台所おじさん

広告代理店勤務のクリエイティブディレクター。たまに公私混同を行いむりやり”ごはん系”の…

台所おじさん

広告代理店勤務のクリエイティブディレクター。たまに公私混同を行いむりやり”ごはん系”の仕事を作ろうとする。 得意技は”会いたい人”と仕事をする「LOVEキャスティング」インスタ(@mr_kitchen_)では叶えられない”長い文章を書きたい欲”を満たしています。都内在住。

最近の記事

【#25】家庭で活きる料理的サバイバル能力

無人島へ漂着したとき、いかにして生きながらえるか。あわよくば作物まで育ててしまいサスティナブルな生活ができるのが究極だ。僕は食べてOKなキノコや虫を見分ける知識もデリカシーの無い強靭な胃腸も持ち合わせていないが、石から包丁を削り出すことはできそうだ。売るほど時間はあるのだから、生きてさえいれば両刃の牛刀は研ぎ出せると思う。 それよりうんとハードルを下げればバーベキューで火を一発で起こせたりビクトリノックスやダッチオーブンをヒラヒラと使いこなせれば一目置かれるだろう。アウトド

    • 【#24】イキフンだけのナンチャッテごはん屋さんでシャレオツなドライカレーを55分待たされた話。

      ていねいな暮らしの提案にまつわる様々なモノを売る素敵な空間があり、そこにはカフェが併設されている。早い話が頼んだものが来なかった話なんだけど気持ちのやり場が無いから書きたいし、どう振る舞うべきだったか教えていただきたい。 カフェの開店は11:30、ついたのは11:45。開店前に入り口で待つほどの必死感を出したくないし、かといって1回転目に入りたいから絶妙な時間に到着したと思っている。店に着くと空席が3つほど。狙い通り1回転目というわけだ。この店には季節に合わせたメニューが3

      • 【#23】偏愛かつ変態的フライパン購入記

        僕は意外だった。ネットを徘徊した情報をざっとまとめると「フライパンは2〜3年が寿命だから買い換える」というもの。えええ。ふと自分の道具たちに目をやる。まじまじとフライパンの表面なんか見てなかったけど、うんうんたしかに。均一じゃなくて大きなまだら模様みたいにカサついている部分がある。そうなのかぁ。 もらい物のレミパン初号機 それこそ12年前。とある事情からレミパンの1stモデルをオカンからもらった。デザイン性もへったくれもない真っ黄っ黄の塗装のやつ。でも言っておくがレミパンは

        • 【#22】メシマズ母ちゃんと縦列駐車。

          上達、という要素で言えばクルマの運転と料理は似ている。 一部の都心を除きクルマは日常の必需品で、場合によっては毎日使う。これが地方になれば尚更でSUZUKIのディーラーは3kmおきに建っているのではないかと思うほど。父母に加え子供が三人となればクルマが5台。置き場所に困らない地方の持ち家となればSUZUKIやDAIHATSUのKカーに加え型落ちのクラウン、一人一台が珍しくはない。そうじゃなきゃ困るほど、料理同様、毎日と密接に関わっている。(だからラジオというメディアもエリアに

        【#25】家庭で活きる料理的サバイバル能力

          【#21】嫌いな食材も、おいしく。

          ミスターキッチンを名乗りインスタでごはんをUPし続けているくせして僕はドが付く偏食だ。あれが嫌いこれが嫌い、正直いい歳して恥ずかしいけれど無理なもんは無理だ、そっとしておいてほしい。 とはいえ、ごはんを家族に作る場合に自分の好みに偏らせるわけにはいかない。作ってくれている農家さんには申し訳ないことこの上ないが、嫌い食材を料理として成立させる能力はあると自負していて、よくそれを不思議がられる。 ポイントは、ニーズ。僕が嫌いな食材だけど、みんなが大好きな食材を使って料理をする時

