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「本当の姿」を求めて

レンブラント「夜警」から考えること

今年7月から修復期間に入るレンブラント・ファン・レインの《夜警(フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊)》。

この絵画の素晴らしいところは、全員がいろいろな方向を向いていたり人によって違う動作をしていたりするのに、全体に「統一感」があるところです。

さてみなさん、この作品は夜警という題目として有名ですが、実は昼間の様子が描かれているって知っていましたか?(筆者はこの間まで知らなかった)

ただし、晴れやかな日中の様子を表現するというよりは、絵の中の重要な人物を明るく描くことで、物語や奥行きを強調していると言われています。

↓《アブラハムの犠牲》。夜ではないがかなり暗いトーンで描かれている。


ではなぜ、18世紀の人々には「夜警」と呼ばれるほど、暗い色彩なのか?
1つは、暗い色の絵の具が長い年月を経て変色したということ。そしてもう1つは、表面に塗られたニスが黄色く、全体が暗く見えたということです。

「それなら、表面を洗浄して元の色彩を取り戻そう!」

と、近代に入ると絵画の洗浄が行われ、「夜警」は描かれてすぐの色彩に近い、以前よりも明るいトーンとなりました。

ですが私たちは、洗浄後もこの絵画を「夜警」と呼んでいます。もう誰も夜の絵だと思ってないのに。


「夜警」として有名になったということは、当時の人たちは「これは市民隊による夜間パトロールの様子を描いたものだ」と心から思っていた証拠。そしてみんながそう信じていました。

絵画としては変わらず素晴らしい作品ですが、私たちの解釈は今と昔では違います。私たちは当時の人たちの解釈を受け入れた上で、現在では異なった解釈をしています。

そう考えると、今私たちが「これは本物だ!」と思うモノは、長い目で見ると実はニセモノだったりするのかもしれません。

いずれにせよ、今の自分が「本当」だと思えるものこそが「本当」のものであり、人それぞれ感性は違いますから、むやみに人の価値観を否定するというのは、現代においてあまり相応しくない行為なのかもしれないと、この絵画のエピソードを聞いて感じました。

↑《自画像》。レンブラント当時23歳。


本当の自分ってなんなんだろう?と思い悩む人もいるかと思いますが、私は、今あなた自身が素直に感じる自分が、本来のあなたであるような気がします。

だからといって、短所ばかりに目を向けて、くれぐれも自分自身を責めすぎないようにしてくださいね。


それでは、またお会いしましょう*°



参考にした本はこちら↓



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