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【詳細記事】知人との仕事トラブルを解決した話

こちらの漫画の補足を描きます。


今回の漫画制作意図

今回の話の法的問題点は「親事業者の下請法違反(発注書を出していない)」ことですが、正直そこはあまり問題でなく、漫画内にあるように
・自身の行いを顧みず、私が非常識かのように高圧的に言われたこと
・制作者に対する配慮が全くない
ことが許せなかった。これに尽きます。
(3ページでのA氏の発言は、脚色なしでこのまんま言われました。)

黙って納品を終わらせて静かに縁を断つこともできましたが、
あえてそれをしなかったのは
・今後この会社が取引をするであろう制作者のため
・ひいては世の中からこういった会社をなくしたいため
・自身がトラブルを解決することで、その後この経験をもとに誰かにアドバイスできると考えたため

です。

正直、漫画にするまでに結構な心労がありました。思い出すことすらストレスであり、事実確認のためメールを再読するのにも精神力を費やしました。しかし、あえてたくさんの方にご覧いただくことで、発注側も制作側も気持ちよくお仕事がでるよう、業界全体がよくなればと思い執筆しました。

私は今回、弁護士さんに依頼し、公正取引委員会に申告をしました。
全ての人に同じことを行うべきとはもちろん思いませんが、
トラブルを抱えた時のほんの少しの戦う勇気の後押しになればと思います。


弁護士さんに依頼するまでの経緯

今回助けてくださったのは「デザイナー法務小僧」の田島さんと宇根さんです。(@designer_kozo
このお二人とはロゴや名刺を制作させていただいた関係で、度々お打ち合わせでお話しさせていただく間柄でした。漫画内ではカットしましたが、実は暴言を受ける(2~4ページ)前に少し相談していました。
また、他のクリエイターにも「金額が決まらないまま制作が進んでいっているんだけど、どうするべきか?」と言う相談をしており、弁護士さん含め全員「危なくないか?」と言う反応でした。
なので暴言を受けた(2~4ページ)後、即座に言われたことと状況をメモし、お二人に送りました。お二人の結論は「これは暴言であり、下請法にも抵触している可能性が高いので、必要であれば正式に案件相談を受けます」とのことでした。
しかし、A氏は今までお世話になった方。恩もあります。弁護士さんに頼むと言うことは「争う」と言うこと。そんなことしていいのかと悩みました。


たくさんの方々へ相談


黙って制作するか、弁護士さんに依頼するか。
私はとても悩み、様々な方に相談し、ご意見いただきました。

・以前トラブルにあった時、解決したけれど暫く干された
・そんなこともあるよ。めげずにがんばって(泣き寝入りしたほうがいい)
・一旦制作中止にして金額先払いにしてもらってから、制作を再開してはどうか
・クライアントに現状を暴露してはどうか
・制作やめようって向こうがいってるんだからやめればいい
公正取引委員会に申告してみては
・解決することは後世のクリエイターのためにもなる。弁護士さんに依頼することを勧める

など、様々な意見をいただいたのですが、最終的に決断に至ったのは漫画内5ページの部分です。
こちらの法人代表の方(便宜上、Bさんと呼びます)とは実際は1,2時間お話ししていただきました。
その中でもずっと、黙っているべきか、弁護士さんに言うべきかで迷っていました。

この時点でA氏との関係は今後ない、とは思っていたのですが
・本当に制作中止になって制作費が一切払われなかったらどうしよう
・お世話になった人から嫌われたり恨まれたりしたくない
・私さえ我慢すればクライアントにも迷惑かけずにすむのでないか
・しかしこのまま黙っておとなしく制作もしたくない

という思いがぐるぐるしていました。

しかしBさんにこう言われました。
・そこまで舐められてなぜ泣き寝入りするのか
・縁を切る覚悟の相手になにを遠慮しているのか
・何を守りたくて悩んでいるのか?傷つくのが怖いのか?
・ここで戦わないと言うことは今後不当な扱いにあった際にもそれを受け続けるのか

・「戦う」と言うことは自身も傷つく覚悟をしなければならない。嫌われるだろうし恨まれるかもしれないし、最悪一銭も制作費が入らないかもしれない。しかしここで戦わねばA氏の会社は自身の誤ちに気づかず、むしろ正義だと思って今後も仕事し続ける。それでいいのか?

