6年間続いている読書会について:「マンハッタンの奇譚クラブ」

ご自由に書かせていただきますこんにちは!
nostalghiaです。

月いちで大学時代の友人と読書会を開催しております。その読書会というのがちょっと特殊なものでして、

・(私含めて)3人しかいない
・アラサーおじさんの集まり
・読書会の内容をブログにあげる
・ブログ内ではみんな20代の女子という設定(糞)

という肥溜めに吐瀉物をぶちこんだような会合です。
(ちなみに私は24歳くらいのOLです)

ブログURL→「しま子の読書会ブログ」


しかも最近、そのブログのアフィリエイトが通ってしまったという、目も当てられない状況に……。

そんなおもしろハッピー読書会ですが、読む本は三人が順番に選ぶことになっています。
今回は私でした。私が本を選ぶとみんな嫌な顔をします。過去に私は、

私「細雪読もう!」(上中下巻ある)(おもしろい)

私「白鯨読もう!」(上中下巻ある)(こむずかしい)

私「水滸伝(抄訳)読もう!」(上中下巻ある)(残酷極まりないシーンの数々)

という悪質な発言を唐突にぶちかましてきたので、今回も

「急に大長編ぶちこんでくるのやめろ」

と言われ、しぶしぶそこそこの長編を選びました。

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫) スティーヴン・キング https://www.amazon.co.jp/dp/4102193057/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_IYRCDb5347P4E @amazonJPさんから

スティーヴン・キング「スタンド・バイ・ミー」...

本にはなんとなく、三種類の本があると思っています。

① 読んだことのある本
② 読んだことのない本
③ 読んだつもりになっている本

「スタンド・バイ・ミー」はこの③でした。
理由としては

・映画の内容やら評判やらがちょいちょい耳に入って来る。
・オマージュでなんとなくあらすじを知っている(初代ポケモンのテレビで流れてた)。
・主題歌がめちゃくちゃ有名

なので、ほとんど「あー読んだことあるなー」という感覚でいたのでした。そういう本ってありますよね。なんとなく読んだ気になっている本……あらすじとかオチとかも、想像で補完している本……ない? 私がなまけものだから?

で、実際読んでみたわけですが、なるほど……だいたい想像したとおりでした。

「夏の終わりに、少年四人が死体探しに行く」

少年期の終わりが目前に迫った夏。主人公であるゴードンくんは、知的なリーダー格の「クリス」、悪ガキの「バーン」退役軍人である父親に虐待されながらもいつかそんなパパみたいになりたいしパパのこと馬鹿にしたやつ全員皆殺しな!正直喧嘩もぜんぜんよわっちいけど見た目チビだしいろいろ許してくれや!な補聴器をつけた男の子「テディ」といっしょに、少年の死体があるという場所目指して、線路沿いを歩いていく……というお話。

視点は常に、作家になったゴードンくんの視点で語られます。その語り口にはノスタルジーが籠り、彼は取り戻すことのできない少年時代に思いを馳せます。

道中にはちょっとしたピンチがあって冒険小説とも読めますし、挿入される作家ゴードンの作品は少年時代の思い出や苦い記憶を色濃く反映していて、それも含めて読むと、幾層にも重なった時代をスティーヴン・キング独自の筆致で描いた文学的な読み物でもあります。

自身の少年期がどんなものだったか、どんな終わり方をしたのか、そもそも少年期に終わりなんてものがあるのか……私たちはいつまでもあの頃のノスタルジーから解放されずに、ただ見ないふりをして生きているだけではないのか……幼心はどこまでも道連れとして付きまとってくるのではないか。

そんな感想を持ちました。

とてもいいお話でした。

が。
そんなことはどうでもよくて。
いやどうでもよくないんですけど。

私が大好きになってしまったのは、もうひとつの作品でした。

この「スタンド・バイ・ミー」は作者が中編連作ホラーじゃないよシリーズ「Different seasons」で書いたもので、その「秋」にあたります。

春 「刑務所のリタ・ヘイワース」(映画「ショーシャンクの空に」の原作)

夏 「ゴールデン・ボーイ」

秋 「スタンド・バイ・ミー」

冬 「マンハッタンの奇譚クラブ」

新潮文庫版にはこの冬のお話「マンハッタンの奇譚クラブ」も入っていて、これがもう、めちゃくちゃ私のどストライクでして。

お話としては

六十過ぎても中間管理職の男が、あるとき上司に「私がよく行ってる秘密のクラブみたいなのあるんだけど、行かない?」って誘われて「えーなんか怖いしな…ああでも、昇進に関わるのかな…はい先輩! 行きます行きます!」てな具合で行った先は、看板もなんもないただの家。「アヤシイところに連れてこられちゃった……どうしよ……先輩もどっか行っちゃったし……怖いよ……」とうろうろしていると、そこには存在しない出版社から出された本や、存在しないメーカーの家具類が並んでいる。時間になると、暖炉の前でなにやら円座になってお話が始まる。そこは毎晩誰かひとりが自分の体験した(という設定の)お話を披露するクラブだった……。

というもの。(なんで↑のセリフが社会人百合っぽいキャラクターになったのかはよくわからない。私にもわからない)

私はよく、文体やお話の雰囲気で小説を買ってしまう人間です。今まででいちばん大好きな本を選べと言われたら、まちがいなく山尾悠子の「ラピス・ラズリ」を選んでしまうようなやつです。

文体や雰囲気の落ち着いたお話には、それだけで読者に寄り添ってくれる魅力があります。気持ちが上昇志向で明るいときにはハッピーな小説が読んでいて楽しいように、暗い気持ちのときにはやっぱり落ち着いた雰囲気のお話が合うものだと、誰かが言っていましたね。誰か忘れましたけど。

このお話も、スタンド・バイ・ミーと同じく、作中作というべき物語が登場します。「クリスマスイブイブには神秘的な話を」という法則がクラブにはあり、主人公もその話を聞くハメになるのですが…………ぜひ読んでみて下さい。このお話の魅力はなんと言っても、没入感だと思います。60代の老境に入った男がクラブをさまよいながらも落ち着ける空間に陶酔していく様や、クラブから一歩出た街路に吹く冷たい冬風……私はこの作家のことが大好きになりました。残りの春夏の2作も読んでみます。

お読み頂きありがとうございました!
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