【NovelJam】ブランディングは自分のフィールドで【#あなボロ展 解説】

去る1/12(土)-14(月)の三連休、原宿にある原宿デザインフェスタギャラリーにて個展を開催していました。

▲ギャラリーの取材記事。展示の雰囲気がわかります。

今更ながら感のすごい記事ですね。早めに書けって言っていただろうがい自分!
noteで宣伝し損ねたのは完全にミスなのですが、なかなかいいものになったと自負しているのでちょっとだけお話しさせてください。
足を運んでくださった方、本当にありがとうございました!余談ですが、差し入れで順調に太ってきました!痩せねば!


・NovelJam開催前〜終了までに考えていたこと

自己紹介でも書いた通り、基本的に小説を書いてこなかった人間なのにNovelJamへ参加するという大無茶っぷりを発動したため、開催前も執筆中もめちゃめちゃ不安しかありませんでしたが、実際は書くことよりその後のことをずっと考えていました。無茶でも貫徹すれば、とりあえず作品は根性で書き切ると信じていた自分を恥じたいわけですがね……。
具体的には、販促フェーズに入った時に何をするか。もっと言えば、どうやって本を売っていくか、森田玲花の認知度をあげるかをこっそり練っていました。

まず、認知されるためにTwitterを使ってちょこちょこ大声をあげる。
特に開催二日目は、みんな必死タイム→だったら煙草タイムは短歌でも詠みながら思考整理する…? と自分にノルマを課して、ちょこちょこ呟いていました。
事前に「NovelJamってイベント出るから応援よろしくな!」と周囲に宣言していた甲斐もあり、友人をはじめRTしてくれる人がいたので、とりあえず名前を覚えてもらうというフェーズはやや達成。会場でも初日にメンターを使ったり、酒飲みながら書いたりして、悪い意味でも目立っていたぞ!

次に、販促周りのこと。
本当はチームビルディングが終わった時点で、編集さんに「後半はマジで余裕なくなるから、頭の回るうちに考えておきましょう」と言われていたのですが、案の定、頭の回らない朝方からスタートすることに……。
帯コピーはマストで入れたいと考えていたので、そこに特化して取り組んでいました。
ただし、原稿を書いていて切羽詰まった時に書いていた販促メモや「ここを切り口にしたら伝わるかな〜」と目星をつけながらは進行していたので、多少の材料を残せていたのは救いだったかなあ。仕事している時のように、何本も書いて検証するのは難しい、というか時間がなかったのでザクザクの状態でパターン出し→編集チェックに回しました。

▲販促メモの一部

あらすじやリード文は手が回りきらなかったので、編集さんに任せて最後の最後に調整。いや、時間かかるとは思っていたけどさ……いたんだけどさ……(絶望)

そして、販促フェーズ中のプロモーションについて。
改訂版を書くのは当たり前として、他に何ができるのか。詩人としてエントリーしたけど、それっぽいことは何もできてない……ぐぬぬと考え、辿り着いた先は「詩歌を書く」「そして、その拡張表現として場を作る=展示をやる」でした。


・拡張表現としてのセルフ二次創作

突然ですが、詩歌へのイメージって勝手にハードルを上げられているのではないか?と常々思っていまして。どうして取っつきにくいと思われてしまうんだろうなーっていうのも課題で。

私は元々小説畑ではないので、できたら自分の得意分野に引っ張り込めたら最高に強い。
それでも、小説のためのイベントというのに葛藤がありました。

しかし、詩を書く! 短歌書く! むしろそっちが主! ということもあって、どうにかしたいなあとはずっと思ってたのを、まずはnoteベースで短歌にしてみました。
ある種、自分の作品をベースに二次創作していく感覚で、どんどん書く!みたいなことを考えながら投稿してたんですね。

でもこれって、すごいクローズドな世界でしか届かないんですよねー。リーチが弱いというか。アクティブユーザーにだけだよなあ、うーんみたいな。

じゃあ場を移して、もっと魅せるということに突き詰めてみたら?小説への接点が低いユーザーへ、この作品を届けるなら? この作品が届くユーザー層ってどこ? みたいな話を突き詰めていった結果、原宿のデザインフェスタギャラリーでの個展開催へ行き着きました。
ここってギャラリールームの集合体なので、たまたまふらっときてくれる人が結構いるんですよね。ありがてえありがてえ。