この言葉を聞いて戦う覚悟をし、弁護士さんに依頼しました。


弁護士さんへの相談内容


漫画内では割愛していますが、私は希望(仕事完遂、制作費の約束が欲しい)とともに弁護士費用予算を伝えていました。お二人は予算内で可能なプランをいくつか出してくださり、それが漫画内にある「業務委託契約書を出すこと+公正取引委員会への申告」というプランでした。
全てお二人にお任せして私はフェードアウトすることもできたのですが、私の希望と予算に合わせてくださったのです。なので、自分が矢面に立ち、ある程度傷つく覚悟はせねばなりませんでした。


業務委託契約書締結と納品まで


締結はすんなりしてくれたのですが、A氏からしたら「突然契約書を出してきて全額払え!といってきた。せっかく仕事を紹介したのに恩知らずめ!」と受け取ったのでしょう。元はA氏が発注書も何も用意していないのが原因なのですが、怒気を感じる感情的なメールは最後まで続きました。
中には中傷も含まれており、本当に気の重い毎日でメール通知の名前欄を見るたび心拍数があがったのを鮮明に覚えています。(夢でまで何度もうなされました。)
契約書提出時に弁護士さんのアドバイスで「以降連絡はメールでお願いします」と書いたので電話はなかったものの、メールでも随分精神力を減らされました。
(こちらは弁護士さんの指導もあり、裁判になってもいいように終始誠実なメール応対をしていました。)


公正取引委員会に申告

時系列、関係者を事細かに申告したのが良かったのか、すぐに公正取引委員会から連絡が来ました。
そこで詳細確認をしていただき、公正取引委員会の見解は

・下請法違反は「発注書をだしていないこと」につきる
・本来、発注時に金額、納期、支払期日などを発注書に記載して渡す必要があるが、今回は発注書を出していないので、それが問題である
・値下げは発注書などで事前に決めていた金額から値下げした際に問題になるので、今回はそもそも事前に金額を決めていなかった時点で下請法違反であり、「値下げをほのめかされたこと」は違反に当たらない
(ただし、今回契約書で決めた金額よりも、後日振り込まれた支払額が少なかったら、それはまた下請法違反になる可能性があるので申請するように)
・暴言については民事の問題になるので公取では対応できかねる
・申告は匿名希望か、名前を出してもよいか決められるが、匿名の場合少し時間がかかる可能性がある(名前を隠しながら調査するので)
・結果報告を希望するか、否か決められるが「結果のみ」を伝えるもので途中経過は一切開示できない
・結果は半年から一年後の通告で最大に遅ければ2年ほどかかる場合もある
・公取から行うのは(下請法違反が判明したのが初回の場合)指導のみである。(警察じゃないので逮捕とかはしない)

とのことでした。


最後に

漫画の最後にも締めくくっていますが、
知人友人であろうとも書類関係や、決めるべきことを最初に決めておくのはとても大事です。
法律云々でなく、のちにトラブルになりやすいからです。
逆にそういった話を疎ましく対応されたり、ないがしろにするような方とはお仕事すべきでないと思います。トラブルの種をあえて残すことは誠実な対応に思えないからです。

また昨今、副業や個人でお仕事をする方が増えてきてトラブルも多く聞きます。多様な働き方ができる反面、自分の身は自分で守らねばなりません。私は今後、自身の体験をもとにデザイナー法務小僧のお二人とクリエイター目線の法務イベントなどをしていく予定です。
少しでも皆さんがお仕事しやすい世の中になりますよう祈っております。

【お願い】
この漫画はA氏を貶めたり、私かわいそうでしょ?と言いたいのでなく、解決策の一例を提示するものなので広まってくれるのが一番ありがたいです。
可能であればシェアしてくださると大変嬉しく思います。

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