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財政出動

 需給ギャップを埋めるためには財政出動が一つの手段となります。
その財政出動の定番となるのが、ハコモノです。

東京五輪や大阪万博も景気刺激策としての財政出動になるわけですが・・・

高度経済成長時代と異なり、現代ではハコモノについての経済波及効果が大きく減っているようです。

理由は、様々なものが絡んできていますので、全部書き出すことはできないと思います。

そこで、下請けサイドから見た理由だけに限定して書くと・・・

  1.  中間業者が多すぎる

  2.  無駄に凝ったデザイン、意味不明の設備が設置される

  3.  仕入れ先が海外中心なので国内需要が増えない

  4.  手形決済が連鎖されるため、現金化まで日数がかかる

といったところでしょうか。
一時は、丸投げ(一括下請け)が多かったので、孫請けひ孫請けぐらいまでいかないと実務関連にノータッチということもありました。
今では一括下請けは法律で禁止されていますけどね。

こういった構図を国民サイドが端的に知ったのが、コロナ禍での持続化給付金でしょうか。
(すでに知っていた人は多いと思いますが・・・)

国が1億円で発注をかけた場合、元請となる大手から8000万円で下請けに出され、そこから6000万、4000万、3000万といった感じで中抜きされ、最終的な現場では1000万ぐらいで働くというお話になります。

アベノマスクでも問題が噴出しました。

早い話が、甘い汁を吸う上流企業があり、その上流企業とつながる政治家や高級官僚がおり、彼らによって財政出動の大半が費消されているということになります。

で、中抜きで予算が削りに削られた結果、海外調達に頼らざるを得ないことになるわけです。
その結果、末端の工場に仕事が回ることがなく、海外(中国や東南アジア)の工場が潤うという図式になるわけです。

こういった事例は国だけでなく、電気やガス、水道といった公共性の高い事業でも頻発しています。
スマートメーターにしても利用者の料金を引き上げ、台湾等の海外企業を儲けさせる形になっています。

中間業者が増える理由は、様々です。
一つは、手形決済・期日現金といった資金面のお話です。
ファクタリングでんさいがあるという反論もあるでしょうが・・・

手形制度や期日現金ほど異常な制度は無いです。

理由は、支払元が支払い遅れを生じさせた場合、手形を受け取った側が弁済しないといけないからです。
もちろん、支払元は手形事故を起こすと倒産してしまうことになりますが、受け取った側も連鎖倒産を余儀なくされる危険があるわけです。

これを一般消費者ベースに置き換えて喩えてみましょう。

************************たとえ話 ここから*****************************

Aさんが、ラーメン屋さんでお食事をしました。
特盛ラーメン1杯1,000円です。
レジで会計をする際、Aさんは手形を振り出しました。

困惑する店主にAさんは、
「120日後に現金化出来るから、数日前までに銀行にこの手形を持っていきなよ。」と言ってのけます。

「日々の仕入れもあって現金じゃないと困るんです。」

「じゃあ、手形を割ればいいよ。120日で金利2%(年利6%)だから、980円を現金で受け取れるから。」

「え? お客さんの都合で売り上げを減らされるのですか? 」

「当然でしょ? 期日より前に現金を受け取れるんだから。」

「いやいやいや。ちょっと待ってくださいよ。その手形決済日にあなたが支払いをしなければ、どうなるんですか? 」

「それは、受け取ったあなたが全額損を被ればいいんですよ。もちろん、僕も破産扱いになりますけどね。僕だって破産したくないんで、その日までにはちゃんとやりくりしておきますよ。」

「は? あなたを信用しろということですか? 」

「そうです。手形というのは信用取引なんで、僕を信用するしかないのです。」

「そんな無茶苦茶な・・・現金で支払ってくださいよ。」

「別に現金で支払わなければならないなんて、お店のどこにも記載がないじゃないですか? 契約自由の原則からいって手形でも期日現金でもいいでしょ? あ。不渡りを気にするんだったら期日現金にしましょうか? 」

「え? それだとどうなるんですか? 」

「手形だと期日までに現金が用意できなければ不渡りになるんで、お互いに損が確定するんですけど、期日現金だとお金が準備できなくても不渡りにならないんですよ。」

「え? それって??? 」

「うん。支払いが先延ばしに出来るってことです。」

「じゃあ、いつまでたっても現金化出来ないじゃないですか? 」

「そうならないように僕も頑張りますよ。」

「そんなの無理です。現金で払ってください。」

その様子を見ていたBさんが、おもむろに声をかけてきました。

「店主、良かったら、私がファクタリングしてあげますよ。」

「え? ファクタリング? 」

「はい。手数料50円を差し引いた950円を今すぐお支払いしてあげます。そうすれば、この取引が成り立ちますよね。」

「いやいや。それじゃあ、さっきの手形割引よりひどいじゃないですか? 」

「信用取引ってそういうもんですよ。」

「うちは現金商売だーーー!! 」

こうして、ラーメン屋店主は、お店のあちこちに現金払いのみの貼り紙をすることになったのであった。。。   (完)

************************たとえ話 ここまで*****************************

いかがでしょうか?
一般消費者の感覚ではありえないことが、企業間取引では常態化しているわけです。
こういった状況がまかり通っていたため、財務的に余裕があり手形事故に耐えられる中間業者が必要となったわけです。
戦後復興期、手元資金(内部留保)がない時代であれば、手形制度は有効でした。
でも、内部留保が積みあがった現在、不要な制度だといえます。

それ以上に質が悪い制度が期日現金です。
数か月間、一切現金化できないわけです。
これは60日以内に現金払いを求める下請法に抵触する違法行為なわけですが、契約自由の原則を用いて合法化している制度です。
支払元による一方的な条件設定は、禁止されているものの有名無実化しており、今なお、普通にこういった取引の強要が普通に行われております。
公正取引委員会もこの程度のことではいちいち動いたりしませんので、下請けは泣き寝入りするだけのお話になります。

結果、期日現金では資金繰りが厳しいという間に中間業者が入るわけです。

それが、ファクタリングです。

このようにして日本では生産性を中間業者により奪われるシステムが確立しているわけです。

このように支払いが先延ばしされていくことと、中間業者が多いこと。
二つが重なることで何が起きるか?

手形等で現金化が遅れる(それも中間業者が入るたびに数か月ずつ遅れる)わけですから、数か月から数年も経済効果に遅れが生じるということになります。
さらに、途中で消えていくわけですから上流企業だけがうま味を吸う構図になるわけです。

この構図を解消しない限り、いくら国債を発行して財政出動を繰り返しても景気回復の実感がわかないことになります。
そして、累積債務の拡大から財政出動無意味論が台頭し需給ギャップを埋めっるという本来必要なはずのケインズ政策が嫌忌され国が衰退していくことになるわけです。

まあ、いろんな角度から見ていくと、いろんな意見があるでしょう。
中間業者も雇用を維持する社会の歯車の一つです。
淘汰してしまうと、それはそれで問題も出てきます。
ただ・・・こうしたメカニズムが白日の下で議論されるようにならないと、国は良くはならないのではないでしょうか?

たとえ話のAさんにしてもBさんにしても、別に極悪な思想の持ち主というわけではないのです。
既に存在する制度に対し、何の違和感も不信感もなく、そのまま乗っかっているだけのことなのです。

おそらく、自分自身が手形の不渡りを食らい、この制度の欠陥を身に染みて理解するようになるまで、気づかないのではないでしょうか。。。

しがないオッサンにサポートが頂けるとは、思ってはおりませんが、万が一、サポートして頂くようなことがあれば、研究用書籍の購入費に充当させて頂きます。