第6章 『人造人間キカイダー』のスタートと監修の終わり

 1 『ゼロダイバー』から『キカイダー』へ

 1972年の初夏になると、石森プロでは、また新しいテレビ作品がスタートすることになりました。タイトルは『人造人間ゼロダイバー』。善と悪の心を持つアンドロイドを主人公にした特撮ドラマです。制作は『仮面ライダー』『好き好き魔女先生』『変身忍者嵐』と同じ東映でした。
 この番組の企画は『仮面ライダー』より古くから存在していたといいます。紆余曲折の末に、ようやく日の目を見た企画だったとか。タイトルも何度か変更されていたとのことでしたが、ぼくたちが最初に目にした企画書のタイトルは、すでに『ゼロダイバー』になっていました。
『仮面ライダー』が講談社系の雑誌を中心に(途中から秋田書店も追加)、メディアミックスを展開していたのに対し、この『ゼロダイバー』は小学館の雑誌が提携先となりました。まず、石ノ森先生が「少年サンデー」の30号からマンガを連載することが決まりました。ただし、先生の担当はネームと下描きまで。残りのペン入れから仕上げまでは、土山よしき、細井ゆうじ、ひおあきら(途中まで)、山田ゴロの4名が担当するシステムです。
 このほかに、ぼくが「小学一年生」、土山さんが「小学四年生」でコミカライズを担当することが決まりました。小学館では、他の学年誌でも、『ゼロダイバー』のコミカライズをスタートさせることになっているとのことでした。
 予告のイラストは、バイクに乗ったゼロダイバーの絵を描いただけでした。この時点では、企画書を読んだくらいで、シナリオは読んでいなかったはずです。
 キー局はNET。放映日は土曜日の午後8時からになっていました。大阪のMBSがキー局の『仮面ライダー』は、東京ではNETで放映されています。NETは、のちにテレビ朝日と社名を変更するように朝日新聞の系列テレビ局です。キー局のMBSは毎日放送、つまり毎日新聞の系列局なのに、東京では同じ毎日新聞系のTBSではなく、NETで放映されています。この「腸捻転」と呼ばれていた資本系列のねじれ現象は、75年3月31日で解消され、『仮面ライダーストロンガー』は東京ではTBSから放映されることになりました。
『ゼロダイバー』スタート時の土曜日午後8時台には、ドリフターズの『8時だョ! 全員集合』というオバケ番組がありました。視聴率も高く、小学生にも大人気の生中継番組です。NETは、午後7時30分から放映の『仮面ライダー』の後、8時からは『ゼロダイバー』、8時30分からは永井豪さん原作のアニメ『デビルマン』(東映動画)をぶつけますが、石森プロにいたぼくたちにさえ、ちょっと無謀な戦いに見えました。
「小学一年生」7月号に掲載された予告では『人造人間ゼロダイバー』だったタイトルが、8月号用の原稿に取りかかる直前に変更になります。そのタイトルを石森プロで聞いて、「少年サンデー」の連載マンガを担当する細井たちと一緒に大爆笑しました。それは、新しいタイトルが『人造人間キカイダー』だったからです。
 あまりにも直裁的な、そして、ダジャレにしか思えないタイトルに、ぼくたちは「これ、ギャグ番組か?」と思ったわけです。
 新しいタイトルの名づけ親は石ノ森先生だったらしいのですが、「『ゼロダイバー』というタイトルでは、視聴率ゼロをイメージさせて縁起が悪い」というような意見がテレビ局側から出て、大至急、タイトルを変更を迫られたのだとか。石ノ森先生も、ほとんどヤケで命名したようなことを、のちに笑いながら話してくれました。

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