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【男声向け】イケニエのボク【台本】


わざわざヒトなんぞ食べないさ



別サイトで投稿した台本のサルベージです。


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……わっ。

あっはっは!
そんなに飛び上がらなくてもいいだろうに。
よっぽど私のことが怖いんだねえ。

まあ、賢そうな君のことだ。
自分が何故ここに連れてこられたのか。
私がナニモノで、大人たちの言う「イケニエ」って言葉がどういう意味なのか。
ぜーんぶ、分かっているんだろう?
可哀想にねえ。
抵抗もできず、親にも見捨てられたんだろう?
分かるとも。
もう何遍も繰り返し見てきたことさ。
ヒトってのは、そう簡単には変わらない。

だがね、君。実に運がいい。
何故だと思う?
答えは、私がヒトを食べないからさ。
確かに私の祖先たちは、こうして与えられるイケニエを嬉嬉として貪っていたらしいけれど、私には何がいいのかさっぱりでね。
なーんでわざわざヒトなんぞ食わにゃならんのか。
世の中にはもっともっと美味いモノがたんとあるというのに。
そういうわけで、君の心臓が止まるのはもう少し先延ばしってことだ。

だが、食べないからと言って君を村に返す訳にはいかない。
身体を張って村を守るのに、対価を得るのは当たり前だと思わないかい?
君はその対価さ、イケニエくん。
……私の手となり足となるんだ。

いわゆる、世話係ってやつだねえ。
どうせここに来るのに一度は死を覚悟したんだろう?
その時、ヒトとしての君は確かに死んだのさ。
これからは、私の世話係として、ここで生きるんだ。
そうだな。
まずは、新しい生に名前でも付けてやろうかね。

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