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超主観!日本語で出そうなD&D5eの本をランク分けしてみた 2024改訂版

先日、ウィザーズから公式に日本はヨーロッパ版とは異なる独自のラインナップになるという発表があったという話を小耳に挟んだ。

日本版の発売スケジュールがヨーロッパ版の後を追うことが判明した時点で、前回の『超主観で日本語で出そうなD&D5eの本をランク分けしてみた』は存在意義を失ったものと思われたが、このような発表があったとなれば、新たに発売されたものを含め再評価を行うほかないと考え、改訂版の発表に至った。

なお、今回の記事は前回の存在を前提としている。過去の書籍の評価は以下の通りである。また、前回に引き続き英語の書名に関してはカッコ内に便宜上の和名を掲載している。

引き続き、D&Dを遊んでいる諸氏の助けになれば幸いである。

前回からの振り返り

本題に入る前に、前回の記事を振り返っておきたい。

前回の公開時点から現時点までで、日本で発売されたものは以下の通り。
『ターシャの万物釜』以外はヨーロッパ版のスケジュールを追う形だったが、ターシャ本も含め、前回記事で比較的評価の高かったものが選ばれる結果となった。

ウィッチライトの彼方へ / The Wild Beyond the Witchlight
前回評価:Bランク

フィズバンと竜の宝物庫 / Fizban's Treasury of Dragons
前回評価:Aランク

ターシャの万物釜 / Tasha's Cauldron of Everything
前回評価:Sランク

レイディアント・シタデル:光の城塞より / Journey Through the Radiant Citadel
前回評価:Bランク

ドラゴンランス:女王竜の暗き翼 / Dragonlance: Shadow of the Dragon Queen
前回評価:Aランク

前回からの変更点

評価基準の変更

前回の記事から、D&Dを取り巻く環境が明確になったり、変化があったため、評価基準が変更された。変更点は以下の通り。

  • 前回はヨーロッパ版の存在を意識していたが、今回は日本市場の反応だけを考慮したものである。

  • ヨーロッパ版との差別化にあたり、過去に大きく遡って日本好みのものが新たに発売される可能性がある。

  • 新規プレイヤーの窓口として、映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』(以下アウトローたちの誇り)やコンピューターゲーム『バルダーズ・ゲート3』が増えている。

  • D&Dのコミュニティが十分に成熟しておらず、なおかつヨーロッパ圏と比べ、英語に対する言語の壁が厚いため、D&Dの公式世界観に関する情報はまだ得づらい。

  • 『ダンジョン飯』や『葬送のフリーレン』など、国内で比較的D&Dのイメージに近い作品が流行するなど、少年漫画などの文脈を含まない、いわゆる「王道」のファンタジー作品への気運が高まっており、D&Dにもそれが期待されている。

上記を踏まえて、以下の書籍の評価が変更されている。

Curse of Strahd

ランク変更:A→B

ヨーロッパ版と合わせる意義がなくなったため、純粋な日本側からの期待度という観点から、目立ったプラスもマイナスもないBとした。

Icewind Dale: Rime of the Frostmaiden

ランク変更:C→A

比較的「王道」に近いシナリオであるほか、映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』に登場したレベルズ・エンド監獄や、主人公エドガンの故郷・タルゴスに関する情報も掲載されており、現在の日本の客層が求めているのはこのようなシナリオではないかと思われる。そのため、CからAへと2ランク上昇となった。


S:絶対出る

新コアルール

(Player’s Handbook、Dungeon Master’s Guide、Monster Manual)

英語版が2024年後半から'25年初頭にかけて発売される。

コアルールである。2025年以降の事にはなるだろうが、遅かれ早かれ、出なければ詐欺としか言いようがない。

A:可能性が高そう、人気が出そう、出てくれ

Phandelver and Below: The Shattered Obelisk(新ファンデルヴァー)

表紙絵。

系統:中編シナリオ×2

前半は旧スターターセット『ファンデルヴァーの失われた鉱山』の再録、
後半は同じくファンダリンを拠点に、地下から迫る侵食現象の謎を追う新規シナリオ。

英語版の発売時期が『バルダーズ・ゲート3』のそれと近い事もあり、後半の新規シナリオには主に一部共通して登場する要素もある(ネタバレになるのでその正体については伏せさせてもらう)。

前半が辺境の村を舞台とした直球ストレートな冒険である事は言うまでもなく、そこからD&Dの世界観の懐の広さを見せる後半は、既存メディアとの関連性というプラス要素も重なり、シナリオ本としては極めてポジティブなAランクの評価とする。

B:割とありそう

Bigby Presents: Glory of the Giants(ビグビー本)

系統:主にDM向けデータや設定

『フィズバンと竜の宝物庫』の巨人版にあたる、巨人に関するデータや解説を中心としたサプリメント。
フィズバン本同様、基本は主にDM向けだが、一部サブクラスや特技に関しても掲載されている。

基本的な構成はフィズバン本と大差ないが、新規ユーザーの多い現状からすると、シナリオの「種」となる設定やアイテム等をばら撒かれるよりかは、フォーゴトン・レルムなど特定の世界観やロケーションに関する情報や、手本となるシナリオが多い方がいいのではないかと思われる。
いわゆる「守破離」の「破」の部分に到達できていないのではないか、という所である。

