第8章 『仮面ライダーX』と『がんばれ!! ロボコン』

 1 「テレビランド」創刊と鈴木敏夫さんとの出会い

 ぼくの実質上のデビュー作は「テレビマガジン」創刊号(1971年12月号)に描いた『仮面ライダー』ですが、ほぼ1年後の73年1月、「テレマガ」にライバル誌が登場します。それは「テレビランド」でした。
『仮面ライダー』や『キカイダー』など東映のテレビ番組に人気が高まっていることに着目した東映が中心となり、独自に子ども向けテレビ番組を中心に据えた雑誌を創刊することになりました。
 しかし東映には、子ども向け雑誌のノウハウがありません。そこで石森プロも協力して、中野にあった黒崎出版という小さな出版社から、「テレビランド」は創刊されることになりました。
「テレビランド」には、石森プロの仕事を手伝っていた山平松生さんのほか、石森章太郎ファンクラブ副会長の鈴木克伸くんと島田寿昭くんが、編集者として送り込まれます。
 創刊号の編集人には東映でアニメのプロデューサーをしていた飯島敬さんの名前が掲載されていたはずですが、実質的な編集長の役目は、その少し前に休刊になった虫プロ商事のマンガ雑誌「COM」で編集者をしていた校條満さんが果たしていたはずです。
 ぼくにも「何か描かない?」と声がかかりましたが、ほかに大量の原稿を抱えていたため、ページ数の多いマンガは描けません。そこで、『ランドくん』という半ページの、ほのぼのギャグマンガを連載させてもらうことになりました。
 この原稿は石森プロで描いていましたが、居合わせた石ノ森先生に原稿を見てもらったこともありました。「ギャグマンガにしては無駄な線が多すぎるな。もっと省略を利かせた方がいいんじゃないの?」なんてアドバイスをいただいたことを憶えています。
 しばらく半ページでつづいた「ランドくん」は、最後には2ページになりました。
 この「テレビランド」は、73年11月号から、編集組織も一緒に徳間書店に移ります。編集長には徳間書店の尾形英夫さんが就任し、「週刊アサヒ芸能」にいた鈴木敏夫さんが移籍してきました。
 尾形さんは、やがて「テレビランド」増刊号として「アニメージュ」を創刊し、鈴木敏夫さんも移籍します。鈴木さんは、ここで宮崎駿氏の『風の谷のナウシカ』のマンガを連載し、そのアニメ化を手がけたことで、スタジオジブリの設立に関わっていくことになります。でも、「テレビランド」が徳間書店に移籍した頃は、この雑誌が、将来、スタジオジブリにつながることなど誰ひとり思ってもいませんでした。
 鈴木敏夫さんと初めて言葉を交わしたのは、石森プロだったのではないかと思います。ぼくたちは鈴木敏夫さんのことを「敏夫さん」と呼んでいました。「テレビランド」には鈴木克伸くんもいたからです(後に、さらにもうひとり鈴木さんが入ってきます)。敏夫さんをはじめとする「テレビランド」の編集者は、ぼくのことを「すがやちゃん」と呼びました。
 敏夫さんと初めて会ったとき、敏夫さんが徳間書店の編集者だということで、ぼくは徳間書店に関する苦情を申し立てました。「大藪春彦氏の『汚れた英雄』が買えない」というのが、その苦情の内容です。
 ぼくは小学生のとき、近所の友人の家にあった「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)のページを開き、そこに掲載されていた大藪春彦氏の小説を読んで夢中になりました。掲載されていたのは、確か『凶銃ルーガー08』で、拳銃が妙に詳しく描写されていたことに魅せられたのだと思います。『凶銃ルーガー08』の単行本化は1961年ですから、「アサヒ芸能」での連載は、その少し前くらいだったのでしょう。ぼくは、小学4年生くらいだったはずです。
 この年齢で「アサヒ芸能」を読むのはどうかとも思うのですが、年の離れた腹違いの兄に正月のお年玉としてルガーP08のモデルガンを買ってもらうほどに、この小説に入れ込んでいたのです(大藪春彦氏が「ルーガー」と書いていたドイツ製の銃器メーカーは、他では「ルガー」と表記するのが一般的でした)。
 以後も、大藪氏の作品は、「三億円事件」のモデルになったといわれた『血まみれの野獣』(小学館「ボーイズライフ」連載)など読んではいましたが、単行本を買うようになったのは、アシスタントになるため東京に出てきてからのことになります。
 この頃、大藪春彦氏の小説を置く書店は、一部に限られていました。大家節は、徳間書店以外の出版社からは無視されているような印象があり、単行本は古書店で購入することも多くなっていました。大藪氏は拳銃不法所持事件で有罪になったことがあり、その影響で徳間書店以外からは本が出ないという事情もあったようです。でも、大手出版社には無視されても、確実に読者はついている気配はありました。その読者は、貸本劇画の読者と重なっているような印象も持っていました。
 大型書店でも大藪氏の作品を見つけるのは大変でした。反対に、私鉄沿線の駅前商店街にあるような小さな書店の店頭に、徳間書店から新書判で刊行されていた大藪春彦全集が並んでいることがありました。ぼくは、黄色い表紙の大藪春彦全集を書店の店頭で見つけるたび、財布の中身と相談しながらコツコツと買い集めていたのですが、そのなかで、どうしても手に入らない作品がありました。それは『汚れた英雄』という小説でした。
 のちに角川文庫にも入り、草刈正雄の主演で映画化もされる作品ですが、敏夫さんと知り合ったのは、全4巻のうち第2巻までしか入手できず、イライラがつづいている頃でした。敏夫さんには『汚れた英雄』が買えないことを訴えていたのです。
「だったら、うちの会社においでよ。出してあげるから」
 敏夫さんからこう言われて、数日後、ぼくは新橋にある徳間書店を訪ねました。

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