          【#21】嫌いな食材も、おいしく。

          【#20】カルボナーラに生クリームは必要かどうかという論争。

          小学校時代含め、実家暮らし当時に出てくるパスタ、いや、スパゲッティはミートソースと決まっていたし世間にもあまり種類は無かったように思われる。スパゲッティといえばミートソースとナポリタン。あと、ボンゴレ。ボンゴレはロッソばかりでビアンコなんて見なかった。あったのかな?僕が子供だったらから?兎に角、そんな時代。ピーマンが嫌いだった僕はナポリタンではなくミートソース一択。僕のなかのスパゲッティは一種類だった。 僕も成長し、免許を取り、クルマで自由に出かけるようになったある日、カプ

          【#20】カルボナーラに生クリームは必要かどうかという論争。

          【#19】私はタマネギになりたい。

          私はアイデアを生業としている。つまりは流行り廃り、世の中の動きやこの先、実際にはそうならないかもしれないけれど、そうなるだろうとマコトシヤカに信じられていることに影響されるような(例えばノストラダムスの大予言みたく実際には来なかった”噂だけの世紀末”よろしく、これからは◯◯時代!◯◯社会!みたいなのに踊らされる)会社の中にいる。 人様ならぬ会社様からサラリーをもらうということは、雇い主側の要求に応えることの対価であるはずだが雇い主側がいつだって正解を持っているわけでもなけれ

          【#19】私はタマネギになりたい。

          【#18】愛。

          今朝”あさチャン!”を見ていて驚いた。あの辰巳芳子先生が取り上げられたのである。巷にたくさんいる料理研究家ではない、辰巳先生に取材が入ったのだ。 日本で初めて生ハムを作った先生。そのあまりの工程の大変さと93歳という年齢により中断されていた生ハムづくりを再開なさった、という取材だった。「やるべきことは、やらなきゃならない」と、自身を突き動かす衝動たるや。。。 辰巳先生の母、浜子さんもまた、料理の達人だった。戦時中、様々なものが取り上げられ贅沢は敵だと食材も満足に無かった時

          【#17】ジャガイモの憂鬱

          いろいろな素材から一つの料理を生み出すときに”同時スタート”をすると失敗することが多い。葉物野菜であれば茎から先に茹でた方がいいし大根とゴボウなら、より固いゴボウから先に鍋に入れたほうがいい。立ち止まって考えてみればとてもシンプルなことだけどそれぞれ切り終えたらザッと一気に鍋に入れてしまうことを盲目的にやる。家族のためのごはんを何十年と作っている世界中の偉大なるオカン達でさえ、なにも不思議に思うこと無くこの”同時スタート”をやっている。 そもそも切り方ですら個性に合わせたほ

          【#17】ジャガイモの憂鬱

          【#16】パズーとパンと目玉焼き

          『天空の城ラピュタ』は紅の豚を見るまでは僕の中でのジブリNo.1だったけれど、毎回引っかかるシーンがあの”洞窟パン”だ。 パンに目玉焼きをのせ、パズーがペロリ。なんと上の目玉焼きだけを先に食べてしまうのだ。それを真似してシータもペロリ。 普通に考えて”一緒くた”に食べない描写にしたのは、それなりのディレクションが入ったと考えるのが自然だろう。これ、僕が作ったオープンサンドだとして、コレをやられたら唖然とするし仮に海外から受け入れた留学生がやったら、それは”カルチャーショッ

          【#16】パズーとパンと目玉焼き

          【#15】Atomとイビツとネギと味噌汁。

          ラーメンズにAtomという20分の舞台がある。鉄腕アトムが空を飛びタイヤのないクルマが飛び交う未来を、どうしてもこの目で見たいという欲望が抑えられなかった父は、我が子が生まれたと同時に生命維持装置に入り長い眠りにつく。 ややネタバレなのでここで一旦離脱してただいても構いません。。。 そして、子供が30歳になった時、父はタイマーにより目覚め未来に降臨する。父、30歳。父と子は同い年になった。渇望してやってきた未来を見たくてあれこれ見せろとせがむ父は未来が来ていないことに愕然

