【七転び八起きの一起き目②】
mixiの魅力はコミュニティと足跡だったと思う。あの足跡機能の絶妙な緊張感と親近感のバランスがとても良かったのに、途中で改悪されてしまったのが本当に残念だ。すごく他人との距離を気にする人たちが嫌がったんだろね、それならSNSをやらなきゃ良いのにってぐらいそれな人をたまによく稀に日頃から多々頻繁に見かけるけど、そういう人ほどSNSに依存していたりもする。
あの日……みたいな感じで鮮明には覚えてないが、軽い気持ちで旭川のスノーボードコミュニティを見つけたから参加申請してみたんだ。
スノボガチ勢というよりカジュアルな雰囲気の集まりだったから居心地も良さそうで。コメントもしやすかった。
「キングさんですか?」
しばらくするとmixiのコミュニティで知り合った市内の人たちがチラホラとお店に来てくれるようになった。もちろん顔も見たこともない人たち。
「キングさんですか?」
毎日誰かが来てくれる。
ハンドルネームが飛び交うお店。ものすごくお店の宣伝をしていたわけではないのに、むしろそれが良かったのか、その日思ったことをテキトーに綴っていただけ、それが興味を引いたのか、飲食店だから気軽に寄りやすいというのもあったんだろうけど。
「キングさんですか?」
ちなみにモンキーさんと呼ばれたことはない。キングさんも恥ずかしかったけどモンキーさんじゃなくて良かった。サンロクを歩いていて「キング!」と声をかけられるのは非常に恥ずかしかったが。
そのうちに、コミュニティのみんなで集まってオフ会みたいな感じで飲み会をやるから、せっかくならBRASS MONKEYでやりましょうという提案があって、すごく嬉しかった。
確か最初は15人ぐらいの飲み会だったと思う。最初はというのはそれから何回もその集まりがお店で開催されたからで、多い時は毎週末みんなで飲みに来てくれていた。
それからは2人で来てくれたり、5人で来てくれたり、3人で来てくれたり、平日も週末も誰かが飲みに来てくれて、あそこに行けば誰かがいるから寄ってみようみたいな流れもできて、mixi内のコミュニティの人数もどんどん増えて、気がつけば連日、鳴いていた閑古鳥が悲鳴を上げながら洗物を手伝うぐらいの忙しさに。
椅子を買った。
別に閉店間際でもなく、荷物抱えひとり電車の中で幸せそうにはしていないが、とにかく椅子を買った。正確には木製のベンチを作った。
オープンから何ヶ月かずっと赤字だったけど、やっと3万円黒字になったからそのお金を握りしめてホームセンターに行って木材とかを購入し、少しでも大人数の飲み会に対応できるように下手くそな木製のベンチを作り、既製品だとサイズ感が悪かったから、ついでに小さなテーブルも買ったんだ。
すぐに払わなくても止められたり責められたりしない光熱費とか電話代とか保険とか支払い猶予期間のあるものは全て後回しにして、その分、お店に投資した。
1日1万円売上が増えれば30日で30万円増えるんだ。椅子がなければ座れない。波がある時に波に乗らなきゃ凪になる。
さらに広告費にもベットした。mixiのコミュニティのおかげで団体客の対応に慣れてきたし、アルバイトも雇ったのでお店が回せるようになったから、人件費がかかる分、回転率を上げなきゃだった。
その頃の旭川で猛威を振るっていたのが悪名名高いリクルートのクーポンマガジン『ホットペッパー』だった。
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