映画感想~オレンジと鰐と道化師~

はい.趣味の話です.金ローの録画ビデオを擦り切れるほど見ていた幼少期,お気に入りは"ガメラ 空中大決戦"と"STAR WARS Ⅵ"でした.そんな私,多少は金が入るようになり映画館には入り浸るようになりました.一般人視点からすればそこそこ映画見てる人間扱いな様で,そんなこんなで最近みた三本のご紹介.ちなみに,私ネタバレWelcome勢なので,本文章も映画の内容に滅茶苦茶触れてます.悪しからず.

時計仕掛けのオレンジ

みなさんご存じ,"2001年宇宙の旅"や"シャイニング"で有名なスタンリー・キューブリックの監督作品.今年で終わってしまうらしい「午前10時の映画祭」,にて復刻上映されてたんで意気揚々と行きましたね.

ざっくり内容を話すと,世界観はやんちゃ集団が廃墟で乱暴していたり,監獄が犯罪者で一杯になっていたり,職業適性で自動就職できたりと(当時感覚の)近未来ディストピア寄り.罪の意識皆無のアレックス青年が押し入った家の住人を思わず殺害逮捕,いち早く娑婆に戻りたいが故に受けた催眠治療の末,暴力・性暴力に対する身体的拒否を会得した末,社会に放たれた彼の末路とは......

とまぁ,暴力に塗れた世界で生きる人間,はたして悪とはなんなのか,みたいな話だと認識しています.私この作品,というかキューブリック作品が好きでして,人間の見せたくない,知りたくない寧ろ知らなかった内側を見せてくれる作品が多いのですよ.そんな"時計仕掛けのオレンジ"の何が好きか.大きく分けて二つ,「古典的なSF感」と「物語」ですね.それではご紹介.

謎のSF設定

物語は主人公アレックスの主観で事が進み,彼の言葉で綴られるわけですが,その言葉の節々に「ドルーグ」,「アルテラ」,「インアウト」など若者言葉とされる造語・隠語が登場します.文脈からそれがどんな意味なのかはわかるのですが,ちょっと言葉をオリジナルにするだけでぐっと異世界感,ここではSF感ですかね,が,増してきます.また,冒頭出てくる前衛的なミルクバーとか,猫女屋敷の卑猥な美術品とか,紫アフロのオカンとか時代を5世紀くらい先取りしたものが度々現れます.その癖,音楽はカセット,ホームレス・廃墟・壊れたエレベータなどの治安の悪さ,未発達の医療機器など"スタートレック"の様なカッコいい未来味はまったくなし.このちぐはぐな世界観,過去とも未来ともつかない世界.当時は冷戦とかの影響で,「核戦争後の~」みたいな終末世界感ものが多いんですよね.それゆえ治安がクッソ悪くて,暴力やらなんやらが蔓延する世界なんですけど,その辺は後述.フィクション的な要素と現実からの地続きとフィクションが混ざり合った世界観.私,この手のSF設定が好きでしてね,むしろこの手の作品に染められた節があります.昨今のSF,"インターステラ―"とか"レディプレイヤー1"とかは現代の延長上の技術がふんだんに登場し,まぁ割と希望の持てる未来ですが,悲壮感漂う世界,異質な未来を描く作品は少ないと思いますね."マトリックス"とか"ブレードランナー2048"とか,割と暗い雰囲気ですが,こういった暗い世界観の方が海外SF特有の人間性を問いかけてくる作品が多い気がするので,好きなんですよね.というわけで,未来は希望ばかりではない.ディストピア,だーいすき.

悪とは何者なのか

はい.ここはネタバレ満載なので気を付けてください.物語の主軸は犯罪を犯す人間心理,的な内容だと思うのですが.北斗の拳よろしく退廃した世では狂わない人間の方が狂気.この作品でも同様に,暴力に塗れた世界で,暴力に対する拒絶を植え付けられたアレックス青年は,出所後周囲から向けられる悪意に抵抗することもできずにボッコボコにされるんですね.舐めていた部下が警官になってリンチにされたり,複雑な心境すね.最終的(?)には偶然と復讐心から政治の道具にされ死にかけるのですが.まぁそれまでに散々な行為をしてきたので,贖罪といえば贖罪なのですが,現世では罪人にも人権がありますからね.捕まる前は半ば放置の両親が,出所後知らずのうちに勘当状態になり,話題になったらわざわざ見舞いに来るという.浅ましいねぇ.さて,度重なる暴力をはたらく青年は悪か,罪人を虐げる看守は悪か,非人道的な催眠療法を推薦する政府は悪か,復讐を胸にする市民は悪か,罪を背負って尚改心せぬ青年は悪か.とまぁ,善悪問題は後述もするのでこの辺で.ぶっちゃけ割と古い作品なんで,えり好みは激しいですが,映画好きを自負するならこの辺の有名作品は押さえておきたい.そんな方は是非見てみてください.では次の話題.