できるだけ審査期間かつ休日で、と思っていたら、奇跡的に三連休で小部屋が確保できたので会期1ヶ月前に予約。しかし準備は進まず、どっひゃーとなるのは必然だったかもしれない。


・言葉から逃げずに戦い尽くす

今回の展示はもちろん「あなたは砂場でマルボロを」の世界観を表現することに尽きるのですが、そのまま表現するのは違うなと思っていたのは前述の通りです。
二次創作するって言葉の通りなのですが、テーマとしては「言葉だけで魅せる」を軸にして作り込んでいきました。魅せるって言ってしまうと大々的になってしまうのですが、言葉以外の不要な要素を極力削ぎ落としていく形で構成しています。

▲前回の個展「ゆるす、以上愛してる。未満展」より

前回は写真との組み合わせを中心にパネル展示をしていました。インスタレーションもあるけど、比較的真面目に見せています。
どちらかというとしっかり詩を感じてもらいたくて、かなり堅い印象があるようにも感じるような気が…ビジュアルを入れることでいい意味でも悪い意味でも読み方も制限されるし、イメージの方向が集約されてしまっているようにも感じます。

今回達成したい目標はあくまでも「作品の世界観を伝える」「小説から詩歌での拡張は可能であることの可能性を実現する」の2点だったため、固定イメージは不要だという結論に達しました。特に主人公の心情を表現すると決めてからは、とにかく文章で圧を重ねて形にした方が表現が明確化すると思い、印象的なモチーフ以外は全部外していきました。

言葉って誰でも使えるものだからこそ、書くのも伝えるのも本当に難しくて。本気で向き合わないと取って食われてしまうのは書き手の方だと思うんです。

インスタレーションはあくまでも「読み手との距離を縮め、疑似体験してもらう」ための手段でしかないので、そこを見誤らないようにしようと強く誓って制作を進めていきました。途中、何回も「ビジュアルがないと空間が持たないかも」「やっぱり言葉だけってとっつきにくいものになるかも」と心が折れまくってたのですが、結果として貫いて良かったです。妥協という借金をしていたら、多分取って食われてました。いい展示を作るには自分に鞭を打つことも大切!


・言葉とインスタレーションは共存できるのか

結論としては、できると思います。というか、やると決めたからには共存させました。大量の写真とともに解説をお届けします。

入り口から目に飛び込んでくるのは、白いタイポグラフィックの切り文字でできたモビール。小説冒頭に掲げた「許さない、許してほしい、許さない。判決を待つ砂場の淵で」を筆頭に「セックスのSはサービスのSでさみしくないよのSでもあった」「終電を逃してラブホ直行」の3本が並んでいました。
デザインは偽の父こと杉浦草太朗先生です。いつも突然頼んですみません。

サイズがでかかったため、複数の紙をつなぎあわせて作ったのですが、自力でデザインカッター一本で切り抜くのは無謀でした。あと切ること前提にした文字にしなかったから鬼畜の極みでした。自分へ無意識のうちに苦行を課すのはそろそろやめたいですね。とりあえず切り文字は格好よく仕上がったのでまたやりたいですが、自力カットはちゃんと考えてから手を動かさそうと思います。一本あたり平均2時間くらいかかるからみんな気をつけろ。

▲会社の作業台を借りて深夜に作業を続けていた

▲床置き版はたるんでないので見やすいです

▲「許してほしい」のしの部分に継ぎ目があることがわかる

中に入ると壁一面に広がる手書き原稿用紙。通称:飯田(主人公)の呪詛 は彼女が思っていそうな恨みつらみをガンガン書き殴っては貼って、書き殴っては貼ってを繰り返していました。みんな部屋に入った瞬間ギョッとしていたのはいい思い出です。

当初は用意していた30枚くらいだけを貼る予定だったのですが、意外と空間が余ることが貼ってみて発覚したので、在廊しながらどんどん増やしていきました。2日夕方に用意していた原稿用紙が切れてしまい一時はどうなるかと思ったのですが、「差し入れは原稿用紙でお願いします!」とTwitterで呟いた結果、友人がダイソーで調達してきてくれたのでした。ありがとう友よ…

