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『ダメじゃないんじゃないんじゃない』その問いが自分らしく生きる小さな1歩につながる

このnoteは、オンラインキャリアスクール『SHElikes』のライティング入門コースの課題で実際に書いた記事の内容です。
課題提出後に添削いただき、加筆修正いたしました。

・テーマ:「好きな本をおすすめしてください」(漫画も可)
・想定読者:SHEメイトさん
・字数:2,000-3,000文字
・与えたい読後感:この本買ってみようかな

それって本当にダメなんだっけ?日常で感じる違和感


女性なら誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
朝起きるとなんだか身体がだるい、続いて下腹を鈍器で殴られたような痛み。一般的には月に1度、1週間程度のお付き合いをしなくてはいけないもの。そう、生理です。

そんな時、あなたの頭にこのような考えが浮かんだことはありませんか?
「あぁ〜、今日は会社休みたいな…。でも生理で休むなんてダメだよね…。
男性の上司にはそもそも理解してもらえないし、女性の上司にもその程度で休むんだと思われそう…」と。

生理って痛みの程度は人それぞれ違うのに、女性同士でもなかなか理解を得ることが難しいですよね。最近では生理休暇制度のある会社も増えてきていますが、中小企業であればまだまだ浸透していないのも現実です。

しかし、生理で会社を休むのは本当にダメなことなのでしょうか?
もしかすると、"ダメっぽい"と思い込んでいるだけではないでしょうか?

そんな皆さんにご紹介したいのは、はらだ有彩さん著『ダメじゃないんじゃないんじゃない』という本です。
この本は、このように"別にダメじゃないのに、なんかダメっぽいことになっている"アレコレについて、著者のはらだ有彩さんが一旦立ち止まって考えてみた!という思考実験エッセイです。

著者 はらだ有彩さんの魅力

主な著作とその思い

著者のはらだ有彩さんは、テキスト・テキスタイル・イラストレーションを組み合わせて手掛けるテキストレーターとして活動しています。
主に雑誌やWebメディアでエッセイを執筆中。

今回紹介する『ダメじゃないんじゃないんじゃない』は、KADOKAWAの文芸Webマガジン『カドブン』での連載をまとめたものです。

主な著作に、昔話に登場する女たちの理不尽な環境下における、抑圧された気持ちに注目した『日本のヤバい女の子』、装いについてファッション史を辿りながら、ファッションルールに対しての疑問をぶつける『百女百様』などがあります。

また、はらだ有彩さんは「決まっているレギュレーションを排して、再構築して自分の納得のいく形に作り替えたい」という思いを胸に活動しているフェミニストでもあります。

共感させるだけじゃない、『ダメじゃないんじゃないんじゃない』

本作では、「らしくないからダメ」「迷惑だからダメ」「そういうものだと決まっているからダメ」「何にもならないからダメ」というダメを大きく4つに分類しています。そして、それぞれのテーマに基づいたダメが全部で16個取り上げられています。

たとえば、『助けてもらいながら「それなりの態度」で暮らさないことはダメじゃないんじゃない』や、『やっべー、今日何にもしてない…….はダメじゃないんじゃない』、『怒ったときに思わず乱暴な態度と言葉遣いになるのはダメじゃないんじゃない』などがあります。

各タイトルをそのまま書いていますが、タイトルを見ただけでも「そうそう!わかる!」と共感できるものが多くあります。

しかし、それだけで終わらせないのがこの本の魅力です。

絶妙なバランスで展開されていくエピソード

はらだ有彩さんは、社会情勢や文献、映画などからの引用を多く取り入れており、どの本も理論的で説得力があります。そこに絶妙なバランスで配合されている軽妙な口調が最大の魅力で、センシティブなテーマでも理解がしやすいです。

また、イラストレーターとしても活動しているため、それぞれのテーマごとに文中に出てくる出来事がイラストで描かれています。難しいテーマでもイラストで補完されていることで、より理解が浸透します。
また、カバーイラストやテキストもご自身で担当されていて、今まで出版されたどの本もデザインがお洒落です。

きっとあなたも手元に置いておきたくなること間違いなし。

「ふざけながら怒る」ということ

はらだ有彩さんがこの本のコンセプトにしているのは、「深刻なことをふざけながら考えてみる」です。ここでいう「ふざける」とは、相手を馬鹿にしているわけでも、笑いでなんとなく場を鎮めることでもありません。

本作で、はらだ有彩さんは全編を通して、ふざけながら軽妙な口調で問題提起をしていきます。

たとえば、『助けてもらいながら「それなりの態度」で暮らさないことはダメじゃないんじゃない』では、それなりの態度で暮らすとはつまりどういうことなんだ?という問題が浮上します。

そこで、はらだ有彩さんはそれなりの態度=恐縮して暮らすさまをなにを以て提示ノルマとするのか、について考えていきます。
24時間感謝の儀を執り行い、その間気兼ねし続けることを1セット×3セット、そして抜き打ち検査をクリアすることで今後一切恐縮しなくてOKというガイドラインを作るのか?など妄想を膨らませていきます。

このような、思わずクスッと笑ってしまうような提案ばかり。
読んでいると、"ダメっぽいことになっているアレコレ"を俯瞰できるようになります。いつの間にか、纏わりついていた価値観から一歩離れられるというわけです。

「今まではこう考えていたけど、こういう考え方もあるよね」というように。

寄り道しながら明るい未来へ

はらだ有彩さんがふざけながら色々なところに寄り道をしつつ、"ダメっぽいことになっているアレコレ"について考える本作。時にはふざけながら考えてみると、それが実は近道につながっていたり、案外あっけないものだったと分かったりするかもしれません。

"ダメっぽいことになっているアレコレ"は、残念ながらこの社会にまだまだ存在しているでしょう。きっと私たちは一方的にダメを押し付けられたり、自分が意図していないくてもダメを押し付けてしまったりすることもあると思います。それらは簡単に解決できるものだけではないでしょう。

でも、一旦立ち止まって『ダメじゃないんじゃないんじゃない?』と考えてみてください。その問いこそが、自分らしく生きる小さな1歩につながると信じて。

はらだ有彩さんが一歩先を歩きながら、時にふざけて妄想を繰り広げたりしながら、きっとあなたにヒントを与えてくれるはずです。

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