第11章 コミカライズは終わらない——『仮面ライダー』アゲイン

 1 「冒険王」最後のコミカライズは『スパイダーマン』

 かつて『人造人間キカイダー』や『仮面ライダーV3』のコミカライズをすることになったとき、神保町にある洋書専門の古書店で買ったアメコミを参考にしたことは、すでに述べたとおりです。そのとき、もっとも参考にしたのは、なんといってもマーベルコミックの『スパイダーマン』でした。
 その『スパイダーマン』が、なんと日本で特撮テレビ番組として放映されることになったのです。制作は、『仮面ライダー』や『人造人間キカイダー』『秘密戦隊ゴレンジャー』などの石森プロ作品を制作してきた東映です。マーベル・ジャパンという制作会社が設立され、マーベルから派遣されたアメリカ人男性が社長になりました。
『スパイダーマン』の放映が決まった直後、石森プロの加藤マネージャーが自宅でホームパーティーを開き、そこでマーベル・ジャパンの社長を紹介してくれました。東映の平山プロデューサーも一緒だったはずです。
 マーベル・ジャパンの社長はアメリカ人で、ぼくたちに「スピルバーグを知っているか?」と質問してきました。もちろん知らないわけがありません。あの『ジョーズ』の大ヒットで有名になっていた若手の映画監督です。日本でも映画好きなら誰でも知っていました。
 マーベル・ジャパンの社長は、スピルバーグの新作に興味があれば、試写を見られるよう手配してくれるといいます。ぼくは喜んで、同席していた桜多吾作さんと一緒に手を上げました。
 翌日、招かれて出かけたのは「税関試写」というもので、日本国内で上映可能かどうかを税関がチェックするための試写でした。この段階では、まだ日本語の字幕は入っていません。英語だけの試写でしたが、内容は、ほぼ把握できました。英語がわからなくても、ほぼ理解できたのは、この映画が、あのUFOの出てくる『未知との遭遇』だったからです。
 ぼくは、ちょうどこのとき、「コロコロコミック」のためにUFOの出てくるSFマンガを描いていました。「海外取材まんが」という副題のついた『イースター島の謎』というオリジナル作品です。『コロコロコミック』には2回目の登場でした。「海外取材まんが」というのは、この年の春、「小学五年生」の取材でアメリカ西海岸にF1レースの取材に行っていたので、そのことかもしれません。いちおうミステリーハウスというオカルトチックな場所も取材したのですが。
 原稿は、すでに完成間際でした。クライマックスシーンにはアダムスキー型のUFOが出てきていたのですが、『未知との遭遇』を見てUFOの概念がひっくり返りました。映画を見たあと、すぐさま編集者に電話して締切を延ばしてもらい、UFOの絵を『未知との遭遇』に出てくるシャンデリアのオバケのようなものに変更したものです。
「コロコロコミック」では、次号に「海外取材まんが」の続編『インカの亡霊』を描いた後、2号おいて『ゲームセンターあらし』を描くことになります。
「コロコロコミック」のマンガは、どちらかというと石ノ森先生のタッチを意識したSFマンガでした。でも、「冒険王」に連載することになった『スパイダーマン』は、アメコミや劇画のタッチを意識した絵柄にしました。ギャグマンガを連載していた絵柄を変えるのは、とくに大変ではありませんでした。ただし、どの絵柄も自分のものになっていないせいで、どこかギクシャクしたところがありましたが。
 東映製の『スパイダーマン』は、ネット局の少ないテレビ東京系列での放映だったせいか、「冒険王」でもB6サイズの別冊フロクになることが多く、ページ数も多くありませんでした。そのため、あまりダイナミックなストーリー展開はできませんでした。設定もマーベルのオリジナルとは異なっていて、スパイダーマンがレオパルドンという空飛ぶ自動車に乗ったりもします。近年になって、この東映製スパイダーマンがアメリカでテレビ放映され、カルト的な人気を集めたとか。おかげでDVDも発売になったようですが、残念なことにコミカライズをコミックスにする話は出ていません。ちなみに原稿は秋田書店の倉庫に眠っている模様です。

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