2016年8月21日

知識量と「頭の良さ」は無関係で,知識など眼前の箱から引きずり出せばいい,という意見をネットで見かけることがある.この手の主張をする人って,一定の割合でいるわな.

この手の主張を見かける度に,まともな知的創造作業に従事したことがないんだろうなあといつも思う.

知識量と「頭の良さ」は,けっこう相関があるよ.少なくとも一流の研究者で,知識量がない人はいないと言っていいと思う.皆さん,博覧強記ですよ.頭の良さに加えて,勉強量も膨大ということはあるけど.

そもそも,知識を箱から出すというたとえを使ってる時点で,頭が悪いなあと思う.これは,たぶんコンピュータシステムからの類推なんだろうけど,人間の記憶というのはもっと玄妙で,コンピュータとのアナロジでは語れない.知識を引き出すのにも知識が必要だし,その知識を応用するのにも,知識を統合する知的な営みが必要になる.

もっとつっこんで言えば,人間が記憶する過程での脳の働きは,実は,創造的な営為を行うときのものと同じ,といったら言い過ぎかもしれないけど,本質的には似ていると思う.記憶する営為と,創造する営為とは,脳内で同時に起こり,混然一体となって発展してシナジーを起こすものじゃないかな.少なくともそれらは,はっきり分けられるものではない.相互作用するものなんだよね.研究者なら,それを実感してると思う.

ネットでは,自分の頭で考えようとかいう言説が受けるけど,それは,知識量と「頭の良さ」と関係ないとかいう,バカバカしい主張と通底しているものがある.将棋でも言うように,下手の考え休むに似たり,ですよ.

まずは巨人の肩の上に乗ることを心掛けることだ.つまり,先人が積み上げてきた膨大な蓄積を学び,さらにそれを発展していくことこそが大事.それなしで個人ができることなんて,大したことはないんだよ.知識なしで自分の頭で考えようなんていうのは,はっきり言って無駄です。そういう意味でも,一部の人が思ってるような,知識軽視は本当に頭が悪いことだと思う.

まあ,それはそれとして↓
YouTube - Standing On The Shoulder Of Giants (EPK)


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