クロール-凶暴領域-

サメ映画の次はワニだ!!って触れ込みで回ってきたコレ."シャークネード"を代表とするB級ホラー群に飛び込んできた新参者.うん,本当にB級でしたね.B級ホラーに必要なのはわかりきったエンタメ性.「そんな死に方ある~?」ってのが"シャークネード"でしたね.だってサメが飛んでくるとは思わないじゃん.そんな予想外が楽しいのがB級映画.では今作ではそんな予想外があったのか.個人的にはね,そんな楽しめなかったすね.何故?それはアクション不足.とってつけたような物語を打ち負かすのは爽快なアクション.飛んできたサメをチェーンソーでぶったぎるパワー.ドライバーで目玉ぶっさすぐらいじゃ足りないんだよ.拳銃を子ワニで使い果たすのじゃダメなんだよ.発煙筒を押し付けても変わらないんだよ.圧縮酸素で爆散させるくらい派手にやりあってくれよ.

ガジェットもね,もの足りない.発電機付きの懐中電灯て.一瞬で退場するボートて.単なるアイドルだったいっぬて.まぁただのご家庭にショットガンとか置いてある方がホラーですが.ある意味予想外だけど,逆にノーアイテムで乗り越えるリアリティもあるけど,娯楽性を求められるB級ホラーにしては物足りなかった.

と,突っ込みどころを探すのも楽しみ方の一つ.ボケにいちいち突っ込んでいてはB級ホラーを楽しめない.だからこれだけは言わせてくれ.モンスター映画は,元凶を絶たないといけないんです."JAWS"はサメを倒すし,"エイリアン"は宇宙船爆破するし,"シン・ゴジラ"もなんだかんだ凍結するし,ただ過ぎ去るのを待つだけの災害とは違い,人間の力でどうにか解決してくのがモンスター映画の醍醐味.今回はハリケーンで氾濫した河川からワニがあふれてきたのですが,ワニ倒して.途中巣とか出してんだから,マザーワニ倒して.を期待してしまった.まぁそれでも楽しめましたけどね.ビビらせてくる系の演出に見事にはまって座席から飛び跳ねてしまいそうになったのは良い思い出です.

JOKER

みんな大好き,バットマンシリーズの人気ヴィラン,ジョーカーさんの生まれた話.自分,正直"ダークナイト"ぐらいしか見たことないんですけど,この"ダークナイト"のジョーカーが大変好きでして,"ニンジャバットマン"も観ちゃう程度のライトファンなのですが.介錯違いでした.対戦有難うございました.

今回のジョーカーさんは生まれつき精神疾患を患っており,病気の母と二人の母子家庭.仕事は道化師,ガキに嗤われ,上司に怒鳴られ,どっからどうみても社会的弱者なわけで,ひょんなことから殺人をしてしまったわけですね.そもそもゴッサム自体に不満が蔓延している状況,かつ今まで世間から悪意を向けられてきた環境,狂う理由をして狂ったみたいに見えるんですよ.違うんだよ.そりゃあ前述の"時計仕掛けのオレンジ"の様に狂った世界に生きる,ってのも悪なわけで,現世が狂い始めているって皮肉もまぁ楽しい.でもね,私の解釈は違うんです.どんな人間でもどんな環境でも,人間には悪の芽がありいつでもどこでもそれは芽吹くのです.特に今回,ジョーカーが精神疾患持ちなんですけど,これだと悪が精神疾患から芽生えるみたいに見えるじゃん.劇中で「本来の姿だ」みたいな台詞あった気がしますけど,そうは見えんのだよ.「トゥーフェイス」が恋人を裏切りによって失ってしまったように,いったい何が彼をそうさせるのか.何故彼が悪のカリスマなんて呼ばせるほどなのか.

これは正直自分が"ダークナイト"を信仰しているのが悪い.現代の悪とはこういうものかもしれない."ダークナイト"を期待してしまった自分が悪い.でも,誰であろうと「ジョーカー」側になってしまうという恐怖は真であって欲しい.市政に不満があるから,貧困に不満があるから,病気に不満があるから.そんなんじゃない.不満が無かろうと,今が幸せだと思っていようが,いつだって僕らは「ジョーカー」になる.「ジョーカー」になれる.このご時世だからじゃない.むしろこればっかりは世界の所為にしてはならない.悪という定義は世界がするものだが,悪に堕ちるかは自分で選択できる.選択肢は提示されるものではない,自分で作るもの.あの時証券マンを殺した彼,その後の選択はいかようにでもできた.自分は,そんな弱さに屈しることこそが悪の萌芽だと思うのです.


はい.最後は私の思想に塗れた駄文でしたね.映画的にはどれも最高に面白いので,あとは皆さんの価値観次第です.今後もメインは映画の話になるんですかね.好きな映画を語るときはこんな感じで気持ち悪くなるのでご容赦を.それではまた次回,お会いできればお会いしましょう.

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