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短歌

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連作短歌、習作。
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連作短歌:東京都狛江市西野川

連作短歌:東京都狛江市西野川

徒歩30分だけれどサイゼは徒歩1分 50平米の新しいお城

開放感売りにしてたがトイレまで扉がないとは笑っちゃった

壁紙がレンガ調でかっこいい、ところどころ違うレンガで

洗面所鏡のフレーム取り合ってフィギュアと髭剃りが同居する家

引っ越しといえばやっぱり蕎麦でしょと乾麺タイプを箱から漁る

ただいまとおかえり交わる場所だから、いっぱい貼ろうね思い出写真を

花瓶などないから全部のグラス使い花

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聖夜の夜は夢で会いましょう

聖夜の夜は夢で会いましょう

新緑の血潮に群がる人々のサンタクロースはユーミンではない

鈴の音が降り積もる夜、僕たちはイルミネーションのまま結ばれた

グラスから溢れ落ちたかなしみをソリに乗せたら遺影と釣り合う

ヤンキーの焼香じゃないから今夜くらいマルボロ吸うのはやめておいてね

永訣の恋です 何度夜明けを眺めても温もりなぞるプラダの香水

この連作短歌はナカタニエイトさん主催の「アドベントカレンダー2021」作品です。

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習作短歌「指先でお暇を」

習作短歌「指先でお暇を」

Ifだけで考えたならプリキュアも世界を取らずに孫を撫でてる

陶磁器のような指先絡まってティファニーブルーの運命の糸

本気より惰性よりもタチが悪い「情」とか云う名の勝手な憐れみ

紫煙ごと吹き付けちゃえば無に還る代打に満たない恋愛ごっこ

氷結はウォッカでできてるらしいから私の愛はロシア製かも

夜夜中でしか言えないことばっか そんなの全部ハイボールにして

結婚を前提にした恋なんて猫がじゃれて

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連作短歌「日々の狭間で」

連作短歌「日々の狭間で」

透明の朝日をまとう左手が昨日の終わりを教えてくれる

メタボとか糖尿だとかの情報で誰かの人生の輪郭トレース

生涯の心拍数は決まってるらしい ときめきだって死因に

何度でも許されたいとか言っちゃって何をしたのか忘れてしまった

グラム500円以上の牛タンで地獄に落ちる練習しておく

習作短歌 20191010

習作短歌 20191010

建築中のビルが見下ろす職場がいい バベルの塔になってほしいな

終バスの時間が全然覚えられないふりしている金曜の夜

最初からさよならだったわ、居心地の良い羊水が体臭になる

本日の死因は背中に貼ってある値付けシールが気になる自意識

静脈と垂直に赤のマッキーをまっすぐ引いたらもうすぐお風呂

ハイボールだってカクテルなんだから意味だってある(誕生らしい)

