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人道的か合理的か

 ビックモーターの事件が世間を賑わせました。
今後は調査の進展待ちという格好になるかと思います。

今日は、経営者の目線から。

数字目標や成果主義により組織を統御する

これが、ビックモーターの基本と見受けられました。
そのこと自体は、どこの会社もやっていることでして、不思議さも違和感もないです。
その一方で、除草剤を散布するとか、LINEで罵声が飛び交うとか、異常なまでの縛り機能があるなあと思いました。

多分、部下が上司の命令に異議をさしはさめない企業文化になっていたのでしょう。
たしかに・・・

部下が上司の業務命令に逆らう

こういったことは、問題になります。
法律上も、部下が上司の業務命令に逆らうことは容認していません。
だからこそ、部下が業務上の失敗を犯した際には、上司や会社が責任を負うことになるわけです。

仮に、部下がやりたい放題にやって重大事件を引き起こした場合、上司や会社に責任を問うことは難しくなってきます。
もちろん、監督責任という格好で一定の割合で会社に責任を取らせることは可能ですが・・・
今度は会社サイドから当該社員に対し、損害賠償請求が行なわれることになるでしょう。

業務命令に従う ということは、責任は上司や会社にあることを意味し、
業務命令に逆らう ということは、責任は当人に帰するということを意味します。

さて。
弊社では部下に対し、以下の2つについて、上司や会社からの業務命令に逆らっても構わないという権利を与えています。

1)人道上の問題がある(法令違反を含む)行為
2)合理性を欠く(法令違反を含む)と説明可能な行為

です。
これ以外の業務命令には、従うことを求めています。

例えば、急な案件が入り、残業命令を発した際、家族や友人との先約があるという「人道上の」理由から、残業を拒否する権利が与えられています。
でも、特段の合理的理由がない場合には、残業命令に服してもらいます。

ビックモーターの事件を見ていると、こういう感じで「業務命令に反しても良いとする基準」が存在していなかったのかな? と思いました。

小さなことなのですが、少しずつ社員に無理を聞かせるようになり、少しずつ、感覚がマヒしていったために、おかしな命令を受けていると、かすかな理性が訴えかけて来ても、惰性のように唯々諾々と不正な業務を遂行してしまうようになったのでは? と。

トラブルの大本は、だいたい最初は小さなことです。

が、そういった小さな出来事から、人の心はマヒを始めていきます。
小さなことが積み重なり、マヒした感覚の上に、大きな非道行為がやってきます。
いつしか、それすらマヒしてしまうようになる。

ビックモーターの不正は、そうした小さな道徳の喪失の積み重ねから来たのかもしれません。

こうした事例は、実は、ビックモーターだけでなく、至る所で発生します。

代表的なのが、カスハラです。

お客様という立場は、無理を聞いてもらいやすく、感覚がマヒしやすい代表例です。
お客様の立場になり、無理を聞いてもらう事が常態化していくと、やってもらって当たり前となり、際限なく要求がエスカレートしていきます。
いつしか無自覚なモンスター客になってしまい、場合によっては刑事事件で罰せられるまでになる事例もあります。

会社の上級職や購買担当者、プライベートでもお客様としての立場にある時、人は無自覚に傲慢になります。
(私自身、日々、そうなっていたのでは? と寝る前に、反省しきりです)

ごくごく小さなことであったとしても、下の立場の者に対し、無理強いをしていないか?
自分の胸に問いかけて来る事件でした。

しがないオッサンにサポートが頂けるとは、思ってはおりませんが、万が一、サポートして頂くようなことがあれば、研究用書籍の購入費に充当させて頂きます。