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いつだってこれからが本編

いつ開花するのか、雨で流れてしまわないか、と散々わたし達を騒がした花びらがハイヒールを鳴らす灰色の床に落ちている。

イメージとは違うその大量の白に、まるで虫の死骸のようだとぼんやりと考えていた。

その子たちが昨日までいた場所を見上げてみると、ぼくはここだよ〜と言うようにゆらゆらと柔らかそうな葉が揺れている。

光に透けるその緑を見ていると、落ちた花びらはただの目次で、これからが本編なのだと気づく。それは「令和!令和!」と新元号への盛り上がりと、5月から長く続く時代へのワクワク感に似ているように思えた。

新年度になり、去年よりも仕事を覚えた結果なのか、想像以上に忙しくなってきた。21時を過ぎに電車に乗ると、スーパーに寄ったりしてなんだかんだで家に着くのは22時過ぎになる。

駅付近は街灯が多く、人がまばらにいるのであまり怖くはないのだけど、住宅街に入ると途端に静かになる。さすが、引っ越す前に大家から「閑静な住宅街ですよ」と紹介されただけはある。

街灯が重なり合うどこかの瞬間、自身の影が1つから2つ、そして時には3つに増える。

帰りが遅くになると、突然真横に現れる2つ目の影に、誰かにつけられてる?と毎度ビクついてしまう。いまだに一人で夜を歩くのは慣れない。

イヤホンを耳に入れてしまうと誰かの足音にビクつくし、スマホの画面を見てしまうと後ろの気配を気にしてしまう。

そんな時はこうやって、ただ目の前のものを文章にするとどう表現するだろうか、なんて妄想しながら歩く。そうすると恐怖が幾分かマシになる気がするのだ。

そうこうしているうちに家に着く。

猫に餌をあげて、さっさとお風呂に入って、歯磨きをして、そこまで気持ちよくないベッドに入って眠ってしまいたい。

明日は朝から京都出張だ。
おやすみなさい。


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