          【#15】Atomとイビツとネギと味噌汁。

          【#14】HOTELの朝の”やらかい卵”が食べたい

          なぜだかはわかりませんが、”近づける”ことには成功ました。というのも、あれは”炒り卵”ではなければ”スクランブルエッグ”でもない”全くの別物”だと思うので、作り方も多少違ってきて当然なんですよね。 小学3年だか4年だか初めて家庭科の授業での実技は”炒り卵”でした。炒ってパラパラのカラカラにするあれ。とか、家でオカンが作る”スクランブルエッグ”で育った人間にとって、ホテルの朝食に出てくるアレは「やっぱホテルは違うな」と思ったものです。違うな、で終わるのか、どうやるんだろう?と

          【#14】HOTELの朝の”やらかい卵”が食べたい

          【#13】夜中にジャムを煮る

          という題名の平松洋子さんの本があるけれど、昨晩の僕はキッチンに立つ口実のため林檎を2つ買った。働き方改革で徹夜も減り22時以降オフィスにいることが減った、ここ最近。22時など「まだまだこれから」だったし、そもそも企画を生業にしている都合上アイデアがいつ出るかなんて僕にもわからない。「締切が仕上がり」。時間いっぱいまでカラッカラに乾いた脳からアイデアの一滴が滴り落ちるまでが、仕事だった。でも帰りが遅かろうが早かろうが料理はしたい。そんなだったら料理を生業にすればよかったじゃない

          【#13】夜中にジャムを煮る

          【#12】たまにはシャビーなパスタを〜だし醤油の効いた、いわしの煮付けと梅のオイルパスタ〜

          ”スープスパ”って単語は死語の可能性があるけれどたまにはシャビーな(ちょっとシャバシャバした)パスタを食べたくなるよな昼もある。そんな時よくやるのが和風パスタで、多彩な食文化の日本人だからこそできる芸当なんじゃないかと密かに思っている。 いつもならパスタ用のフライパンを傾けニンニクが軽く浮き上がるくらいの分量だけEVオリーブオイルを入れるのだけど今回はフライパンを傾けない。コンロに置いたまま一面に広がるくらいに注ぐ。厳密じゃなくていい。あ!その想像よりもちょっと多めです。で

          【#12】たまにはシャビーなパスタを〜だし醤油の効いた、いわしの煮付けと梅のオイルパスタ〜

          【#11】介護食に四季を

          辰巳芳子先生という方がおられる。「いのちのスープ」は映画にもなった。先生が神様のような存在だったなら、僕はゴミのような存在だ。崇高。息が出いないほどの。 先生のお父上が、ものが飲み込めなくなるという嚥下障害を患われたときから、いのちのスープは始まる。人間は、口にしたものからしか、形成されない。旬を噛んで含んで味わえないのなら、スープで四季を。折々の食材から生命の育みをいただく、いのちのスープが生まれたのだ。 蒸らし炒めという技法を先生は行う。野菜にはそれぞれ最適な切り方と

          【#11】介護食に四季を

          【#10】半径3mの物欲

          begin、monoマガジン、GO OUT、アンドモア。物欲をこれでもかと刺激する雑誌、雑誌、雑誌。そもそも雑誌を買わなくなったこともあるけどドカンと買い物がしたいというのがなくなった、その代わり日々手にする「半径3mなもの」をちょっと凝ってみると普通の一日が色づいてくる。なんだか普通な書き始めなので読んでもらえなそうだけど、そんなものをご紹介させてください。 セルクルとキッチンバサミ。キレイな円柱状に盛り付けたい時のセルクルは、サイズ別に持ってるだけで「そんな料理」を作っ

          【#10】半径3mの物欲