Keys from the Golden Vault(ゴールデン・ヴォールト)

表紙絵。

系統:短編シナリオ集
潜入、強盗をテーマとした全12編のシナリオ集。
PC達は多元宇宙を股にかける謎の組織か、はたまた他の依頼人からか、貴重品を盗み出してほしいという依頼のもと、決死の潜入作戦へと旅立つことになる。

以前の日本向けアンケートで『ゴールデン・ヴォールト:黄金鍵の密命』として掲載されており、一時期は日本発売の予定にあったとみられる。
また、ヨーロッパ版は3月末に発売されており、これまで通りヨーロッパ版を追う形だったなら、そのまま発売されていたと思われる。

収録シナリオの中には、映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』に登場した「レベルズ・エンド監獄」が登場こそするが、全体としては、潜入という全体のテーマに関して「ただのダンジョン探索になっている」という評価のものもあり、芳しくないためAランクには届かない評価としている。

Quests from the Infinite Staircase(無限階段)

系統:短編シナリオ集

多元宇宙の世界の数々を繋ぐ不思議な「無限階段」(現行の『Dungeon Master's Guide』にも情報アリ)を拠点に、アドバンスドD&D第1版時代の傑作・怪作シナリオを5版向けにリメイクしたシナリオ集。
『ウィッチライトの彼方へ』以前に存在した「戦闘しなくても終わらせられる」シナリオや、墜落した宇宙船を調査するシナリオなど、ユニークで粒揃いのシナリオが6編収録されている。

原典の多くは日本語版の出ていないものだが、概要としては『大口亭奇譚』と大きく類似しており、取り回しのよい短編シナリオである事が評価を上げた。

C:出ても出なくても驚かない

Planescape: Adventures in the Multiverse(プレーンスケープ)

ボックスの表紙絵。

系統:世界観設定/中編シナリオ

扉の街「シギル」を紹介する『Sigil and the Outlands』、次元界の諸生物が掲載された『Morte's Planar Parade』、シギルを舞台に各次元界にまつわる勢力を巡り、多元宇宙に起こる謎に迫る『Turn of Fortune's Wheel』の3冊セット。
『Spelljammer: Adventures in Space』同様の形態である。

扉の街「シギル」は、天使と悪魔が酒場で呑み交わすといったような絵面こそユニークだが、D&Dの多元宇宙と数々の次元界の設定が前提となっており、「外方次元界」や「九層地獄バートル」、「機械仕掛けの涅槃経メカヌス」などと言われてピンと来なければ楽しみづらいのではないかと思われる。

D&Dのバラエティに富んだ世界観は間違いなく強みではあるが、各次元界の名前を見てイメージがすぐに浮かぶようなユーザーが増えなければ厳しい。国内で出回っている情報ソースが少ない現状では、ユーザーを次元界の設定に慣らす所から始めなければならないだろう。

The Deck of Many Things(デック・オヴ・メニー・シングス)

『The Book of Many Things』の表紙絵。

系統:主にDM向けデータや設定
引く者の運命を変える『デック・オヴ・メニー・シングス』のボックスセット。

カードの物理アイテムとそのガイドに加え、デック・オヴ・メニー・シングスにまつわるデータや設定を掲載した『The Book of Many Things』を収録。
「キャンペーンを破壊する」という評判を覆すように、引いたカードによってどのような物語が始まり得るのかの詳細な解説や、カードにまつわる組織や伝説を紹介している。

物理アイテムと関わるという点や、シナリオそのものではなく、シナリオの「種」を提供するという性質が、日本の現状とはまだ噛み合わないように感じる。

Vecna: Eve of Ruin(ヴェクナ)

表紙絵。

系統:長編シナリオ
人からリッチ、そして神の座へと上り詰めてもなお飽き足らず、多元宇宙を意のままに作り変え、神をも超える存在となるべく陰謀を巡らせるヴェクナ。
多元宇宙の名だたる世界の数々を股にかけ、ヴェクナの陰謀と戦う驚異のレベル10~20向け長編シナリオ。

D&D多元宇宙の真のラスボス級を相手取る超・ハイレベルシナリオで、D&D界のビッグネームを看板とする所はいいのだが、「様々な世界を股にかける」という点がプレーンスケープ同様に引っかかる。

現在の日本の層は公式の世界観のコの字もわからない初心者が多く、ノスタルジアはまだ必要とされていないように感じる。
プレーンスケープ同様に、段階を踏んでユーザーを慣らしていく必要があるだろう。

一時期ウィザーズ・プレイ・ネットワークのサイトにて対応言語に日本語が含まれていた事があり、また、ヨーロッパ版の4言語は訂正前後を通して記載されていることから、日本語版が独自ラインナップにならなければ、ゴールデン・ヴォールトに続いてヴェクナというスケジュールになっていたと思われる。

D~E:出たら驚くレベル

2023~2025年初頭のラインナップの中に、マイナス要素が強すぎてD~Eランクになったものは存在しなかった。外部コラボ等も特になく、一部ノスタルジアに振り切った内容で不利なものもあるが、どれも日本上陸のチャンスは平等にあると筆者は考えている。

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