偶然、それとも必然

みなさん、お待ちかね! 昨日の続きです。

さて、北海道で就職した大山青年が故郷を出る話です。大山は本名ではないのですけどね。
大山青年、つまり(若いころの)わたしは安定志向で、トラブルは苦手です。公務員試験を受けていました。完全に偏見ですが、公務員なら定時で帰れるだろうし、創作にいそしむ時間をとれるだろうと思ったのです。
すでに20代半ばだったわたしには余裕はありません。いくつか受けて、合格したのは郵便局員だけでした。まだ民営化前の話です。
そんなわけで郵便局に就職したのですが、実はそうそう定時に帰れる仕事ではありません。それに、超過勤務手当も、働いた分もらえるわけではありません。
それより何より、郵便局員は営業が大事なわけです。公務員ですが実質はセールスマンだったのです。
以前もどこかで書いたと思いますが、全く営業ができませんでした。
つらいな、辞めたいな、と思っていたころに、前回話した、某アニメ関係の学校を知ったのです。
もしわたしが、公務員試験で自分にとって都合のいい職場に行けたなら、そこで定年まで働いていたかもしれません。それはそれで立派なことなのですが、果たして、小説を書き続けられていたでしょうか。
少なくとも、小説を学ぶために北海道から出ようとは思わなかったでしょう。
書き続けられたとしても、自己流で書いて、誰にも批評してもらえなかったのではないでしょうか。
そうなると、わたしにとってはつらい時期でしたが、郵便局員になったのは何かのお導きだったのかもしれません。

さて、某アニメ学校をでてもそれで小説家としてデビューできたわけではありません。それは学校のせいではなく、世の中がそんなに甘くないということです。学校で小説を学んだからといって、それでデビューできたらそんなに苦労しません。
ここでは学友も得られ、なかなかに幸せな時期を過ごすことができたのですが、一度卒業してしまえば、そうそう誰かに自作を読んでもらおうという機会はありません。
わたしはまた自己流に戻りました。いや、実を言うとスランプになり、小説をほとんど書かない時期が続いたのですが。

そんなわたしは学習塾の講師として働いていました。
唐突ですが、わたしはクラシック音楽が好きです。そして職場の講師仲間に、クラシック音楽好きが2人いました。1人は男性、1人は女性です。
まあ当然ではありますが、わたしは男ですから、2人のうち女性の講師のほうに興味を持っていたわけです。ぶっちゃけますが、この同じ趣味を利用してお近づきになろうと画策しました。
そこで、いきなり1対1では話せないから、男性のほうの講師も誘って、3人で音楽の話をしようということになりました。
つまり男性の講師はオマケです。申し訳ないですけど。ゆくゆくは女性の講師と2人で……とか考えていました。
ところがですね、このときの男性の講師から有力な話を得たのです。
「大山先生は小説を書いてるんですか? たしかうちの塾に、ほかにも小説を書いている先生がいますよ」
この学習塾に勤めて4年が経過するというときでした。初めて知りました。それも、わたしとよく話すベテランの講師が、長年小説を書いているということでした。4年近く働いてきて、一度もそんな話をしたことなんかなかったんですけどね。
早速そのベテラン講師にお話を聞きに行きました。そして、その講師の紹介で、あらためて小説の教室に通うことになりました。
おかげさまで、また仲間ができ、切磋琢磨する機会を得られました。
わたしがクラシック音楽好きじゃなかったら、さらに、音楽好きの女性講師とお近づきになりたいと思わなかったら、しかも、音楽好きの男性講師を(本当に申し訳ないけど)オマケとして使わなかったら……こうはなりませんでした。
ちなみにその音楽好きの女性講師とはお近づきにはなれませんでした。そっちはとても残念。

多くの偶然が重なって今があるんだな、と思うと、感慨深いものがあります。
今ではアニメ学校時代の学友たちとも連絡を取り合い、批評し合ったりもしています。
案外、恵まれた人生です。
これでデビューできたら、本当に幸せなんだけどな。

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