私の個展は最終日まで完成しないことで有名なのですが、今回の展示は搬出ギリギリまで書き続けていたので常に更新されていく状態でした。最終形態を見ることができたのは、最後の方に来た友人カップル2組と搬出を手伝ってくれたダイソーの友達のみです。
ちなみに最終的には200枚近くまでいきました。人間書こうと思って足掻けばできるものですね。

▲初日の様子。まだ全然空白がある

▲2日目中盤。だいぶ埋まって来たが原稿用紙の方が先に尽きた

▲最終日はほぼ壁が埋まってしまい、原稿用紙が若干被りがちに

▲まだ貼れる余地はあるが、最後の方はバランスとの兼ね合いがだいぶ苦しかった

▲よくよく見ると結構矛盾した声が隣に並んでいる。これも人間の心の声という表現だからできた

「全部読みたい」との声もあったが呪詛は心の声なので全部ログを取らずに捨てた。こんなもん読まれるためのものじゃない。誰かが知ることもあるけど、これは誰にも伝わらないって惨めに泣いてる女のとりとめもない思考の形跡だから。

その呪詛の始まりとして置いたのが、脱ぎ捨てた服たち。ワンピースとストッキング、男性ものの白ワイシャツがぐしゃぐしゃに置いてある。
小説の始まりもベッドの中からだった。毎晩こうして誰かと一緒に服を脱ぎ捨てては思考が始まり、そして夜が明けていく。

▲汚く脱ぎ捨ててあるのも演出(全て私物)

服の上には「明日は恋人」という詩を添えた。下記に引用する。

明日は恋人

ミッドナイトコールは妥協せず
じっと待って仕留めるべきです
羽虫のような負けでしょうから
たおやかさとしたたかさを手に
ビールで火照った頬を取るべき
性愛だけが正しさだとして
それでも魔法は溶けていく

眠れ新宿 今夜くらいは
ほどけることはわかってるのだから

秘め事が美しさの秘訣です
「あと十分です」の合図が鳴れば
惜しみなく愛を与えましょう

前向きに、検討してね。

服は人目につく第二の皮膚だ。
この詩も人から見られる主人公の姿を描こうとして制作した。

壁から少し離れ、モビールの下に目を落とすと飛び込んでくるのは、台車の上に乗った大量のマルボロ。この「マルボロの詩」部屋の中央にあったのでこちらも存在感のあるものだったと思う。ここだけの話、搬入に使った台車の置き場所に困ったので台座代わりにしたのは内緒である。結果オーライが正義!

このインスタレーションをするためだけにずっと空箱を集めていたのだが、初日に思いっきり忘れてしまったため、急遽つなぎとして5箱買って展示をした。なので、サイドを飾る100本もの煙草たちももまた偶然の産物なのであった。偶然にしてはいい方向に転がりすぎな気もするが。

▲初日の様子。量がないしお行儀がいい、これはこれでありだったかも

▲最終形態はこちら。箱が増えている上に荒くなっている

▲偶然の産物の煙草タワー(100本あったが途中からちょこちょこ吸っていた)

ここには散文詩を中心に詩を散りばめた。画像中にもある「今夜あなたと浮気します」の他、空箱の中に詩を書いた紙を丸めてセットし、読み手が自由に選べるようにしていた。全部読んでくれた人も中にはいたようなのでとても嬉しい。

▲こういう紙を大量に自作して

▲筒状にくるくる丸めて

▲箱へ入れていた(画像は試作時のもの)

箱の中には詩だけでなく、胃薬やら飴やら一見何のことだかわからないものも詰めていた。タイトルにもあり、作品中でも出てくるマルボロは、ある種の愛の象徴である。中に何が入っているかは、開封しないと本当に煙草かどうかなんてわからない。

▲作中の文章が書かれた煙草

「今夜あなたと浮気します」は作中の主人公そのものだ。
人を振り回すけど、その分誰かに傷つけられている。傷ついた分は誰かを傷つけることでしか拭えない。そのマインドが間違っているかはさておき、つらいことを浮気で解消してしまうのは、さみしさ故の愛だと思う。

唯一、意図的に当たり的な位置付けで入れたのが、文章の書かれた本物の一本。作中、主人公が初めて煙草を吸うときの想いが刻まれている。
本物は全部空箱から出していたので、これだけ目立つようには仕掛けたものの、単なる煙草だと思って見ていない人はかなりいたように思う。取り出さないとわからない形だったので、読めた人はかなりラッキーである。

