日本のエンジニアにアドテクを広く知ってもらうために OpenRTB の日本語訳を始めました

株式会社LOB 2018年 アドベンドカレンダー 7日目の記事です。

アドテクキャッチアップのための個人的な取り組みとして、OpenRTB の日本語訳文書の作成を進めています。OpenRTB はアドエクスチェンジの根幹となるリアルタイムビディングの標準仕様ですが、これに対する敷居を下げてアドテク未経験者や学生、非エンジニアの方々にも OpenRTB に触れる機会を作ることを意識しました。本稿は日本語訳作成の取り組みを告知するものですが、併せて OpenRTB を理解する上での前提知識となる部分について簡単に説明したいと思います。

この取り組みにおける成果物です。この記事の公開時点ではまだ未完成ですが、随時更新して年度内の完成を目指します。
OpenRTB 3.0(日本語訳):完成しました!
・AdCOM 1.0(日本語訳):2月完成予定

アドエクスチェンジ

複数の広告主とメディア(サイト運営者など)を結び、柔軟かつプログラマチックな広告配信を行う仕組みをアドエクスチェンジと言います。アドエクスチェンジでは配信枠単位で広告を受け付けるので、メディアにとっては人気の高い配信枠を高い広告価格で取引することができます。また、人気のない配信枠でもそれなりの価格での買い付けができるので、配信枠を埋めたいメディアの需要も満たすことができます。広告主にとっても、複数のメディアやアドネットワークに入稿する手間が省けるので、運用コストを削減できるというメリットがあります。このように、アドエクスチェンジは配信枠を可能な限り埋めつつ双方にとって妥当な価格で広告配信が実現できるという点で、他のオンライン広告配信の仕組みと比べて優れています。

アドエクスチェンジ以外の代表的な広告配信の仕組みとして、純広告とアドネットワークがあります。純広告は、メディアが広告主から直接契約を取り付けて広告を掲載する方式です。比較的高い広告価格が得られますが、運用コストが高いことが欠点です。アドネットワークは、複数のメディアが束になることで一元的な広告配信を実現する方式です。双方にとって運用コストを削減できますが、広告価格がアドネットワーク単位で決定されてしまうので、アドエクスチェンジと比べて柔軟性に欠けます。

リアルタイムビディング

アドエクスチェンジで採用されている価格決定の仕組みがリアルタイムビディングです。リアルタイムビディングとは、オンライン広告の配信枠をリアルタイムに取引する仕組みのことです。この仕組みを利用した配信枠が Web ページに組み込まれている場合、その Web ページのリクエストがあるたびに広告価格を決めるためのオークションが開催されます。オークションには広告を打ちたい広告主と、広告を掲載したいサイト運営者が互いに参加します。広告主は効果的な配信枠なら高くても広告を出したいですし、そうでない配信枠には予算を出したくありません。一方のサイト運営者は、価格設定の高い広告で枠を埋めたいですし、低い広告はあまり出したくありません。その結果、価格均衡が働くことで両者にとって最も妥当な価格が広告価格として決まります。

アドテクの歴史や配信システムの概要を理解したい方は、Schoo という動画学習サービスで公開されている「 初心者のためのDSP 」という講座がオススメです。私がアドテクを学び始めたときに参考にした資料の中で一番分かり易かったです。入門書といったものも存在していますが、当時の自分には内容がわかりづらくあまりお勧めしません。

DSP/SSP と OpenRTB

リアルタイムビディングに実際に参加するのは、DSP と呼ばれる広告主サイドに立つサーバと、SSP と呼ばれるサイト運営者サイドに立つサーバです。SSP サーバは、サイト訪問者が現れたタイミングで配信枠を出品します。DSP サーバは配信枠の出品を受けて、掲載に支払う妥当な額というものを決定して提示します。SSP サーバは各 DSP サーバからの入札を集計して、最も高い額を出された入札を選び、その広告を配信枠に掲載します。このように、リアルタイムビディングでは両サーバが相互に通信を行ってオークションを執り行いますが、処理フローや通信プロトコルを標準化したものが OpenRTB です。

OpenRTB の策定作業は、IAB と呼ばれる標準化団体が行っています。IAB はオンライン広告に関わる数多くの企業が加入している組織です。そして、OpenRTB の原文はインターネット上で無償公開されています。
OpenRTB 3.0(Markdown)
OpenRTB 2.5(PDF)

OpenRTB 3.0 と OpenMedia

OpenRTB の現行バージョンは 2.5 です。3.0 では、2.5 以前からの抜本的な変更と、セキュリティや透明性といった市場要求に応えるための新規仕様の追加が予定しています。策定作業が続けられてきましたが、この記事の執筆段階で、パブリックコメントの募集、βテストの実施というフェイズを終え、あとは正式リリースを待つのみとなりました。

大きな変更の一つとして、2.5 では OpenRTB に含まれていた広告のオブジェクトモデルに関する仕様が、独立した別の標準(AdCOM)に分かれました。IAB は新たに OpenMedia と呼ばれる階層モデルを提唱していて、このモデルにおいて OpenRTB はトランザクションレイヤ、AdCOM はドメインレイヤに割り当てられています。

また、広告配信の透明性といった観点から、ads.cert という仕組みが導入されました。ads.txt を推し進めた仕様とされていますが、この辺りは私自身まだキャッチアップできておりず、十分に理解した上で改めて記事にまとめられればと考えております。

翻訳作業について

現在は OpenRTB 3.0 の翻訳を、年内の完成に向けて進めています。また、先に述べた通り OpenRTB 3.0 からは AdCOM を含めて一気通貫な仕様となるので、こちらの翻訳作業についても追って着手したいと考えています。翻訳作業は GitHub 上で進めていて、Web サイトは GitHub Pages を利用してホスティングしています。Issue の方は公開しておりますので、間違いの報告や文章の改善提案はこちらまでお願いいたします。

株式会社 LOB では「流通のケタを変える、広告プラットフォームを創る」仲間を募集しています。https://lob-inc.com/recruit/

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