喪失の涙とくやし涙ならどっちが寝酒の氷

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連作ヨーグルト短歌「お砂糖ぐるぐる」

連作ヨーグルト短歌「お砂糖ぐるぐる」

スプーンでひとさじ微熱を数えたら全身全霊キスでもしようよ

夕方に唸る眠気と体温がすっぱさ欲する 呼び出せ経血

愛だとか嫌いだとかで容量が減ってくだけのギガ数求めよ

なくたっていいよ餃子のタレだって砂糖小袋だって満月

ヘルシーな恋と仕事が私の乳酸菌代わりかよ

カーテンの裾から刺さるハイビームかき混ぜたなら悲しみクリーミー

〆切がやけに短い 左手の小指が細い母のように

自家製の夜空が伝統

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連作短歌「患えば夜」

連作短歌「患えば夜」

好きな人ずっとずっと好きでいていいよがわかる免罪符ください

恋人の好きなところは電車の席端っこのこと「チョコ」という点

炊飯器買うよりレンチン米の方がコスパいいって人生損だよ

たい焼きは腹から食べる主義だって初めて知った、実は私も

空前のやきとんブームの向こうでは白ホッピーと餃子が微笑む

中ジョッキ八割埋まる焼酎とホッピー黒だけ正義でいてね

エモいってばっか言うなよエモいって「

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連作短歌「呼び出し音からさようなら」

胸の奥住み着くブルージーンズの匂いをまとう六月の亡霊

久しぶりの基準は左手に残る指先のキスを忘れた頃です

上唇と下唇がせわしなく二回くっつく深夜の呼び方

何回も掛け直しても出てくれないし、出れないってのがもう答えでしょ

まずいって言うなら吸うなよ 臭いとか言うくせ金マルそれ私のだし

日高屋の机の下のメニュー取るふりしながらつながる小指

無理矢理に話題を作ってくるくせに飲みの誘いはシカト

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連作短歌「/remind @me “Never falling in love” at24:00 on Monday」

ショッキングピンクで塗り替える世界は案外馴染むしやっぱり深い

どこまでも行けるね!加速スイッチオン!なんて言っちゃう深夜の電話

凍りつく吐息さえも花園が猫を逃す一匹二匹

取り合った毛布の厚さを定義して錆びつく夜の彩度はしあわせ

名残美味しいがちょうどいいのは知っている、それでも言わせて今すぐ会いたい

月曜が来るたび探す面影がさみしすぎるせいですホッピー
#tanka #短歌

【再掲:連作短歌】恋人を喪った安田短歌2018展「それでも明日はやってくるから」

悲しみと愛欲疼く新宿の熱量/光線、どっちが熱い?

知らぬはずなのにまつげの重みとか似ちゃってるから仕方ないよね

体温を人と交換する度に笑顔の君の画素数荒れる

「やすだくん」って呼んで欲しいなんて言う気持ちの悪いお願いでした

『恥ずかしいからこっち見ないでよ、安田くん。すっぴん可愛い? それ悪口ね!』

沈黙の業火に焼かれ夢に見る それでも天国、憧れてますかね

薄暗いベッドルームでしか煙草

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連作短歌「わたしは夜夜中燃え殻を」

連作短歌「わたしは夜夜中燃え殻を」

暮れなずむ街とかくれ鬼をする しじまに消えていくは劣情

吹き出しが連なる画面がやかましく呼び立てるからフリスク食べる

このままさ、一生始発が来ないとかないかな? ゴジラが来るとか、だめ?

恋蛍輝け季節が通り過ぎ道端佇む無色の君まで

何度でも何度でも何度でも言うけど許すよ、許してくれれば

もらうたびこれがわたしじゃないように願って吐き出すマルボロメンソ

結局はさけるチーズのように傾いてし

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連作短歌「失恋日和」

真っ白に輝く陶器の左手が私に伸びていく蜘蛛の糸だ

カーテンの隙間から降るやかましいネオンが照らす埃のダンス

不動の二番にしてね? いつだって電話が鳴ればそこは楽園

好きだとか愛してるとか言う前にもんじゃ焼いてよ わかっているから

コンビニのついで買いと同じくらい「今夜空いてる?」は気楽にお願い

中央のベッドはスポットライト付き 裸体の点検作業に最適

指先を裂いた紙切れに残る惰

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自撰連作短歌「夜明けの淵ならもう一度だけ」

どうせならいっそ漸近線のような立場で一生セックスしたいね

チョコレートのことだってくらいわかってる
でもにやけていい?「俺は好きだよ」

まばたきの「た」と「き」の間で揺れ動く打算の口付けすらできなかった

迷いなくピンヒール履いてかけていく 新宿マルイは甘すぎて、好き

何でもない日の延長に炙りチャーシューメン食べる武装をしている

不定期のメルマガみたい 深夜のみ私の名前を短くしないで

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連作短歌「完全5度は急速落下」

足掻いても22:00過ぎしか打刻がないから許しておくれ今日の恋人

シーツには匂いが残ってしまうから窓際でいいよ夜のまにまに

唐突に神託はくる「生き延びて赦されないまま赦されなさい」

流れ散るまっかなかなしみ平行に刻んで歩け 夜明けは捨てた

曖昧な気持ちを全部トンボカットできたらよかった営予は戻して

本当はまるくやさしくなりたくてボブにしたんだって言いたかった

帰れないままでいいよヤレ段

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