して使って」だそうです。これら、本来は使い捨てでないといけないものです。感染予防の取り組みをしていることを形だけ示したいのが見え見えです。
防護服に至っては、派遣元からNGが出ました。制服が隠れるからだめなんだそうです。労働者の命より、制服のほうが大事なんだそうです(これに関しては、法律の問題もあるようではありますが……今まであまり適法なことをやっていなかったこの派遣元の会社が、こういうときだけ法に従おうとするなんて)。

業腹ですよ。
ここまで我が身を犠牲にしないといけないものでしょうかね。
辞めてやろうと思いました。
しかしねえ。
生活の問題があります。失業して明日からどうやって暮らしていくのかという問題があります。
望まない休業をほぼ強いられた個人営業店の人たちは、収入がなくなって本当につらいと思います。そういう人たちから見れば、「あんたは仕事があるだけありがたいのではないか」と言いたくなるかもしれません。
6月末まで耐え忍べば、ボーナスも出ます(出るはずです)。そういう打算もあります。

どっちも地獄です。
コロナウィルスに感染するリスクにさらされ続けるか。
収入がなくて苦しい思いをするか。
そういう二択です。
ありがたいね。地獄だけは選ばせてくれるなんて。最後のお慈悲。涙が出るね。
どっちにしろ死ぬとは限らないけど、悪くすれば命に関わる危機的状況には間違いないです。
こんなにどうしようもないものなのか、世の中っていうのは。つらくてたいへんだと思うけど、鳥ではないから、飛んで逃げることもできない。
貧窮問答歌みたいなことを言っちまった。万葉集の時代から、実は世の中って、あまり変わっていないんじゃないですかね。

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