滝川寛之(小説家・詩人)のブログマガジン

小説家で詩人の滝川寛之 ブロマガです。オフィシャルブログはhttp://hiroyuki-takigawa.info/

『ロックとポップスターの悲劇』校正前版(のちに改訂版出します)

ロックとポップスターの悲劇

著者:滝川寛之



 視界に入る陽光はただ単にしのぎの汗をだくだくにするだけではなかった。
 透き通った広い大河から来る流水は田んぼの仕切りから中へと通じ痩せた黒土に復活の烽火(のろし)を上げさせた。翌朝には真っ平らな水面が表情を明るくした太陽に対してキラキラと照りつきを見せつける。

  この時期の中学と言えば、一学期である。

 伊藤は秋田県出身だった。
 こ

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『ドーナツショップ』校正前版(のちに改訂版提出予定)

ドーナツショップ

著者:滝川寛之



 藤田ニコルは幼少のころからダンキンドーナッツが好きだった。彼女はハーフである。
 フランス語と日本語と英語が達者だった。
 フランス人の父親は貿易商人で、日本人の母親は専業主婦だった。
 それは大きな豪邸に住んでいた。地域は千葉県であった。
 父親のジョンは、平日、家にいることはなかった。理由は、東京本社に勤めていたため、いちいち帰宅するのが面倒であっ

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『幻聴』校正前版(のちに改訂版提出予定)

幻聴

著者:滝川寛之



 保は今、精神病院に居る。
 そこはまるで牢獄のように鉄柵ががっしりと施されていた。
 彼には意中の存在があった。愛甲千笑美という女性である。
 それはまるで岬に自生した白い鉄砲百合(テッポウユリ)のようだった。
 あの時のことは脳裏にこびりついていて忘れることができない。
 
そう、あの事件のことを。

 保は警視庁捜査一課の警視だった。千笑美は同僚である。
 二

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『でいごの花』校正前版(改訂版を後に出します)

でいごの花
著者:滝川寛之

「第一章」



和樹は、今、港町のクラブにいた。
このクラブはバブルがはじけるまでけたたましい音とともに目がちかちかとするような光をいくつも放射した紅白の大取のように派手なディスコだった。しかしながらクラブに代わったとはいえ、流れる音楽とボリュームは派手なフラッシュを抜いてほとんど変わってはいなかった。
テキーラサンライズをよく好んで飲んでいた。あのストローから口

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『太陽がまぶしくて』校正前版(のちに改訂版出します)

太陽が眩しくて~

著者:滝川寛之



 五時をとうに過ぎた下校時のことである。
 この街は今日も雑踏から噴き出した灰色の煙を辺り中に漂わせていた。
 杏子を色彩にもたらした桃色から緑になるころだった。
 上原野公園はどこも人だかりで、都会の緑が乏しいことをはっきりと誰もが分かった。
 都心高速道路は巨大なガスをまき散らして、運送会社のトラックたちが料金所付近で列をなしていた。
 その下の道路

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