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【七転び八起きの六転び目②】

【七転び八起き】マガジン

 PIZZA STAND passatempoはゆるりと営業していたけど、もちろんローンを組んだから返済はしなきゃいけないし、潤滑な資金があるわけでもないから、水飛沫を上げないように水面下でバタつく感じでスタートした。
 知人友人家族親戚が順繰りと来てけれれば良いかなと、そんな悠長なノリ……この時にはすっかり忘れていたが、こういうのが1番良くないパターンだ。ハングリーさもアグレッシブさもない状況ではポテンシャルを発揮できないタイプなのに、ぬるま湯に浸かって背泳ぎで向こう岸まで渡り切ろうなんてね、そんなのが許されるはずがない。
 中富良野での成功で油断したというか、慢心して甘えが出たんだと思う。

 もちろんある程度の運転資金も考えて借金をしたから、すぐにどうこうなるようなことはなかったが、そんなに余裕があるわけでもなかった。
 そんなタイミングで新店舗のオープン記念に『LA CIMA』というイベントを開催することに。
 パフォーマーをしていた頃に知り合った色んなジャンルのパフォーマーたちを旭川に呼んで、ショーを観ながらピザを食べてお酒を飲むイベント。
 メインゲストにはちょうどイタリアから帰ってきたタクちゃんを呼ぶことにした。第1回のJAPAN PIZZA EXPOで知り合ったフリースタイルピザアクロバットの……その時は前年に世界選手権(イタリア)で優勝してフリースタイルピザアクロバット世界チャンピオンになっていた。

 ほぼ満席ってぐらいはお客さんを集められたので、イベントは成功だったと言えるんじゃないかな。場所さえあれば本当は毎年でも開催したいと思う良いイベントだったんだけど、開催したダイニングバーが閉店してしまったのでちょうど良い箱がない。ステージ演出ができてある程度ちょうど良いキャパでさらにピザを焼ける環境を用意できる場所を探すのは意外と大変。

 タクちゃんとコラボでパフォーマンスできたのは大きな収穫だったし、いちファンとして世界選手権で優勝したパフォーマンスを観れたのは嬉しかった。
 そしてまさかだったのはその後だ。
 次の日だったか前の晩だったか正確には覚えていない。だからその後だと書いたけどその前だったかもしれない、車の中だったのはハッキリと覚えている。

 「北海道で働きたいです」
 「OK良いよ、いつからにしようか」

 すごくシンプルなやり取りだった。あれこれやどれそれは後回しにして、とりあえずそれだけ決めて、残りは擦り合わせていけば良いという考えで……いや、むしろそれも後付けなぐらい、あの返事はただの条件反射だったのかもしれない。
 それにしてもコーヒーのホットかアイスかを尋ねるぐらいの自然な会話すぎて感動には欠けるかもなので、次に書く時は少し脚色しようかと思う。
 雷と大雨の中、胸ぐらを掴み合いながらみたいなのはどうだろう。

 そんなわけで、全てを解散してまた1人からリスタートして、そこに新たな仲間が加わった。
 そしてまた世界選手権に挑むことになるんだけど、ラスベガスはもちろん、ついに本番イタリアの世界選手権にも出場してみることに。

 ここまで書いてが気ついたんだけど、白いマスクをしてパフォーマー『Mr.JULIE』として挑んだ2回目のラスベガス大会やそのあたりのアレコレが抜けているようだ。
 そのあたりはいつか『ミスタージュリーの大冒険』として書いてみようと思う。

 いや、書かないけどね。

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