第53回 モバイル・コンピューティングにトライ(1995年8月号)

●OASYS Pocket3がこわれた

 マンガ家の仕事が中心だった頃から、アイデアを考えたり、ネームというマンガのコマ割りやセリフをまとめる仕事は、喫茶店やファミリーレストランでばかりやってきた。おかげで小説などの文章の仕事が中心になっても、このクセが抜けず、仕事のノリが悪いと、つい喫茶店に出かけることになる。

 締切が逼迫しているときは、OASYS Pocketを使って電車のなかでまで原稿を書いているが、先日、このOASYS Pocketを踏みつぶしてしまい、パニックになった。明け方、布団にもぐってから、枕もとのOASYS Pocketにストーリーのアイデアを打ち込んでいたら、途中でコテン。いつのまにか寝てしまったのだが、2時間ほどたったとき、家の前の道路に消防車と救急車がサイレンを鳴らしながら殺到し、何事かと飛び起きたとたん、バリンと、枕もとに置いてあったOASYS Pocketを踏みつぶしてしまったのだ。おまけにバランスをくずしたまま障子に手をついて、こちらにもバリンと穴をあけるハメに。

 消防車と救急車は、ただ通り過ぎただけで、どこかに行ってしまったのだが、これはどうも子どもの頃の習慣が尾を引いているらしい。昔、消防署の近くに住んでいたせいで、サイレンが鳴ると、どんな真夜中でも飛び起きては屋根の上に飛びあがり、どこかに火の手が見えれば自転車に乗ってかけつけるという、いまにして思えば、とんでもない野次馬少年だったのだ。その野次馬根性が、いまだ身体のどこかに眠っていて、サイレンの音に身体が敏感に反応してしまうらしい。

 踏みつぶしてしまったOASYS Pocketは、初代と2代目を経た3代目のOASYS Pocket 3で、これがなくては仕事も遅れてしまう。週末で修理に出しても時間がかかりそうなので、泣く泣く、もう1台購入してしまったが、さすがに今度ばかりは保険をつけることにした。幸いにしてモデムとメモリーカードは無事だったが、カードへの辞書の登録を忘れていたため、辞書登録はやり直し(泣)。それでも仕事が再開できて、ただいま、ほっと一息ついたところ。

●モバイル・コンピューティングは便利だけれど……

 デスクトップのWindowsパソコンで原稿を書くのが最も能率はいいのだが、Windowsの長所であるマルチタスクは、つい裏側で通信ソフトを起動してしまうという欠点がある。原稿を書きながら、ついNIFTY-Serve専用通信ソフトのAvalonを勝手に走らせ、メール、メッセージ、クリッピングニュースなどをダウンロードしてしまうのだ。

 メールやメッセージがあれば、返事やコメントを書かないといけなくなる。こんなことをしていてはいけないと、すぐに喫茶店やファミリーレストランに脱出するのだが、つい最近、携帯電話をアナログからハイパーデジタルに変更し、9600bpsのハイパーデジタル携帯用のモデムカードをサブノート・パソコンに接続して使い始めたら、もういけない。外出先でもWindowsが使え、原稿を書きながら、その裏で通信という環境が、ファミリーレストランでもOKになってしまったのだ。

 あせって原稿を書いてはいるのだが、コーヒーをひとくち飲むついでに、ついAvalonやTAPCISをクリックしてしまうのだ。特にNIFTY-Serveの場合は、ハイパーデジタル携帯電話専用のアクセスポイントがあり、これがデジタル−デジタルでつながるものだから実に快適。原稿の合間にWinCIMを使ってCompuServeにアクセスし、「スポーツ・イラストレイテッド」誌提供の水着写真をダウンロードしたり、6月にパリでエアショーが開催されているときは、現地からCompuServeに送られてくるB-2ステルス爆撃機のデモフライトの写真やリポートをダウンロードしたり。もちろん仕事に必要な資料も、NIFTY-ServeやCompuServeで探すことができるので、便利なこと、このうえなしだ。

 こうしてモバイル・コンピューティングとやらを楽しみながら仕事をしているのだが、悩みのタネは、携帯電話の通話料金とバッテリー。通話料金のほうは、携帯電話業界の激しい競争のおかげで値下げが続いているが、さらに通信料金が安くなれば、もっと気楽に使えるはず。バッテリーのほうはとなれば、予備の電池なしでは、サブノート・パソコンは2時間と使えない(最近は、長時間、使えるものも出ているが)。

 実はいま、この原稿もファミリーレストランでサブノート・パソコンを使って書いているのだが、画面の隅に出ている電池表示は10パーセントを切っている。はたして、この原稿を書き終え、送信し終わるまで、電池が(残り0パーセントになった)保つか……というスリリングな状況で(電池切れのアラームが鳴り出した)原稿を書いているので(こわいので原稿をハードディスクにセーブした。アラームがうるさい。どこかにAC電源はないか……)ある……。

(注:結局、この原稿は、自宅に戻ってきてから送信することになった)


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すがやみつるのただいまアクセス中!

パソコン通信ニフティサーブの会員向け雑誌「OnlineTodayJapan(OLTJ)」「NIFTY-ServeMagazine」に,1991年から99年にかけて96回にわたって連載した『すがやみつるのただいまアクセス中」というエッセイの再録です。
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