対面の対面に置いた椅子は物販品が近かったこともあり、スルーする人が多かったが、見つけた人はニヤッとしていた。ここには散文詩「誰かとつながっていたい私たちは」を配置した。「明日は恋人」が外から見られる姿なら、こちらは内側の本心を書こうと思って制作した。

▲呪詛の反対側にポツンと置かれた椅子

その隣には前回の展示時にもあったインスタレーション「声を聞かせて」。無数の糸電話の中には短歌を詰め込んだ。

▲今回は厳選して5個

▲画像では見えにくいが、覗くと内側に短歌が書いてある

遠く離れた人とも簡単につながれる電話は、一人の夜をより際立たせて加速させるものだと個人的に思う。
それぞれの電話が誰につながっているのか、それとも同一人物との会話なのか、どちらが話している言葉なのか、読み手に想像を委ねたい。
親切な人が「何も書いてあるのがありますが、設営漏れですかね」と伝えに来てくれたのだが、それは意図的な余白でした。何も言えない、何も聞こえないってなる時もあるよね。

最後に一枚だけ、ボード風に展示したのは「みたして」という詩。
こちらも下記に引用するので、ぜひそれぞれ余白を埋めて詩を完成させて欲しい。正解はない。読み手の数だけこの詩はあると思っている。

満たして

あなたのくれた「      」を
全部「    」しまえたらいいね
ぽっかり空いた「      」が
砂場の向こうで無邪気に微笑む
意味もない決断でも
煙がたなびき「      」の夜 

あなたの嫌いな「      」が
全部「    」しまえたらいいね
流し込んでた「       」に
そっと寄り添うのは笑う三日月
殺せない恋でした
最短距離でも「      」の日 

全部「      」しまったから
もう二度と「         」
広がっていくよ、どこまでも

満たされないから、恋をするし愛する。
満たされないから、夜な夜な酒を飲んで誰かと夜を共に過ごす。
満たされないから、とりあえず煙草を吸う。

そんな満たされないだらけの女をどうか満たしてあげてほしい。与えても彼女が満足するかはまた別の話ですが。


・終わりに

表現の方法は無数にある。
自分の作品をある種の二次創作に落とし込むことで達成できたのは「あなたは砂場でマルボロを」という作品の認知を少し獲得できたこと。作品のイメージを強烈にしながら、読み手にそれぞれ委ねていくという詩歌のスタイルを貫けたと思う。
自分のフィールドに引きずり込めば、伝えたいメッセージもより明確な形になるだろうという見立ては正解だったんじゃないでしょうか。いやまぐれかもしれない要素も多々あるんですけど…

セルフブランディングをするなら、まずは自分の得意なことやってみる。短期間の決戦ならありだと思います(余談ですがグランプリも選ばれなかったので無冠で終わりましたが、グランプリ受賞者の西河さんから勝手に個人賞として選んでもらえました。やったぜ!)。

今後の活動予定としては、友人との詩歌ユニットも頑張るのですが、個人活動ももう少し積極的にやりたいと思ってます。書くのもそうだけど、また展示したいです。あと小説も書きます。書きます詐欺にならないように頑張ります。
ぼちぼち購入者特典コードを使ったこともやるのでもう少しお待ちくださいね……本当は開催期間中にあなボロ詩集出すつもりだったんですって言い訳だけさせてください……

ちなみに書き込んだ煙草はお焚き上げと称して、最終日の打ち上げで吸いました。おしまい。


【今回の展示モチーフの小説はKindleをはじめ各種電子書籍として好評発売中です】

▼各種媒体へはこちらのリンクよりどうぞ


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森田玲花

1992生まれの詩人(仮)。貴方の心に致命傷を与えたい。 【連絡先】mrtriksty@gmail.com 【個人活動まとめ】http://aboutmrtrik.tumblr.com

あなたは砂場でマルボロを #NovelJam

男、笑顔、さみしさ、煙草、ぬくもり、仕事。 くだらねえな、しあわせなんて。 --そろそろ終わりの時間です。 森田玲花が #NovelJam で書いた小説「あなたは砂場でマルボロを」についてお話しします。
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